バラと通貨はどう違う?  要約 意味調べノート あらすじ 漢字 解説

『バラと通貨はどう違う?』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『バラと通貨はどう違う?』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『バラと通貨はどう違う?』のあらすじ

 

本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①通貨の基本とは何か?例えば、バラはバラという名前のおかげで美しいわけでも、香り豊かなわけでもない。バスという名前になっても、バラの香りは変わらない。ところが、通貨は、人がそれを通貨だと認定しなければ、通貨にならない。通貨という名前を剥奪されれば、通貨ではなくなってしまう。通貨においては、名前がすべてなのである。

②荻原重秀は、貨幣は「国家が造る所」である限り、瓦礫でもいいと言っている。彼は、小判や銭などに含まれる金属の含有量を減らすことで、金属の節約と発行量の増加を図った。当時の江戸幕府は、金属の産出量に限界があったが、通貨の発行量を減らせば、経済が行き詰まる。そこで、限りなくタコ抜きに近いタコ焼きづくりに打って出たのだ。彼は、銅の含有量が少ない銅銭でも鋳造すべきであり、そのような銅銭でも紙幣には勝ると考えたわけである。だが、瓦礫はよくても紙は駄目という認識には、彼の貨幣観の限界も感じる。タコ焼きだと認めてもらうには、やはりタコ焼きの形状が必要だったということだ。

③国家が通貨だと宣言したものは、何でも通貨になるのか?例えば、政府が「政府紙幣」というものを発行し始めたとすると、政府はカネが不足しているのではという疑いが深まる。結果、人々は政府紙幣を中央銀行券に両替しようとする。すると、需給の原理によって、中央銀行券の価値が上昇する。「国家が造る所」の通貨も、その国が信用に足る国でなければ、幅広く通貨として認知されるとは限らないのだ。

④通貨の基本は認知であり、認識である。人が通貨だと認めれば通貨であり、そうでなければ通貨ではない。これは通貨だと言うなら、人はそれを信じる。だが、信頼できていたはずの相手が胡散臭い感じになってきたら、その相手が通貨だと言ったものの通貨性も疑わしくなる。要するに、通貨の基本は「人本位制」なのである。

『バラと通貨はどう違う?』の要約&本文解説

 

100字要約通貨は名前がすべてであり、名前を剥奪されれば、通貨ではなくなる。通貨は人々の認識で成り立ち、国が発行しても信用がなければ価値を持たない。通貨の基本は、人が相手を信頼できるかという「人本位制」である。(99文字)

通貨の基本とは何か?

この文章では、「通貨とは何か」という通貨の本質について解説されています。筆者はまず、バラの例を使って「名前が変わっても本質は変わらないもの」と「名前によって本質が決まるもの」の違いを説明しています。

「バラ」は、「バス」と呼ばれても香りや美しさは変わりません。しかし、通貨は違います。通貨は、人々がそれを「通貨」として認めなければ、ただの紙や金属の塊になってしまうのです。つまり、通貨の価値は「認識」によって成り立っているということです。

荻原重秀の貨幣観

江戸時代の荻原重秀は、通貨の本質が「国家が発行したものである」という点に注目しました。彼は、貨幣の金属含有量を減らしても、国が通貨として認めれば問題ないと考え、小判や銭の質を落として発行量を増やしました。これは、たとえるなら「タコのほとんど入っていないタコ焼き」を作るようなものです。

しかし、彼の考えにも限界がありました。彼は「瓦礫のような貨幣」には賛成でしたが、紙幣には否定的でした。これは、当時の人々が「貨幣は金属であるべき」と考えていたからです。通貨として認めてもらうには、一定の「形」が必要だったのです。

通貨は信用によって成り立つ

次に筆者は、「国家が通貨と宣言すれば、何でも通貨になるのか?」という疑問を投げかけます。

例えば、政府が「政府紙幣」というものを発行し始めたとしましょう。すると、人々は「政府はカネが不足しているのでは?」と疑い、政府紙幣より中央銀行券(現在の日本なら日本銀行券)を求めるようになります。

こうなると、政府紙幣の信用は低下し、価値が下がります。つまり、通貨は単に「国家が作ったもの」ではなく、その国がどれだけ信頼されているかによっても価値が決まるということです。

通貨の本質は「人本位制」

最終的に筆者は、通貨の本質は「人本位制」だと結論づけています。つまり、人々が「これは通貨だ」と信じているうちは通貨として機能しますが、信頼を失えばただの紙や金属になってしまうということです。

