「馬脚を現す」という慣用句をご存知でしょうか?
普段の文章だけではなく、ドラマや小説文の中でも使われている表現です。ただ、誤用が多いことでも知られているため、具体的な起源や成り立ちなどが気になる言葉でもあります。
そこで本記事では、「馬脚を現す」の意味や語源、使い方、英語表現などを含め詳しく解説しました。
馬脚を現すの意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【馬脚を現す(ばきゃくをあらわす)】
⇒隠していたことがあらわれる。化けの皮がはがれる。しっぽを出す。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「馬脚を現す」は、「ばきゃくをあらわす」と読みます。意味は「隠していたことがあらわれること・化けの皮がはがれること」などを表したものです。
例えば、刑事ドラマなどでは、警察に疑われていた犯人が秘密をバレてしまうようなことはよくあります。今まで犯人であることを隠していたのに、わずかなミスや証拠から自分が犯人だと分かってしまうようなことです。
このような場面では、「彼はついに馬脚を現した」などのように用いることができます。
つまり、隠していた正体や悪事、実力のほどなどがあらわになることを「馬脚を現す」と言うわけです。
なお、「馬脚を現す」は「馬脚を露わす」と書くこともあります。どちらを使っても意味自体は同じと考えて下さい。
元々、「露」という字は「露見」「暴露」などがあるように「何かを表に出す」という意味で使っていました。そのため、「露す」とも書くのです。
ただし、これは漢字の母国である中国語に限った話であり、現在では「露」は「ロ・つゆ」と読むのが一般的です。そのため、どちらかと言うと「現す」と書くことの方が多いです。
馬脚を現すの語源・由来
「馬脚を現す」の「馬脚」は、「芝居で馬の脚を演じる役者のこと」を表します。その中でも特に、「後ろ脚の部分」を指すことが多いと言われています。
よく舞台などで、役者さんが馬の被り物を二人でかぶり、前脚と後脚になるシーンを見たことがないでしょうか?馬脚を演じるためには、当然二人で息を合わせて動かなければいけません。
ところが、この役者さんが芝居の経験が少ない人だと、うっかり姿を見せてしまうことがあります。すると、せっかくの演技も台無しになってしまいます。
そうした場面から、「馬脚を現す」は「隠していた物事が明らかになる」という意味の慣用句として定着していったのです。
このように考えると、「馬脚を現す」は悪い意味で使うということも分かるでしょう。なぜなら、「馬脚」は本来は演技上、隠しておきたい箇所だからです。
現在でもその名残はあるため、この言葉は悪事や不祥事など良くない秘密がバレてしまったような際に使われることがほとんどです。
ちなみに、「馬脚を現す」が最初に使われたのは、中国の古典劇『元曲陳州糶米』だと言われています。
その中の一節に、「我們露出馬脚来了(日本語訳:私たちの馬脚が露出したので来たのだ)」という一文が残されています。この一文がきっかけで、やがては日本にまで言葉が広まっていったということです。
馬脚を現すの類義語
続いて、「馬脚を現す」の類義語を紹介します。
類義語は「隠していた悪い物事が現れてしまう」という意味の言葉となります。
この中でも、「化けの皮がはがれる」と「尻尾を出す」は類義語の中でもほとんど同じ意味です。したがって、両者は「馬脚を現す」の同義語と定義しても問題ありません。
ここで一点だけ注意点があります。
それは、「襤褸が出る」「尻尾を出す」などとは言いますが、「馬脚を出す」とは言わないということです。仮に「馬脚を出す」だと、「馬の脚を出す」というよく分からない意味になってしまいます。
「馬脚を現す」は、「馬の足に扮した役者が見せてはいけない姿をうっかり見せてしまった」という意味から来ています。そのため、語尾は「出す」ではなく「現す」になると覚えておきましょう。
馬脚を現すの英語訳
「馬脚を現す」は、英語だと次のように言います。
「to reveal one’s true nature(本当の性質が出る)」
「show one’s true colors(本性をあらわす)」
「reveal」は「明らかにする」、「true」は「本当の」、「nature」は「性質」という意味です。
また、後者の「colors」は「色」という意味です。「顔色が出る」などの言葉もあるように、人の気持ちを表す時に「色」を使うことがあります。そのため、英語でも同様に「true colors」で「本性」を表すことになります。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
I tried him to reveal his true nature.(私は彼の本性を暴くために試した。)
You have finally shown your true colors.(ついにあなたは本性を現した。)
「one’s」の部分には「my」「your」「his」「her」など、所有格の代名詞が入ります。
馬脚を現すの使い方・例文
最後に、「馬脚を現す」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 彼女はうっかり口を滑らせてしまい、馬脚を現したようだ。
- 簡単なミスをして、馬脚を現すなんて君はやってしまったね。
- 最初から彼を犯人だと疑っていたが、ついに馬脚を現したようだ。
- 馬脚を現さないように、彼女はもっと慎重に行動した方がよい。
- 上司は穏やかで優しい人に見えますが、怒ると馬脚を現します。
- あの政治家は馬脚を現して、支持者を幻滅させてしまったようだ。
「馬脚を現す」は、例文のように否定的な使い方をするのが基本です。悪事や欠点・本性など、相手に悪い印象を与えるものが明らかになるような時に使われます。
逆に、相手にとって良いことを隠しているような時は使いません。例えば、こっそりプレゼントを用意していたのに相手に見つかってしまったような場面で用いるのは誤用です。
そうした場合に「馬脚を現した」などのように言うと、悪いことをしたと思われてしまいます。この場合は、単に「バレた」「気づかれた」などのような簡易的な表現を用いるようにします。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「馬脚を現す」=隠していたことがあらわれること・化けの皮がはがれること。
「語源・由来」=芝居で馬の脚を演じる役者が、うっかり姿を現してしまうことから。
「類義語」=「本性をあらわにする」「化けの皮が剥がれる」「襤褸が出る」「尻尾を出す」
「英語訳」=「to reveal one’s true nature」「show one’s true colors」
「馬脚を現す」は、元々は中国の古典劇でも使われた言葉でした。しかし、現在では日本語として広く使われているため、この機会に使い方を覚えておきましょう。