
『文学の仕事』は、加藤周一によって書かれた文章です。教科書・文学国語にも取り上げられています。
ただ、本文を読むと作者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『文学の仕事』のあらすじや要約、テスト問題をなどを解説しました。
『文学の仕事』のあらすじ
本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①文学がなぜ必要かと言えば、人生または社会の目的を定義するためである。文学は目的を決めるのに役立つというよりも、文学によって目的を決める。そしてその目的を達成するための手段として技術がある。人生に意味があるかどうかが文学的問題である。
②人間の活動には、情熱と知的な操作と思考力がともに必要である。人生の目的は、知的な活動のみからは出てこない。たとえば、「孔子と牛」の話では、孔子が重荷に苦しむ牛を見て助けようとする姿が描かれる。弟子は「多くの牛が苦しんでいるのだから、一頭を助けても意味がない」と言うが、孔子は目前の存在に手を差し伸べる。また、映画『永遠と一日』では、主人公の男性が危険を承知で一人の少年を助ける。さらに木下順二の戯曲『巨匠』では、知識人が若者の前で信念を示す場面が描かれている。三つの例から言えることは、一頭の牛、一人の少年、一人の青年は、牛やアルバニア人全体や、ポーランド全体である。人間は、社会と関わるもものだが、その対象が一つでも全体でも同じことである。
③これらの例で語られているのは、自分の目の前の他者を抱きすくめるということである。孔子の牛、映画の『永遠と一日』、演劇の「巨匠」などは、いずれも目前にある対象に向けて行動を起こすことによって、生きる意味を自分の側に引き寄せた例である。最後に自分のほうに引き寄せるもの、そこに文学の力があると思うし、文学者はそれを語ることが使命である。
『文学の仕事』の要約&本文解説
『文学の仕事』で筆者が伝えたいのは、「文学とは、人が生きる意味を見つけるための営みである」ということです。
文学は、社会の中で役に立つ技術や知識とは違い、「なぜ生きるのか」「何を目的として生きるのか」という根本的な問いを考える力を与えてくれます。つまり、文学は人生の「手段」ではなく、「目的」を定めるための指針になるのです。
筆者は、知識だけでは人間の生き方は決められないと述べています。人間には理性だけでなく、情熱や感情も必要です。
たとえば、「孔子と牛」の話では、苦しんでいる牛を助けようとする孔子の行動が描かれます。弟子は「他にも苦しんでいる牛がいるのだから、一頭を助けても意味がない」と言いますが、孔子は目の前の命を大切にします。この行動は、人間の思いやりや倫理を象徴しています。
また、映画『永遠と一日』の主人公が一人の少年を助ける場面や、木下順二の戯曲『巨匠』で知識人が信念を示す場面も、同じテーマを語っています。どれも「一人の他者」に向き合うことが、「全体」を救うことと同じ価値を持つと示しています。
筆者は、こうした行動こそが文学の力だと考えます。目の前の他者に手を差し伸べることで、人は自分の生きる意味を見つける。その姿勢を描き、語り伝えるのが文学の使命なのです。文学とは、人と人とのつながりを通して「生きるとは何か」を問いかけるものだといえるでしょう。
『文学の仕事』の意味調べノート
【文学(ぶんがく)】⇒言語で表現される芸術作品。
【定義(ていぎ)】⇒ある言葉の意味・内容をはっきり示すこと。
【科学技術(かがくぎじゅつ)】⇒科学の理論をもとにして、実際に役立つものを生み出す技術。
【混同(こんどう)】⇒区別すべきものを取り違えて同じものと考えること。
【見当違い(けんとうちがい)】⇒もともとの予想や見込みが大きく外れていること。
【解放(かいほう)】⇒束縛や制限から自由にすること。
【虐待(ぎゃくたい)】⇒むごい扱いをすること。ひどい待遇をすること。
【抽象的(ちゅうしょうてき)】⇒具体的な形がなく、概念的でわかりにくいさま。
【書記(しょき)】⇒事務的な仕事をする人。
【将校(しょうこう)】⇒軍隊で中級以上の地位にある軍人。
【一斉射撃(いっせいしゃげき)】⇒多くの兵が同時に発砲すること。
【ホラ】⇒事実でないことを本当のように言うこと。うそ。
【教養(きょうよう)】⇒学問や芸術などを通して身につけた広い知識。
『文学の仕事』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①タイキュウ性に優れた商品。
②シバフの上で昼寝をした。
③ボキの資格を取りたい。
④作品にフウシが込められている。
⑤彼の話はコチョウが多い。
次の内、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。
(ア)文学は理想的な世界を夢見る力である。
(イ)文学は他人の意見に従う姿勢を育てる力である。
(ウ)文学は自ら考え、行動へとつなげる情熱を生み出す力である。
(エ)文学は社会の流れに合わせて生きるための力である。
まとめ
今回は、『文学の仕事』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。