「キャンバス」と「キャンパス」は、絵画を描く際や大学に通う際などに用いられるものです。ところが、一文字違いの似た言葉であるため、どっちを使えばよいか迷うという人も多いと思われます。
そこで本記事では、「キャンバス」と「キャンパス」の意味の違い、使い分けについて詳しく解説しました。
キャンバスの意味
まず、「キャンバス」の意味を辞書で引いてみます。
カンバス【canvas】
①麻などで目を粗く織った布。ズック。キャンバス。
②油絵用の画布。麻などの布地に油その他を塗ったもの。キャンバス。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「キャンバス」は辞書だと「カンバス」と表記されています。「カンバス」は英語の「canvas」をカタカナにしたもので、英語圏だと「カンヴァス」のように発音されています。
この「カンヴァス」を簡易的な表記にしたものが「カンバス」で、さらに日本語として読みやすいものにした語が「キャンバス」ということです。
「キャンバス」は「麻などで縫った布・油絵用の画布」などのことを表します。
主に油絵を描く際に使われるもので、絵自体を支える支持体としての機能を持っています。
キャンバスは基本的に亜麻(あま)の繊維から作られますが、大麻や綿、合成繊維などから作られることもあります。
市販のキャンバスなどは、すでに絶縁や地塗りを施している場合も多く、木枠や厚紙に貼り付けたものも存在します。このようなすでに加工が施されているものも「キャンバス」と呼びます。
キャンパスの意味
次に、「キャンパス」の意味を辞書で引いてみます。
キャンパス【campus】
⇒大学などの構内。また、校庭。転じて、大学。「キャンパスウエア」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「キャンパス」とは「大学などの構内・校庭」という意味です。また、単に「大学」自体を指して言うこともあります。
キャンパスは英語だと「campus」と表記し、元々は「敷地」や「フィールド」などを表す単語として使われていました。
そこから転じて、現在では一般に大学や専門学校の構内を指す言葉として使われています。
さらに、大学の構内や教室棟などの敷地空間だけでなく、そこに集まる学生や教員などが活動している空間・雰囲気全体を指すこともあります。
この意味での使い方が、「キャンパスライフ」という言葉です。
「キャンパスライフ」とは、学生としての暮らしや学び、学生生活などの雰囲気全体を指した抽象的な言葉です。「キャンバスライフ」とは言わないので注意する必要があります。
キャンバスとキャンパスの違い
以上の解説を踏まえますと、両者は全く別の言葉だという事が分かります。
「キャンバス」は、「油絵用の画布」を表すものです。一方で、「キャンパス」は「大学などの構内や校庭」を表すものです。
比較しても分かるように、「バ」が「パ」に変わるだけで意味自体は何も共通しているものはありません。
では、なぜ両者を混同する人が多いのかと言いますと、それはコクヨが発売している「キャンパスノート」が起因である可能性が高いです。
学生なら一度は使ったことのあるロングセラー商品「キャンパスノート」ですが、これは「大学ノート」という意味で名付けられたものです。ノートなので、当然白い色をしている商品です。
一方で、「キャンバス」に関しても画布は布なので白い色をしています。そこで、同じ白いイメージということで両者に誤解が生じたものだと考えられます。
実際には、「キャンパス」は布に対しては使いません。また、その逆の「キャンバス」も大学に対しては使いません。
似たようなイメージの言葉ですが、混同するようになった理由が分かれば、両者を間違えることもないはずです。
キャンバスとキャンパスの例文
では、最後にそれぞれの使い方を例文で紹介しておきます。
【キャンバスの使い方】
- キャンバスは別の名前だと「カンバス」「帆布」「画布」などとも言う。
- このテントは、高品質なキャンバスによって作られているものである。
- キャンバスの製造は、今日では工業化されているものがほとんどだ。
- キャンバスは、それまでの板絵の代わりに徐々に使われるようになったものである。
- キャンバスは主に亜麻の繊維から作られるが、亜麻と大麻の混織から作られることもある。
【キャンパスの使い方】
- この大学は、キャンパスは広いが駅まで遠いのが難点である。
- キャンパスの正門に、午後2時頃に来るように伝えています。
- 大学の移設に伴い、来年以降はキャンパスの移転を行うようです。
- 大学生になったので、あこがれのキャンパスライフを満喫する。
- この夏は第一志望の大学のオープンキャンパスへ行く予定です。
※「オープンキャンパス」とは、学校側が入学を希望している者に対して行う入学促進イベントのことです。
施設内(キャンパス)を公開(オープン)し、どのような学校かといったことを知ってもらうことで、学校への関心や興味を深めてもらうことが目的で行われます。
大学以外では、「体験入学」や「オープンスクール」などと呼ばれることもあります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「キャンバス」=麻などで縫った布・油絵用の画布。
「キャンパス」=大学などの構内・校庭・大学。
「違い」=「キャンバス」は「布」を表す言葉、「キャンパス」は「構内」を表す言葉。
「キャンパス」はコクヨが販売しているヒット商品「キャンパスノート」が存在します。そのため、両者が混同されるようになったものと考えられます。実際には両者は明確に異なる言葉同士なので、正しい使い分けをするようにしてください。