文学国語『窓』いしいしんじの要約と解説、テスト対策問題

『窓』は、教科書・文学国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと内容分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『窓』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

目次

『窓』のあらすじ

本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①郊外へ向かう急行列車のシートに座り、走りゆく窓外の景色を眺めていると、隣に短編小説が座る。短編小説にページ数を尋ねてみるが、本の判型や字組みによっていくらでも変わるのだという答えが返ってくる。

②ブナ林の中を進む列車で、短編小説に自分の内容の評価について問いかけてみる。読者はその瞬間の自分を別の目を通して読んでいるのだから、短編小説の内容は読者次第でどのようにも変わる、と返される。僕は少し黙り、列車は渓谷にかかる鉄橋を渡っていく。

③小説好きの検札が切符を確かめにやって来る。その後、短編の目配せに従って外を見ると、山間を走っていたはずの列車の車窓から海岸の景色が広がる。ふるさとの港町や海上の船の様子が目に入り、十六歳の僕は都会へ出る選択をし、父、母、祖母に路線バスの後部座席からさよならと手を振る。

④気が付けば、僕は記憶の風景に手を振っていた。隣の座席を振り向くと短編小説の姿はなく、もう一度窓の外に汀の少年と犬を見つけようと目を凝らす。

『窓』の要約&本文解説

200字要約

郊外へ向かう急行列車のシートで、走りゆく窓外の景色を眺めていると、僕の隣に短編小説が座った。僕は短編小説との対話を通して、短編は長さや評価が一定ではなく、読む瞬間の読者によって意味が変わるものだと気づかされる。やがて車窓は海へと開き、ふるさとの港町や海上の船の様子から、十六歳で都会へ向かった記憶がよみがえる。僕は記憶の風景に手を振り、短編小説が消えた後も、外を走りゆく風景を窓辺に目を凝らした。

(198文字)

短編小説が話すという不思議な設定

この作品『窓』は、最初に「短編小説が隣に座って話す」という場面が出てきます。ここで多くの読者は、「なぜ本が話すのか?」と戸惑うはずです。ですが、これは作者が意図的に使っている表現方法です。

ここでの「短編小説」は擬人化されています。擬人化とは、本来は人ではないものに、人のような行動や性質を与える表現です。たとえば、「風がささやく」「空が泣く」といった言い方と同じです。この作品では、短編小説が隣に座り、質問に答え、目配せまでします。

もちろん、本が実際に動くわけではありません。これは、小説という存在を人格をもった相手のように描いているのです。

短編小説に込められた作者のねらい

では、なぜこのような書き方をするのでしょうか。それは、「小説とは何か」というテーマを、読者に体験させるためです。もし「小説は読者によって意味が変わる」と説明するだけなら、ただの評論文になります。しかし、物語の形にして、小説と会話させることで、読者は自然に「読むとはどういうことか」を考えます。

私たちは本を読むとき、黙って文字を追っているだけに見えますが、実際には心の中で本と対話しています。その見えない対話を、目に見える形にしたのがこの設定です。

作中で短編小説は、「ページ数は本の形で変わる」「内容は読者次第で変わる」と語ります。これは、小説の意味は一つではないという主張です。

たとえば、同じ物語でも、元気なときと落ち込んでいるときでは感じ方が違います。読む人の状況や心の状態によって、小説の姿は変わるのです。

「窓」が象徴するもの

そして、列車の「窓」も重要です。窓から見える景色は、山から海へ、さらに故郷の記憶へと変わります。窓は外の世界を見るためのものですが、この物語では自分の内面や過去も映し出します。

つまり、小説は「小さな窓」のような存在だと言えます。小説を読むことは、窓を通して世界や自分自身を見つめることなのです。

最終的に作者が言いたいのは、小説とは固定された答えを持つものではなく、読者とともに変わる生きた存在だということです。意味不明に思える設定そのものが、「読むとは何か」を考えさせる仕掛けになっているのです。

『窓』の意味調べノート

【ぶしつけ】⇒礼儀を欠いていて、失礼なこと。

【恐縮(きょうしゅく)】⇒相手に申し訳なく思い、恐れ入ること。

【一概(いちがい)】⇒ひとまとめにして同じように考えること。

【轟音(ごうおん)】⇒大きくとどろく音。

【気安そう(きやすそう)】⇒遠慮がなく、親しみやすそうな様子。

【貧富(ひんぷ)】⇒貧しいことと富んでいること。

【序列(じょれつ)】⇒上下や順番のきまり。

【滅相もない(めっそうもない)】⇒とんでもないことだ、ありえないことだ、などの意味。

【滋味(じみ)】⇒栄養があり、しみじみとしたうまみ。

【渓谷(けいこく)】⇒川の流れによってできた深い谷。

【かまける】⇒あることに気を取られて、ほかのことをおろそかにする。

【採集(さいしゅう)】⇒採り集めること。

【秩序(ちつじょ)】⇒きまりや順序が整っていること。

【目配せ(めくばせ)】⇒目の動きで合図をすること。

【汀(みぎわ)】⇒波が打ち寄せる水ぎわ。

【時化(しけ)】⇒風や波が荒れること。

【口になじむ】⇒食べたり言ったりして、自然にしっくりくる。

【目を凝らす(めをこらす)】⇒よく見ようとして目に力を入れる。

『窓』のテスト対策問題

問題1

短編小説は、小説を「別の目」以外にどのように表現しているか?本文中から6文字で抜き出しなさい。

解答

小さな『窓』

問題2

「ささささ。」とは何の音か?簡潔に答えなさい。

解答

波が静かに打ち寄せる音。

問題3

「ちゃんとした鉄道員」とあるが、どのような点でちゃんとしているのか?

解答

小説を読むときに、鉄道員としての自分を読み取る実直な点。

問題4

「大きく息をのんだ」とあるが、なぜか?

解答

山間を走っていたはずの列車の窓外に一面の海岸が見えたから。

問題5

次のうち、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。

(ア)急行列車で短編小説と出会った僕は、短編のページ数や評価が客観的に決められるものであると知り、故郷を離れた自分の選択を肯定した。

(イ)列車の旅の中で短編小説と対話した僕は、短編が読む人や状況によって意味を変えることを知り、車窓の変化をきっかけに、都会へ向かった過去の記憶を呼び起こした。

(ウ)短編小説と並んで座る僕は、自分の作品の価値を証明しようとする短編の姿に感銘を受け、列車の風景を通して創作への意欲を新たにした。

(エ)列車の中で短編小説と語り合った僕は、短編の評価が時代によって左右されることを理解し、消えた短編を追いかけて車窓の外に現実の景色を探し続けた。

解答

(イ)

まとめ

今回は、いしいしんじ『窓』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として活用していただければと思います。

この記事を書いた人

大学卒業後、国語の添削員として就職。その後、WEB運営会社を起業し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。
「保有資格」⇒漢字検定1級・英語検定準1級・簿記二級・宅建など。

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