「口にする」という慣用句を聞いたことがあるでしょうか?
使い方としては、「口にするのも嫌だ」「口にするのもはばかれる」などのように用いられます。ただ、この言葉を誤解している人が意外と多いようです。
そこで今回は、「口にする」の意味や語源、類義語、敬語表現などを詳しく解説しました。
口にするの意味・読み方
最初に、「口にする」を辞書で引いてみます。
【口(くち)にする】
①口に入れる。飲み食いする。また、口にくわえる。
②言葉に出して言う。話す。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「口にする」は、二つの意味があります。一つ目は、「飲み食いする・(食べ物を)口に入れる」という意味です。
この意味の場合は、日常的に使われているので大丈夫でしょう。
そして二つ目は、「言葉に出して言う・話す」という意味です。この場合は、言ってはいけないことを言うような時に使います。
【例】⇒他人の悪口を口にするなんてよしなさい。
また、言いたくない言葉を言うような時にも使います。
【例】⇒彼の名前は口にするのも憚(はばか)られる。
いずれにせよ、飲食したり言葉を発したりするような場面で「口にする」を用いることになります。
口にするの敬語表現
「口にする」の敬語表現は、意味によって二通りに分かれます。
まず、①の場合は「飲み食いする」という意味でした。したがって、こちらは「召し上がる(尊敬語)」「頂く(謙譲語)」などが適切となります。
一方で、②の場合は「話す」という意味なので、「おっしゃる(尊敬語)」「申す(謙譲語)」などが適切となります。
ここで一点だけ注意することがあります。それは、「口になさる」「口にされる」などの言い方はしないということです。
「する」は、敬語にすると「なさる」「される」などに変化するので、語尾を勝手に変化してしまう人がいます。
ところが、「口にする」はこの言葉自体で一つの慣用句です。そのため、敬語にする場合は丸々言い換える形にするのが正しいことになります。
口にするの類義語
続いて、「口にする」の類義語を紹介します。類義語も意味によって二つに分かれます。
①「飲み食いする」
- 食べる
- 飲む
- 摂取する
- 平らげる
- 貪る
- のどを通す
- 腹に入れる
②「言葉に出して言う・話す」
- 言う
- 語る
- しゃべる
- 口を開く
- 発する
- 声に出す
- 漏らす
類義語はいくつかありますが、やはり「食べる」と「話す」が一番意味が近いと言えます。これらの言葉は「口にする」とほぼ同じ意味なので、「同義語」と定義しても構いません。
口にするの対義語
逆に、対義語としては以下のようなものが挙げられます。
①「飲み食いする」
- 食べない
- 飲まない
- 摂取しない
②「言葉に出して言う・話す」
- 言わない(言えない)
- 話さない(話せない)
- しゃべらない(しゃべれない)
対義語の場合は直接的な表現というのはありません。いずれも類義語を否定した間接的な表現となります。
口にするの英語表現
「口にする」は、英語だと次のように言います。
- 「speak of(話す)」
- 「talk of(話す)」
- 「mention(述べる)」
- 「eat(食べる)」
- 「drink(飲む)」
- 「taste(味わう)」
「話す」は「speak」と「talk」などの単語で表しますが、どちらも前置詞「of」が後ろにつきます。また、「eat」や「drink」は、簡単な単語として幅広く使うことができます。
実際に使う際は、「speak」と「eat」が使いやすいでしょう。
You should not speak ill of others.(人の悪口を口にするものではない。)
I want to eat a meal quickly.(早く食事を口にしたいです。)
口にするの使い方・例文
最後に、「口にする」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 読み終わった本の率直な感想を口にすることにした。
- 口にするのもはばかれるほど、くだらないテーマである。
- 飲み会の席で、政治の話題を口にするのはやめておいた方がいい。
- 本音を口にすることで、ストレスを解消できるという面もある。
- 上司への不満を、面と向かって口にするような勇気はありません。
- 新種の野菜を口にするのは彼にとって楽しみの方が大きいようだ。
- 先週からずっと断食中なので、早くおいしいご飯を口にしたいです。
すでに説明したように、「口にする」は二つの意味があるということでした。ただし、実際の用例としては「話す・しゃべる」という意味で使われることの方が多いです。
ポジティブな言葉、ネガティブな言葉などに関わらず、特定の話題を「話す・しゃべる」という意味で使うことができます。
もちろん、「食べる・飲む」の意味としても使うことができますが、あくまでこちらは補助的な用例が中心となります。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「口にする」=①「飲み食いする・口に入れる」②「言葉に出して言う・話す」
「敬語表現」=①「召し上がる・頂く」②「おっしゃる・申す」
「類義語」=①「食べる・飲む」②「言う・語る」など。
「対義語」=①「食べない・飲まない」②「言わない・語らない」など。
「英語訳」=「speak of」「talk of」「mention」「eat」「drink」「taste」
「口にする」は、複数の意味を持っている慣用句です。これを機にぜひ正しい場面で使って頂ければと思います。