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教科書 文系と理系の壁はあるか 要約 あらすじ 解説 ノート テスト

 

『文系と理系の壁はあるか』は、高校国語・現代文の教科書に出てくる評論文です。そのため、学校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、実際に本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、『文系と理系の壁はあるか』の漢字や語彙、要約、感想文などを簡単に解説しました。

『文系と理系の壁はあるか』のあらすじ&要約

 

本文は大きく分けて、3つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①私は著者インタビューで「文系出身なのに、どうしてこんなに科学の取材ができるのですか」ということをよく聞かれる。この問いには、お世辞と批判の二つのニュアンスがあり、アカデミズムは専門外の人間が口を出すなという不文律に縛られているのだろう。

②英米の科学ノンフィクションは、科学者やその分野の専門家であることが多い。日本では、科学ジャーナリストは新聞社やテレビ局など組織に所属する科学記者が大半で、文系の記者も多い。一般読者にわかりやすく伝えることが使命であり、専門知識は現場で学んでいけばいいという考えだ。

③私は、1997年のクローン羊ドリー誕生、翌年報じられた非配偶者間体外受精と生殖医療の展開、ES細胞、EG細胞など、新たな生命を選別する技術の登場に違和感を覚えた。科学のことは科学者に任せておけばいいわけではなく、成果を享受する私たちが最終的な選択を行う責任がある。理系文系、専門家などといった色分けはナンセンスであり、自分の視野を狭めるような枷をはめる必要はないのである。

200字要約

クローン羊ドリー誕生、体外受精、生殖医療、ES細胞、EG細胞など、新たな生命を選別する技術の登場に、私は違和感を覚えた。科学のことは科学者に任せておけばよいのではなく、成果を享受する私たちが技術を理解し、社会的な影響を考え、最終的な選択を行う責任がある。理系文系という色分けはナンセンスなので、自分の視野を狭めて枷をはめるようなことをしたり、理系かどうかという理由で科学を排除したりする必要はない。(199文字)

『文系と理系の壁はあるか』の意味調べノート

 

【新著(しんちょ)】⇒新しく出版した著書。

【編集者(へんしゅうしゃ)】⇒書籍や雑誌などの企画立案、編集作業などをする職業の人。

【メディア】⇒媒体。特に、新聞・雑誌・テレビなどの媒体。

【科学(かがく)】⇒体系的な知識のこと。広い意味では「知識や学問」を指し、狭い意味では「自然科学」を指す。「自然科学」とは自然について研究する学問のこと。

【物理学(ぶつりがく)】⇒物体の運動や電気、熱など自然界の現象を研究する学問。自然科学の一分野。

【脳神経科学(のうしんけいかがく)】⇒主に記憶や学習、感情など、脳や神経の働きを研究する学問。

【宇宙科学(うちゅうかがく)】⇒主に宇宙での観測を研究する学問。

【ニュアンス】⇒言外に表された話し手の意図。

【お世辞(おせじ)】⇒他人に対する愛想のよい言葉。

【遺伝子組み換え技術(いでんしくみかえぎじゅつ)】⇒ある生物の遺伝子を、別の生物の遺伝子配列に組み込み、新たな性質を付与する技術。このことにより、害虫やウイルスに抵抗性のある作物などを作ることができる。

【育種(いくしゅ)】⇒生物のもつ遺伝的形質を利用して改良し、有益な品種を育成すること。

【著者(ちょしゃ)】⇒書物を書き著した人。

【書評(しょひょう)】⇒書物について、その内容を紹介・批評した文章。

【アカデミズム】⇒学問研究において、伝統的・保守的な立場を固持しようとする立場。

【歴然(れきぜん)】⇒はっきりとしているさま。あきらかであるさま。

【不文律(ふぶんりつ)】⇒文書はなくても守られている規律。暗黙の約束・ルール。

【英米(えいべい)】⇒イギリスとアメリカ。

【ノンフィクション】⇒虚構を用いず、事実に即して作られた作品。

【ライター】⇒文章を書くことを職業とする人。

【共著(きょうちょ)】⇒二人以上の人が共同して一冊の書物を書き著すこと。

【単著(たんちょ)】⇒一人によって一冊の書物を書き著すこと。

【意義(いぎ)】⇒物事の存在・実行などにおける価値や重要性。

【ジャーナリズム】⇒新聞・雑誌・ラジオ・テレビなどにより、時事的な問題の報道・解説・批評などを伝達する活動の総称。

【成熟(せいじゅく)】⇒成長しきっていること。

【修める(おさめる)】⇒学問・技芸などを、学んで身につける。

【優秀(ゆうしゅう)】⇒非常にすぐれていること。

【筆一本(ふでいっぽん)】⇒文章を書くことだけで生計を立てること。

【文部科学省(もんぶかがくしょう)】⇒日本の行政機関の一つ。主に教育や学術を担当する。

【専攻(せんこう)】⇒ある一つのことを専門に研究すること。

【エキスパート】⇒専門家。熟練者。

【使命(しめい)】⇒責任をもって果たさなければならない務め。

【科学技術(かがくぎじゅつ)】⇒科学の研究成果を生かして、人間の生活を役立たせる技術。テクノロジー。

【主体的(しゅたいてき)】⇒自らの意志や判断に基づいて行動するさま。

【クローン】⇒一つの細胞または個体から、受精の過程を経ず、細胞分裂を繰り返すことによって生ずる細胞群および個体。

【非配偶者間体外受精(ひはいぐうしゃかんたいがいじゅせい)】⇒配偶者(夫もしくは妻)でない第三者の精子や卵子を体外で受精させて、受容者の卵巣に戻し、妊娠させること。主に不妊治療などのために行う。「配偶者」とは「夫婦の一方からみた場合の他方」を指す。

