「値千金」という慣用句をご存知でしょうか?スポーツ中継などにおいて使われ、「値千金のゴール」「値千金のホームラン」のように言います。
ただ、言葉の由来や具体的な使い方が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、「値千金」の意味や語源、短文、類義語などを含めなるべく簡単に解説しました。
値千金の意味・読み方
「値千金」は「あたいせんきん」と読みます。意味は「きわめて価値が高いこと・非常に価値があること」などを表したものです。
主にスポーツにおける貴重な得点シーンにおいて使われることが多いです。
例えば、野球で貴重な逆転ホームランを打った時に、「値千金のホームランを打った。」などのように言います。
また、サッカーで残り5分で貴重な同点ゴールを放ったときも「値千金のゴールを決めた。」などのように言います。
逆に、いくら価値が高くても物の価値を表すような使い方はしません。例えば、高級車を買った際に「値千金の車だ」のように使うのは誤用です。
あくまで、人の活躍や健闘などに対して使われる慣用句となります。
値千金の語源・由来
「値千金」は、中国北宋時代の詩人である「蘇軾(そしょく)」が詠んだ『七言絶句(しちごんぜっく)』という漢詩に由来します。
『七言絶句』の「春夜」の中に、次のような句があります。
これを簡単に訳すと、「春の夜はほんのひとときであっても、千金の値打ちがある」となります。
「千金」とは「千枚の黄金」という意味で、昔だと千両に値します。現在のお金でどれほどの価値があるかについては定かではないですが、大金である事に違いはありません。
春の夜は、花が清らかな香りを放ち、月がおぼろに霞んでいます。そして、夜になるとそれまで高殿で歌に興じていた人達の声も静まり、夜はしんしんとふけていきます。
この時間は、わずかであっても非常に感慨深くて貴重なものです。そのため、「春の夜」は「千金」にも値するほど素晴らしいものだと古くから中国では考えられてきたのです。
現在使われている「値千金」は、この用例から転じたものだと言われています。
値千金の類義語
「値千金」は、次のような類義語で言い換えることができます。
- 非常に貴重な
- とても大事な
- 千金に値する
- 万金に値する
- 価値のある
- 価値が高い
- めぼしい
- 一刻千金
- 春宵一刻
- 時は金なり
類義語は「価値が高いこと」や「貴重であること」などを表した言葉となります。
この中でも「千金に値する」はほぼ同じ意味の慣用句なので、「値千金」の「同義語」と定義しても構いません。
他には、「一刻千金」や「時は金なり」なども広い意味では類義語に含まれます。
「一刻千金」とは「わずかな時間が千金にも相当する」という意味の四字熟語です。時間が貴重であることのたとえを表した言葉です。
また、「時は金なり」とは「時間は大事なので、むだに費やしてはいけない」という意味のことわざです。どちらも「時間の尊さ」を伝えている言葉となります。
値千金の対義語
逆に、「対義語」としては以下の言葉が挙げられます。
- 価値の低い
- 価値のない
- 貴重でない
- 大事でない
- どうでもいい
- 取るに足らない
「値千金」を直接的に表すような対義語はありません。どれも類義語を否定したような表現となります。
基本的には、「価値が低いこと」「貴重でないこと」などを表した言葉が反対語となります。
値千金の英語訳
「値千金」は、英語だと次のように言います。
「valuable」(貴重な・高価な)
「precious」(貴重な・大切な)
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
She scored a valuable goal.(彼女は貴重なゴールを決めた。)
He hit a precious home run.(彼は貴重なホームランを打った。)
また、慣用句的な言い方だと「worth a thousand dollars」などもあります。
「worth a thousand dollars」は、直訳すると「1000ドルに値する」という意味です。
1000ドルと同じ価値であることから、「値千金」に近いニュアンスとして使うことができます。
His volunteer work is worth a thousand dollars.(彼のボランティア活動は千金に値する。)
値千金の使い方・例文
最後に、「値千金」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 値千金のホームランを打った選手が、ヒーローインタビューに呼ばれた。
- まさかあの場面で値千金のゴールを決めるなんて、誰も思わなかったよ。
- ずっと不調に苦しんでいたが、ついに値千金のタイムリーヒットが出た。
- 値千金の決勝点により、日本代表は金メダル獲得へと大きく近づいた。
- 今回彼が成し遂げた偉業は、まさに値千金にふさわしいものだと言える。
- 犯人を捕まえることができたのは、警察官の値千金の活躍があったからだ。
「値千金」は、基本的にスポーツでの価値ある得点シーンにおいて使われます。特に野球やサッカーなどのメジャーなスポーツにおいては使われる機会が多いです。
ただ、場合によってはスポーツ以外の対象に対しても使われることがあります。例えば、その人が成し遂げた功績や偉業といったものです。
この場合は、主にビジネスシーンにおいて、相手を称賛するような場面で使うのが特徴です。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「値千金」=きわめて価値が高いこと・非常に価値があること。
「語源・由来」=北宋時代の漢詩である『七言絶句』の一文から。
「類義語」=「非常に貴重な・とても大事な・千金に値する・万金に値する」など。
「対義語」=「価値の低い・貴重でない・大事でない・どうでもいい・」など。
「英語訳」=「valuable」「precious」「worth a thousand dollars」
「値千金」は、元は中国の漢詩をきっかけにできた慣用句です。由来を知ったからには、ぜひ正しい場面で使って頂ければと思います。