クマを変えてしまう人間 論理国語 千松信也 要約 意味調べノート

『クマを変えてしまう人間』は、教科書・論理国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『クマを変えてしまう人間』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『クマを変えてしまう人間』のあらすじ

 

本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①クマの農業被害は、養蜂や果樹園、養鱒場(ようそんじょう)に及び、林業の被害も深刻である。クマは「熊剝ぎ」という木の皮を剝ぐ行動により、木を枯らす。しかし、生態改変者としての役割も果たしている。野生動物の行動は問題視もされるが、本来は森の多様性を生み出す意味のある営みである。一方で、人間の森林利用の代表である林業は、整然とした森を求める。均一な木々が並ぶ森を求める人間と、多様な木々を必要とする動物たちとは、森作りにおいて対立せざるを得ない。

②2010年は全国的に人里にクマが大量出没した年だった。理由は、餌を求めて行動範囲を広げたためである。クマを捕獲するためのわなは、かつては広く用いられていた。しかし、人間が通った場合の危険性が問題視され、禁止された。現在は有害鳥獣捕獲にのみ、わなの利用が認められている。

③人に危害を加える可能性のあるクマは、人里に出没しただけで、たいてい駆除される。クマの処置は、クマを守れという都市部の住民と、被害を受ける山間部の住民との間で軋轢を生む場合もある。クマが人里に出没するのは、自然とのかかわりの薄れた現代の暮らしが一因である。最近では、わなにかかった生きているシカをクマが襲ったという話まで耳にするようになった。人間活動が及ぼした自然界への影響が、クマの生態をも変化させている。

『クマを変えてしまう人間』の要約&本文解説

 

200字要約クマの農業や林業に対する被害は深刻だが、クマは木を枯らすことで「生態改変者」の役割も果たす。森に多様性を求める野生動物と、整然さを求める人間とは対立せざるを得ない。クマは行動範囲を広げたが、現在は有害鳥獣にのみ餌で誘引するわなの利用が認められている状況だ。人里に出没するクマが増えたのは、自然との関わりが薄れた現代の暮らしが一因である。人間活動が及ぼした自然界への影響が、クマの生態を変えている。(198文字)

本文のテーマは「人間とクマの対立と共存の難しさ」です。筆者は、クマの被害を単なる迷惑行為として描くのではなく、その生態的役割や人間社会との関係を多面的に捉えています。

まず、クマは養蜂や果樹園、林業に被害を与える存在として問題視されています。しかし同時に、木の皮を剝ぐ「熊剝ぎ」などの行動は、本来は森の多様性を生み出す役割を果たしており、自然界に必要な営みでもあります。

つまり、動物の行動は「被害」と「生態系の維持」という二面性を持っているのです。

一方で、人間は林業などを通じて「整然とした均一な森」を望みます。ここに、自然の多様性を求める動物たちとの対立が生まれます。

さらに、2010年にクマが大量出没した例のように、エサ不足や人間の森林利用の影響によって、クマの行動範囲は拡大しています。その結果、人里に現れるクマは危険とされ、多くが駆除されてしまいます。

ここでは、「都市部でクマを守れと言う人々」と「実際に被害を受ける山間部の人々」との間に対立も生じています。

最終的に筆者が言いたいのは、「人間の活動によって森や野生動物の生態系が変えられ、その結果としてクマの行動までも変えてしまった」ということです。

クマ問題は単に「害獣を駆除すればよい」という話ではなく、「人間と自然との関わり方」を見直す必要があると筆者は主張しています。

要点をまとめると、以下のようになります。

  1. クマの行動には森の多様性を生む役割がある
  2. しかし人間は均一な森を求めるため衝突が起こる
  3. 餌不足や森林利用の影響でクマは人里に出没するようになった
  4. クマ問題の背景には、人間の生活や自然利用のあり方がある

『クマを変えてしまう人間』の意味調べノート

 

【軒先(のきさき)】⇒家の屋根が外に突き出した部分。

【痕跡(こんせき)】⇒物事が行われたあとに残る跡。

【肥沃(ひよく)】⇒土地が豊かで作物がよく育つこと。

【多様性(たようせい)】⇒さまざまな種類や性質が存在していること。

【繁栄(はんえい)】⇒栄えて発展すること。

【整然(せいぜん)】⇒きちんと整理されている様子。

【出没(しゅつぼつ)】⇒現れたり姿を消したりすること。

【随所(ずいしょ)】⇒あちこち。いたるところ。

【錯誤(さくご)】⇒間違えること。

【厳密(げんみつ)】⇒細かい点まで正確で、すきがないこと。

【入植(にゅうしょく)】⇒新しい土地に移り住み、生活を始めること。

【誘引(ゆういん)】⇒引きつけて呼び寄せること。

【駆除(くじょ)】⇒害になるものを追い払ったり取り除いたりすること。

【軋轢を生む(あつれきをうむ)】⇒人と人との間に争いや不和を引き起こすこと。

【矢面に立つ(やおもてにたつ)】⇒批判や非難を直接受ける立場になること。

【廃棄(はいき)】⇒不要になったものを捨てること。

【腐敗(ふはい)】⇒食べ物や組織などが腐ってだめになること。

『クマを変えてしまう人間』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

シンコクな問題に直面している。

ゲンミツに計算して答えを出す。

ニュウショク者が村を作り始めた。

④動物をホカクするのは難しい。

⑤状況をハアクして行動するべきだ。

解答①深刻 ②厳密 ③入植 ④捕獲 ⑤把握
問題2クマはどのような点で「生態改変者」としての役割を果たしていると言えるか?
解答クマが木の皮を剝ぐことで、木が枯れて森林に変化が起き、林内の日当たりが改善され、残った木は成長しやすくなり、林床では草や幼木が芽吹きやすくなるという点。
問題3「動物たちがそれぞれの思惑に沿った森作りをしている」とは、どういうことか?
解答個々の動物が、生きていくうえで自分たちに合った環境になるように、森作りをしているということ。
問題4「最高の環境」とあるが、どのような点で「最高」なのか?
解答里山の森はクマにとって絶好の餌場であり、人間からも身を隠せるという点。
問題5

次の内、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。

(ア)クマの「熊剝ぎ」は林業にとって有益であり、森林を整然と保つ効果がある。

(イ)人里に出たクマは、都市部の住民と山間部の住民が協力して保護している。

(ウ)2010年にクマの出没が増えたのは、食べ物を求めて行動範囲を広げたためである。

(エ)筆者は、クマ問題は単に害獣を駆除すれば解決すると結論づけている。

解答(ウ)

まとめ

 

今回は、『クマを変えてしまう人間』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。