【生殖医療(せいしょくいりょう)】⇒人工授精や体外受精などの生殖技術を使い、妊娠や出産をさせようとする不妊治療のこと。「生殖」とは「生物が自らと同じ種に属する個体をつくること」を表す。

【臓器(ぞうき)】⇒胃、心臓、大腸などの体内にある器官。

【ES細胞(イーエスさいぼう)】⇒動物の血液、神経、肝臓、膵臓といった全身の細胞を作り出すことができる細胞のこと。

【中絶(ちゅうぜつ)】⇒人工妊娠中絶のこと。

【胎児(たいじ)】⇒哺乳類の母胎内にあって、まだ生まれていない子。

【EG細胞(イージーさいぼう)】⇒生殖細胞の元となる始原生殖細胞から分離した細胞。

【違和感を覚える(いわかんをおぼえる)】⇒しっくりしない感じがする。

【成果(せいか)】⇒あることをして得られたよい結果。

【享受(きょうじゅ)】⇒受け入れて自分のものとすること。多く精神的、物質的な利益を受けて、それを味わい楽しむことを指す。

【色分け(いろわけ)】⇒物事をある基準によって種類分けすること。

【ナンセンス 】⇒無意味であること。意味をなさないこと。

【狭める(せばめる)】⇒せまくする。

【枷(かせ)】⇒心理的、物理的に行動の妨げになるもの。

【容易(ようい)】⇒たやすいこと。苦心を必要としないこと。

【営み(いとなみ)】⇒行為。

【排除(はいじょ)】⇒おしのけてそこからなくすこと。締め出すこと。

『文系と理系の壁はあるか』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①会社をセンデンする。

②彼はユウシュウな人物だ。

フブンリツを守りなさい。

④スペイン語をオサめる。

⑤自由をキョウジュする。

解答①宣伝 ②優秀 ③不文律 ④修 ⑤享受
問題2「科学のことは科学者にまかせておけばいいのではない。」とあるが、これはどういうことか?
解答例科学の成果を享受するのは一般の私たちなのだから、私たち自身が技術を理解してその社会的な影響を考え、最終的な選択を行う責任があるということ。
問題3

本文の内容を表したものとして、最も適切な選択肢を選びなさい。

(ア)英米の科学ノンフィクションには、科学の専門家以外のライターが多く、読者にも大きな信頼を与えていることが理解できる。

(イ)筆者は、クローン羊や体外受精、生殖医療、ES細胞といった新たな技術の誕生に、人間の営みとしての科学の可能性を感じた。

(ウ)科学のことは私たち一般人の専門領域ではないため、理系文系という色分けをせずに科学者に任せておくべきである。

(エ)科学の成果を享受するのは一般の私たちであるため、私たち自身が技術とその社会的な影響を考え、最終的な選択を行う責任がある。

解答(エ)

『文系と理系の壁はあるか』の感想文

 

学校の授業などで、「感想文を書きなさい」という課題が出されることがあります。本作の場合、タイトルにもあるように「文系と理系の壁はあるか?」というのが一つのテーマです。

そして筆者の主張は、「文系と理系には壁がない」というものです。よって、感想文に関してもその事について書くのが自然な流れとなります。

解答例

高校生になると、それぞれの進学先によって文系・理系と形式上分けられるのが一般的である。だが、理系とされる医学は人の体や精神と向き合う学問なので、医師には人間を理解することが求められる。人間を理解するには、文学、哲学、教育学などの文系とされる知識や教養も必要である。また、大学へ進学すると、心理学は文系、精神医学は理系の受験科目だが、ともに人の精神と向き合う学問である。物理学や自然科学、生物学なども、地球環境全体の生命の問題として考えなければいけないので、理系文系双方の視点が必要である。学問は様々な視点から取り組むべきだし、私たちが生きている社会全体は、理系文系に分かれてはいない。したがって、文系と理系の壁というのは本来なく、単なる教科によって生まれる概念でしかないと思う。

書き方としては、「文系と理系の壁は本来ない」という結論で締めくくるのが望ましいです。この結論に持っていくために、医学や文学などの学問的な例を出して説明するのがよいでしょう。

まとめ

 

以上、本記事では『文系と理系の壁はあるか』のあらすじや語句、感想文などの解説をしました。ぜひノート代わりにして何度も復習して頂ければと思います。

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国語力アップ.com管理人

大学卒業後、国語の講師・添削員として就職。その後、WEBライターとして独立し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。 【保有資格】⇒漢字検定1級・英語検定準1級・宅地建物取引士など。

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