分限者 意味 語源 読み方 例文 類義語 反対語

「分限者」という言葉は、主に小説文などの文学作品において使われています。ただ、実際の読み方や由来が気になる言葉でもあります。

特によく言われる「方言」なのかどうかという点に関しては疑問があります。そこで今回は「分限者」の意味や読み方、語源、反対語などを含め分かりやすく解説しました。

分限者の意味・読み方

 

まず、「分限者」を辞書で引くと次のように書かれています。

【分限者(ぶげんしゃ)】

金持ち。財産家。ぶんげんしゃ。

出典:三省堂 大辞林

分限者」は「ぶげんしゃ」または「ぶんげんしゃ」と読みます。

どちらの読み方でも読めますが、一般的には「ぶげんしゃ」と読むことの方が多いようです。

一部では、「ぶんげんしゃ」と読んだら間違いだと指摘する人もいまが、江戸時代の初期からすでに2つの読み方があったため、どちらで読んでも問題ありません。

そして意味ですが、「分限者」には「金持ち・財産家・身分の高い人・才能のある人」など複数の意味があります。また、「これらを兼ね備えた人」という意味で使うこともあります。

主な使い方としては、以下の通りです。

彼は分限者の家に生まれて育った。

この場合は簡単に言うと、「彼がお金持ちの家に生まれた」ということです。「分限者」とはこのように、お金をたくさん持っていたり身分や地位が高かったりする人に対して使われる言葉となります。

分限者の語源・由来

 

分限者」をそのまま訳すと、「分限のある人」という意味です。

「分限」の「」とは「身分のこと」を表します。そして、「」とは「可能の限度」を表します。

つまり、「分限」とは

  • 自分の身分はどれくらいか?
  • 自分はどれだけお金を払えるか?

といった限度を知っている人を指すのです。

自らの限度を知るには、それだけの能力がないといけません。

ここから、「分限者」=「お金持ち・身分の高い人・才能のある人」などの意味になったと言われています。

ただ、「身分」という言葉は江戸時代の「士農工商」の制度だったため、明治時代にはなくなってしまいました。

そこで新しく出てきたのが、「公務員」という言葉です。

明治以降の「公務員」の規則集には、「分限」という言葉が書かれています。そして、現在の公務員の世界でも「分限」は使われています。

例えば、以下のようなものです。

すべて職員の分限及び懲戒については、公正でなければならない。

出典:地方公務員法第27条

法律において、「分限」は「公務員の身分保障」あるいは「免職・休職」という意味で使われています。

よく使われるのが、「分限処分」という言葉です。「分限処分」とは「公務員」の勤務成績などが悪い場合に行う処分の事です。

これは、元々の語源である「お金持ち」などの意味とは違うので注意が必要です。

いずれにせよ、「分限」という言葉は江戸時代からすでにあり、「士農工商」の後の「公務員」が出てきて改めて使われ出したものです。

したがって、冒頭で触れた「方言」のような特定の地域によって発達した言葉ではないということになります。

分限者の類義語・対義語

 

「分限者」の「類義語」は、以下の通りです。

  • お金持ち
  • 資産家
  • 財産家
  • 富裕層
  • 資本家
  • 金満家
  • ブルジョワ
  • ミリオネア
  • 特権階級
  • 有能者
  • 名門出
  • 名家

基本的な言葉のイメージとしては「お金などの財産を持っている人」となります。

また、「分限者」には「身分の高い人」「才能のある人」といった意味もあるので、「名家」「特権階級」「有能者」なども広い意味で類義語と言えるでしょう。

逆に、「対義語」としては以下のような言葉が挙げられます。

  • 貧者
  • 貧乏人
  • 貧困層
  • 無能者

「対義語」の場合は、「貧乏人」「貧困層」など「お金を持っていない人」を表す言葉となります。そこから派生して、「有能者」の反対語である「無能者」などを使う場合もあります。

分限者の使い方・例文

 

最後に、「分限者」の使い方を実際の例文で紹介しておきます。

  1. 分限者の息子ということで、彼は周りから注目を浴びている。
  2. 母はかつて広大な土地を持つほどの分限者であったと聞く。
  3. 自分は将来必ず分限者になってやると強く誓ったのであった。
  4. 分限者か貧乏人か分からないが、あいつはいい奴には違いない。
  5. 村には女分限者がいて、馬や豚などの家畜を飼育していたようだ。
  6. 彼は自分の分限をわきまえている非常に賢い人だと言えるだろう。

 

「分限者」は「お金持ち・財産家」などの意味がありますが、この言葉自体には良い意味も悪い意味も含まれていません。

また、使う場面としては昔の小説文などが多いです。これはすでに説明した通り、江戸時代からある古い言葉だからだと言えます。

もちろん、現代語として登場することもありますが、実際には日常的に使う機会はそこまで多くないです。

なお、「分限者」ではなく「分限」という言葉だけで用いることもあります。例えば、最後の例文6.の「分限をわきまえる人」のような使い方です。

この場合は、「自分の身分や才能の程度を知っている人」という意味になります。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

分限者」=「金持ち・財産家・身分の高い人・才能のある人

語源」=「身分の限度を分かっている」⇒「能力がある」⇒「お金持ち」

類義語」=「資産家・富裕層・金満家・ブルジョワ・特権階級・有能者」など。

対義語」=「貧者・貧乏人・貧困層・無能者」など。

「分限者」という言葉は、方言ではありません。れっきとした一般用語なため、これを機にぜひ正しい意味を覚えておきましょう。