新しい博物学を 要約 あらすじ 解説 意味調べノート

『新しい博物学を』は、教科書・論理国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『新しい博物学を』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『新しい博物学を』のあらすじ

 

本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①近代科学は、ガリレオに始まり、ニュートンによって集大成された。ニュートンの理論とは独立に、科学の大衆化も同時並行的に進んだ。自然観察のための道具とグローバル化した情報の集積によって、科学の大衆化が進み、博物学が科学の主流となった。人々は、自然の摂理に神の意図を読み解く「自然哲学」を楽しんだ。

②しかし、産業革命以来、技術の発展には目を見張るものがあり、技術の基礎をなす基本原理の応用が認識されるようになった。そして、科学はマクロからミクロへ、デカルトが主張した要素還元主義を旗印とするサイエンス(自然科学)へ変質した。今や、変質した科学が技術を通じて現代の文明を駆動していると言っても過言ではない。

③サイエンスへと変質した結果、科学は等身大の世界から外れてしまった。そして、国の命運を担うかのように言い立てられ、日常における個人の営みからはるかに離れてしまった。どうかして科学を身近に引き寄せ、今一度科学の楽しみを取り戻せないかと考えて、私は「新しい博物学」を提案している。

④あらゆるモノをめぐる知的な営み全部をつなぎ合わせた総合知の学問「新しい博物学」は、役に立たなくても、新しいものをつけ加えなくても、知的に楽しく、これまでと違った目で世界を眺めることができる。そんな総合地の学問として「新しい博物学」が育ってくれたらと思う。二十一世紀という時代の科学の一つの目標ではないか。

『新しい博物学を』の要約&本文解説

 

200字要約近代科学はかつて自然哲学として人々に親しまれたが、産業革命後、要素還元主義のサイエンスへ変質し、マクロからミクロ研究が主流となり日常から離れるようになった。こうした状況を改め、科学を等身大の世界に引き戻すためには、知的に楽しい総合知の学問である「新しい博物学」を育てることが必要である。それは世界を多角的に眺め、さまざまな知識をつなぎ合わせる営みであり、二十一世紀における科学の重要な目標である。(198文字)

筆者の主張は、「現代の科学は細分化され過ぎて日常生活から遠ざかってしまったので、もっと身近で総合的に自然や世界を楽しむ“新しい博物学”を発展させるべきだ」ということです。

1. 背景

文章の前半では、近代科学の歴史的流れを説明しています。

  • 「ガリレオやニュートンの時代」:自然観察や博物学(生物・鉱物・植物などの総合的観察)が盛んで、人々は科学を身近な「自然哲学」として楽しんでいた。
  • 「産業革命以降」:科学は要素を細かく分けて分析する方向(要素還元主義)に進み、ミクロな研究が中心となった。その結果、科学は高度化し、日常の感覚から離れていった。

2. 問題点

現代の科学は国家レベルのプロジェクトや高度な技術に結びつき、一般人が「楽しむための科学」から遠くなってしまっている。

3. 筆者の提案

筆者はこの状況を変えるために「新しい博物学」という考えを提案しています。「新しい博物学」とは、以下のような特徴をもつものです。

  • 役に立つかどうかよりも「知的に楽しいこと」を大事にする。
  • 自然やあらゆるものを総合的に観察し、既存の知識をつなぎ合わせて世界を新しい目で見る。
  • 実用性よりも知的好奇心や視点の広がりを目的とする。

4. 主張のまとめ

現代科学が日常生活から乖離していることを問題視し、21世紀の科学の一つの目標として「知的に楽しく総合的に世界を見る、新しい博物学を育てるべきだ」というのが筆者の主張です。

『新しい博物学を』の意味調べノート

 

【科学(かがく)】⇒自然や社会のしくみを観察・実験して、法則を明らかにする学問。

【集大成(しゅうたいせい)】⇒多くの成果や要素を一つにまとめ上げた完成形。

【浸透(しんとう)】⇒ある考えや習慣などが徐々に広がり、深く行き渡ること。

【普及(ふきゅう)】⇒広く行き渡り、一般に広まること。

【博物学(はくぶつがく)】⇒動植物や鉱物など、自然界の事物を幅広く観察・分類する学問。

【自然科学(しぜんかがく)】⇒自然界の現象や法則を対象とし、観察や実験で探究する科学。

【自然哲学(しぜんてつがく)】⇒近代以前に行われた、自然の仕組みや本質を哲学的に探究する学問。

【目を見張る(めをみはる)】⇒非常に驚いたり感心したりして、目を大きく見開くこと。

【旗印(はたじるし)】⇒ある思想や方針の象徴的なスローガン。

【駆動(くどう)】⇒機械やシステムを動かすこと。

【ブラックボックス】⇒内部の仕組みが分からないまま、外からの操作や入力だけで結果が得られるもの。

【蘊蓄(うんちく)】⇒物事について深く蓄えられた知識。

【寄与(きよ)】⇒役立つこと。貢献すること。

【確執(かくしつ)】⇒意見や立場の違いによる対立。

【由来(ゆらい)】⇒物事が起こったり伝わったりした起源。

【知見(ちけん)】⇒観察や研究を通じて得られた知識。

【過言ではない(かごんではない)】⇒言い過ぎではない。

【命運を担う(めいうんをになう)】⇒物事の将来を左右する重要な役割を持つ。

【一顧だにしない(いっこだにしない)】⇒少しも注意や関心を向けない。

『新しい博物学を』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①彼の考え方がシントウしてきた。

②古い切手をシュウシュウする。

③自然のセツリに従って生きる。

④雑音が集中をソガイする。

⑤魚をヨウショクして販売する。

解答①浸透 ②収集 ③摂理 ④阻害 ⑤養殖
問題2「ニュートンの理論とは独立に、科学の大衆化もほぼ同時並行的に進んでいたと思っている。」とあるが、「科学の大衆化」を進めた要因は何だと筆者は考えているか?本文中から25文字以内で抜き出しなさい。
解答自然観察のための道具とグローバル化した情報の蓄積
問題3「科学へのアンビバレンスな感情」とは、どういうものか?
解答科学に対して違和感や不信感を抱く一方で、その便利さから切り離して暮らすことはできないと感じること。
問題4「二十一世紀という時代の科学の一つの目標」とは何か?
解答科学を知的に楽しい総合知の学問に育てること。
問題5

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)近代科学は産業革命後も自然哲学としての性質を保ち、日常生活に密着したままであった。

(イ)産業革命以降、科学は要素還元主義を旗印に掲げ、研究の中心をマクロからミクロに移した。

(ウ)科学の大衆化は産業革命後に衰退し、研究は専門家だけのものとなった。

(エ)科学は常に身近な自然哲学として国民に親しまれてきた。

解答(イ)

まとめ

 

今回は、『新しい博物学を』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。