例えば、かつてのジンバブエドルは、政府の信用が失われたため、急激なインフレで紙くず同然になりました。このように、通貨の価値は、人々の認識と信用によって支えられているのです。

『バラと通貨はどう違う?』の意味調べノート

 

【吐露(とろ)】⇒思っていることを包み隠さず話すこと。

【剥奪(はくだつ)】⇒権利や資格などを無理やり取り上げること。

【特性(とくせい)】⇒そのものが持つ独自の性質や特徴。

【遂行(すいこう)】⇒物事を最後までやり遂げること。

【本質的(ほんしつてき)】⇒物事の根本に関わる重要な性質を持つこと。

【権威(けんい)】⇒社会的に認められた強い影響力や支配力。

【在庫(ざいこ)】⇒販売や使用のために蓄えてある品物。

【苦肉の策(くにくのさく)】⇒苦し紛れに考えた方法や対策。

【継続(けいぞく)】⇒物事を続けること。

【保証(ほしょう)】⇒確実であることを請け合うこと。

【後生大事(ごしょうだいじ)】⇒非常に大切にすること。

【神通力(じんつうりき)】⇒超人的な不思議な力。

【突如(とつじょ)】⇒急に。突然。

【需給の原理(じゅきゅうのげんり)】⇒供給と需要のバランスで価格が決まるという考え方。

【敬遠(けいえん)】⇒かかわりを持つことを嫌ってその物事を避けること。

【インフレ】⇒物の値段が上がり、お金の価値が下がる現象。

【肝に銘じる(きもにめいじる)】⇒深く心に刻み、忘れないようにすること。

【胡散臭い(うさんくさい)】⇒何か怪しくて信用できない感じがすること。

『バラと通貨はどう違う?』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①心情をトロする。

②計画をスイコウするのは難しい。

③勘定ブギョウが記録を確認する。

④鉄分を多くガンユウした食品。

⑤努力をケイゾクすることが大事だ。

解答①吐露 ②遂行 ③奉行 ④含有 ⑤継続
問題2「通貨に関してはバラのようにはいかないということである」とあるが、「バラのように」とはどういうことか?
解答バラは名前のおかげで美しいわけでも、香り豊かなわけでもないということ。
問題3「今鋳するところの銅銭」とは、どのような銅銭か?本文中の語句を使い20文字以内で答えなさい。
解答含まれる金属の含有量を減らした銅銭。
問題4

次のうち、本文の内容を最も適切に表しているものを選びなさい。

(ア)通貨は、一定の金属含有量が保証されている限り、その価値を維持できるものである。

(イ)通貨の価値は、国家の宣言によって決まり、人々の認識や信用は関係ない。

(ウ)通貨の本質は、人々がそれを通貨として認識し、信用することによって成り立つものである。

(エ)政府が新しい通貨を発行すれば、それが必ず通貨として認められ、流通するようになる。

解答(ウ)
問題5『通貨の基本は「人本位制」なのである』と述べる筆者の考えについて、あなた自身の意見を述べなさい。
解答例私は、筆者の「通貨の基本は『人本位制』である」という考えに賛成する。なぜなら、通貨は単なる紙や金属ではなく、人々が価値を信じることで成り立っているからだ。例えば、日本円や米ドルは、政府や中央銀行が発行しているから価値があるのではなく、多くの人が「これは使える」と信じているからこそ流通している。仮に、日本政府が新しい通貨を発行したとしても、それが信頼されなければ人々は使おうとしないだろう。逆に、ビットコインのように国が発行しないものであっても、多くの人が価値を認めれば通貨のように使われることがある。歴史を見ても、通貨の信用が失われたときに混乱が起きている。例えば、戦後の日本では、政府が発行した紙幣の信用が低下し、人々は米ドルや金のような別の価値を持つものを求めた。また、ジンバブエでは政府が大量の紙幣を発行したことでインフレが発生し、人々は自国の通貨を信用しなくなった。その結果、米ドルなど他国の通貨が日常的に使われるようになった。このことからも、通貨の本質が人々の信頼にあることが分かる。以上のような例から考えると、通貨の価値は国家が決めるものではなく、人々が認めることで成り立つものである。したがって、「人本位制」という筆者の主張には十分な説得力があると私は思う。

まとめ

 

今回は、『バラと通貨はどう違う?』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。