自然を守るということ 問題 テスト対策 意味調べノート あらすじ

『自然を守るということ』は、教科書・論理国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる部分も多いです。そこで今回は、『自然を守るということ』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『自然を守るということ』のあらすじ

 

本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①生態学の視点では、自然は人間からの介入に対して敏感に反応して、そのつどみずからをつくり変えていく。その意味で、自然と人間は、お互いを必要とするダイナミックな関係にあるといえる。人間と自然は、実はそれほど分離されているものではなく、むしろおたがいに依存しあっている面が大きい。環境倫理学では、人間か、自然かという対立にこだわっていたが、ここには自然と人間がダイナミックにかかわり合う姿が入っていない。

②「自然のために自然を守る」という保存派は、国立公園の原生林、ヨセミテの景観、屋久島の杉などの手つかずの自然には、内在的価値があると主張する。だが、それは彼ら自身による美的価値判断に基づくものでしかない。「保存」の立場にある人は、保存の対象を恣意的に線引きし、「美的な価値判断」を基準にして、意図的に決定しているのだ。土の砂漠、ヒルやゲジゲジの密生する熱帯の密林は、「尊い」と思わないので保存の対象ではない。人間の美的な価値判断を抜きにした、それ自体として尊い自然はどこにもない。いかなる自然であれ、自然はつねに人間の価値観の手垢にまみれているのだ。

③人間の長期的利益になるように、自然をかしこく持続的に管理するという発想だが、ここでの「利益」とは、人間が身体(生命)を維持するために必要なもののことであり、それは身体内部の「内なる自然」が「外なる自然」を欲するからである。人間の身体に刻み込まれた内なる自然は、外の自然と共鳴するものであり、人間の「利益」は最初から「自然」によって枠づけられている。つまり、人間が「身体」を持って存在している以上、人間の「利益」は、自然によってすでに大枠が決められている。「自然とは無関係に決められる人間の利益」などというものは、最初から存在しないのだ。

『自然を守るということ』の要約&本文解説

 

200字要約人間と自然は対立関係ではなく、相互依存の関係にある。「自然のために自然を守る」という保存派は、手つかずの自然には内在的価値があると主張するが、それは彼らの美的価値判断に基づくものでしかない。また、人間の利益は自然に基づいており、生命の維持が自然と結びついている以上、人間の利益は自然から独立して成り立たない。人間は自然と共鳴しながら生きる存在であり、利益は最初から自然によって枠づけられたものである。(200文字)

筆者が伝えたいのは、「自然と人間は対立する存在ではなく、互いに深く関わり合っている」ということです。

自然は人間の行動に対して反応し、自らを変えていきます。つまり、自然は人間とは無関係に存在するものではなく、私たちの生活と切り離せない関係にあるのです。

また、筆者は「自然を守るべきだ」とする意見に対しても、注意を促しています。たとえば、美しい景色や貴重な原生林だけを「価値ある自然」と見なすのは、結局は人間が美しいと思う感覚に過ぎません。

逆に、見た目が不快だったり、人間にとって不便な自然(砂漠やヒルが多い森など)は守ろうとしません。つまり、「自然の価値」は人間が勝手に決めていることが多いのです。

さらに、人間にとって自然が必要なのは、単に便利だからではありません。私たちは空気や水、食べ物といった自然の恵みがなければ生きていけません。人間の体そのものが「自然」と共鳴しながら成り立っているのです。

だからこそ、「自然と関係なく人間の利益を考えること」自体が間違いだというのが筆者の考えです。

このように筆者は、「自然か人間か」という対立ではなく、「人間も自然の一部である」という視点で自然との関係を考えるべきだと主張しています。自然は守るものというより、共に生きていくものなのです。

本文の要点まとめ

  • 自然と人間は別々ではなく、お互いが関わり合っている存在である。
  • 自然を「守るべきもの」と考えるとき、人間の価値観がすでに入りこんでいる。
  • 自然は人間の生命や利益の土台になっていて、切り離せないものである。
  • 「自然を守る」とは、人間と自然のつながりを正しく理解し、共に生きることである。

『自然を守るということ』の意味調べノート

 

【介入(かいにゅう)】⇒ある物事に、他の者が割り込んで関係を持つこと。

【生態系(せいたいけい)】⇒生物とそれを取り巻く環境が、互いに関係し合っている仕組み。

【生物多様性(せいぶつたようせい)】⇒さまざまな種類の生物が共存している状態。

【二項対立(にこうたいりつ)】⇒二つの考え方や概念が対立していること。

【手つかず】⇒まだ誰の手も加えられていない状態。

【恣意的(しいてき)】⇒自分の勝手な考えに基づいているさま。

【線引きをする(せんびきをする)】⇒物事の境界を決めること。範囲を決めて区切ること。

【手垢にまみれる(てあかにまみれる)】⇒多くの人に使われて古くさくなったり価値が下がったりすること。

【伐採(ばっさい)】⇒木を切り倒すこと。

【水のせせらぎ】⇒浅瀬などから聞こえる水の音。

【癒やし】⇒心や体の苦しみをやわらげること。

【理性(りせい)】⇒感情に流されず、冷静に考えて判断する力。

【束縛(そくばく)】⇒自由を制限すること。

【嗜好(しこう)】⇒好んで選ぶこと。好み。

【睡眠欲(すいみんよく)】⇒眠りたいという欲求。

【共鳴(きょうめい)】⇒同じ気持ちになったり、強く同感したりすること。

【枠づけられている】⇒ある範囲の中に決められている。

『自然を守るということ』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

ビンカンな肌をしている。

②文化がショウメツする。

バクゼンとした不安。

スイミン時間を確保する。

サバクに雨が降る。

解答①敏感 ②消滅 ③漠然 ④睡眠 ⑤砂漠
問題2「このことを背景知識として押さえたうえで、~」とあるが、「このこと」とはどのようなことか?本文中の語句を使い答えなさい。
解答人間と自然は、分離されているものではなく、おたがいに依存しあっている面が大きいということ。
問題3「人間と自然の二項対立」とは、どのような考え方か?
解答人間は自然を一方的に利用するもの、あるいは人間存在を脅かすものとしての自然と対立し、共有できないものとする考え方。
問題4「そこには、ある独特の判断が働いているとしか思えないのである。」とあるが、「ある独特の判断」とは何か?
解答自らが持つ、美的かどうかを基準にする価値判断。
問題5『人間の『身体』の内部にある『内なる自然』が、それらの『外なる自然』を欲するからである』とあるが、このように言えるのはなぜか?
解答人間の内なる自然は、外なる自然と共鳴することにより、アメニティを獲得することができるため。

まとめ

 

今回は、『自然を守るということ』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。