「微に入り細を穿つ」という慣用句をご存知でしょうか?
字だけを見ると、何だか堅苦しいイメージを持つかもしれません。ただ、この言葉は様々な場面で重宝され、信頼される人を表す言葉でもあります。
本記事では、そんな「微に入り細を穿つ」の意味や語源、類語・英語訳などを解説しました。
微に入り細を穿つの意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【微に入り細を穿つ(びにいりさいをうがつ)】
⇒非常に細かいところまでゆきとどく。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「微に入り細を穿つ」は「びにいりさいをうがつ」と読みます。よくある読み間違えとして、「入り」を「はいり」と読む人が多いので注意してください。「入り」は「はいり」ではなく、「いり」と読みます。
「微に入り細を穿つ」とは「非常に細かいところまで行き届くこと」を意味する慣用句です。
例えば、ビジネスにおいて部下が上司に報告書を提出するようなことはよくあります。そんな報告書が、細かいところまで気を配って作られており、非常に完成度の高いものだったとしましょう。
このような場面では、「部下の報告書は微に入り細を穿ったものだった」などのように言う事ができます。つまり、「微に入り細を穿つ」とは物事が隅々まで行き届いている様子を表す慣用句ということです。
なお、「微に入り細に及ぶ(びにいりさいにおよぶ)」と言うこともあります。意味自体は全く同じと考えて問題ありません。
微に入り細を穿つの語源・由来
「微に入り細を穿つ」は、細かな所まで入り込み、物事の本質をとらえることを語源とします。
「微」は「微妙」「微生物」などの語があるように「非常に小さいこと」、「細」は漢字の通り「細かい」という意味です。
そして、「穿つ(うがつ)」はあまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、「物事の本質を的確に言い表す」という意味を持っています。
よく「穿(うが)った見方」という言い方をしますが、「ひねくれた見方」のように誤った意味で使われがちです。しかし、実際は「物事の本質を的確にとらえた見方」というのが正しい意味となります。
それぞれの意味を整理しますと、「非常に細かい部分にまで入り込み、物事の本来の姿をとらえる」となります。転じて、「非常に細かな所まで行き届く」という意味になるわけです。
微に入り細を穿つの類義語
続いて、「微に入り細を穿つ」の類義語を紹介します。
紹介したもの以外にも、「微に入り細に入り(びにいりさいにいり)」という類義語があります。意味は、「とても細かい所まで入り込む様子」を表したものです。
こちらは良い意味として使える一方で、「細かな点まで気にしすぎる」というネガティブな使い方をする場合があります。そのため、ほめ言葉として使いたい時は「微に入り細を穿つ」を使う方が無難でしょう。
微に入り細を穿つの対義語
逆に、「対義語」としては次のような言葉が挙げられます。
反対語は、物事を大ざっぱにしたりいい加減にしたりする様子を表す言葉となります。いずれも良い意味として使われるものではありません。
微に入り細を穿つの英語訳
「微に入り細を穿つ」は、英語だと次の二つの言い方があります、
「the minutest details(詳細)」
「with scrupulous care(細かく気を使って・入念に)」
「minutest」は「minute」の最上級で、「微細な・詳細な」という意味です。そして、「detail」には「細部」という意味があるので、「minutest details」で「詳細」となります。
また、「scrupulous」は「(小さい点まで)几帳面な・細心の」という意味です。「注意・配慮」という意味を持つ「care」と合わせて、「細かな点まで気を使って」という使い方ができます。
例文だと、以下のような言い方です。
She is attentive to the minutest details.(彼女は細かな所まで行き届いている。)
She does everything with scrupulous care.(彼女は何事も細かく気を使って行う。)
※「attentive to」は「気を使って・注意して」という意味です。
微に入り細を穿つの使い方・例文
最後に、「微に入り細を穿つ」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 旅行先で宿泊したホテルが、微に入り細を穿つような素晴らしい対応でした。
- 上司の微に入り細を穿つような説明で、部下達の新規事業への不安は吹き飛んだ。
- 近所のレストランは、微に入り細を穿ったおもてなしをすることで有名である。
- 今回新しく出版された辞書は、微に入り細を穿った内容なのでおすすめです。
- 今年の新入社員は、微に入り細を穿つ仕事ぶりをしているので注目を集めている。
- 担任の先生は微に入り細を穿った授業をしてくれるので、生徒から信頼されている。
「微に入り細を穿つ」は、様々な場面において用いることができます。その対象としては、人の対応や授業などの行動・ふるまいだけでなく、辞書などのように形ある物に対しても使われます。
いずれにせよ、「微に入り細を穿つ」は良い意味として使われる慣用句です。もしもあなたがこの言葉をかけられたら、相手から良い評価を受けたと思って間違いないでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「微に入り細を穿つ(びにいりさいをうがつ)」=非常に細かいところまで行き届くこと。
「語源・由来」=細かな所まで入り込み、物事の本質をとらえるということから。
「類義語」=「痒いところに手が届く・克明に・子細に・具に・丹念に」
「英語訳」=「the minutest details」「with scrupulous care」
細かな所まで気を配るのは、急にできることではありません。日頃から自分の周りの物事に関心を持ち、自然と配慮ができるような人になりたいですね。