『権力とは何か』は、杉田敦による文章です。教科書・論理国語にも採用されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『権力とは何か』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。
『権力とは何か』のあらすじ
本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①権力にはさまざまな形があり、分類の仕方もいろいろある。最も典型的な国家による権力も、国境線を引く主権的な権力と、「群れ」の生存と繁栄そのものに関心をもつ権力とに分かれる。そして、そのどちらが政治にとって重要かということは、一つの重大な政治的争点として、今日までずっとある。
②権力を、危険で自由を奪うだけのものとして捉えると、国家権力が国民の生活を保障していることなど、権力が私たちを支えている側面が見えなくなってしまう。権力には否定的な面と同時に、生産的で積極的な面がある。単に権力を批判するだけでなく、そうした権力の二面性を見る必要がある。
③ただし、権力の生産的、積極的な側面は、ある限定された人々にとってのそれにすぎない。そういう面があるがゆえに、私たちは権力から抜けられない。私たちが権力を支えているのは、権力の否定的な面と積極的な面のバランスを計算して、プラスの間はその権力関係の中にいることを選択しているからだ。だが、この計算はごまかされることがある。しかも、ごまかされていることに気付かないことも多い。そうした側面も含めて、権力なのである。権力のバランスがマイナスになり、大多数の人が我慢できなくなれば、権力は維持できなくなるのだ。
『権力とは何か』の要約&本文解説
あなたは、「権力」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか?「怖い」「自由を奪う」「支配される」。そんな風に感じる人も多いかもしれません。
でも、本当に権力は“悪”なのでしょうか?この文章では、「権力とは何か」、そして「私たちは権力とどう向き合えばいいのか」について考察がされています。
「権力」とは「人を動かす力」のこと
まず、「権力」とは、簡単に言えば「人を動かす力」「命令を通す力」のことです。
学校で先生が生徒に指示を出したり、国が法律を決めて国民に守らせたりするのも、権力の一つの形です。
特に、国がもつ権力は「国家権力」と呼ばれ、税金を集めたり、軍隊を持ったりと、私たちの生活に大きく関わっています。
権力は「悪」なのか?見落とされがちな積極的な面
多くの人が「権力」=「悪」と思いがちですが、それは一面的な見方です。たしかに、権力は人々の自由を制限したり、言うことを聞かせたりする“怖さ”を持っています。
しかし、同時に、私たちの生活を守る役割も果たしているのです。例えば、道路の交通ルールがあるのは、みんなが安全に暮らせるようにするためです。警察や消防が機能しているのも、権力の力があるからです。
つまり、権力には「否定的な面」だけでなく、「積極的な面」もあるのです。
私たちは、なぜ権力に従うのか?
では、なぜ私たちは権力に従っているのでしょうか?それは、「従うことで得られるものがある」と感じているからです。
たとえ不満があっても、「守ってもらえるなら仕方ない」と思うこともあります。私たちは無意識のうちに、権力の良い面と悪い面のバランスを見て、「得が多いから従おう」と判断しているのです。
でも、そのバランスは本当に正しい?
問題は、この“損得の計算”がごまかされていることがあるという点です。
たとえば、「みんなのため」と言いながら、実は一部の人だけが得をしている。そんなことも珍しくありません。
しかも私たちは、そのごまかしに気づかないまま、権力を支えてしまうこともあるのです。
結局、どうすればいいのか?
そこで筆者は、大切なのは、権力の「二面性」をきちんと見きわめることだと主張しています。
- 本当にその権力は、皆の生活を良くしているか?
- 誰かだけが得をしていないか?
- ルールは公平につくられているか?
こうしたことを、私たち一人ひとりが考え続けることが、権力と向き合う第一歩です。そしてもし、「損のほうが大きい」と多くの人が感じたら、その権力はやがて成り立たなくなると筆者は問題視しています。
まとめ:権力を「正しく疑う」力を持つこと
「権力」は、「支配する力」であると同時に、「守る力」でもあります。一方だけを見て判断するのではなく、両方の面から見つめることが必要です。
そして大切なのは、私たち自身が「思考停止」にならず、目をこらして見ることです。だまされずに、正しく疑い、正しく支える力が、これからの社会をつくっていきます。
『権力とは何か』の意味調べノート
【典型的(てんけいてき)】⇒その種類の特徴を最もよく表しているさま。
【確保(かくほ)】⇒必要なものをしっかり手に入れて保つこと。
【繁栄(はんえい)】⇒豊かに栄えること。栄えて発展すること。
【全体主義(ぜんたいしゅぎ)】⇒個人の自由よりも国家や集団を優先する考え方。
【専念(せんねん)】⇒一つのことだけに集中すること。
【争点(そうてん)】⇒意見が対立して論争になる中心の問題。
【対立軸(たいりつじく)】⇒対立する立場や考え方の基準・構図。
【介入(かいにゅう)】⇒他人の事柄や状態に入り込んで関係を持つこと。
【弾圧(だんあつ)】⇒強い力でおさえつけて自由を奪うこと。
【迫害(はくがい)】⇒弱い立場の人を不当に苦しめること。
【社会権(しゃかいけん)】⇒生活・教育・労働など、人間らしい暮らしを保障する権利。
【担う(になう)】⇒責任や役割を受け持つこと。
【排除(はいじょ)】⇒不要なものを取り除くこと。
【蔓延(まんえん)】⇒悪いことが広がり、広範囲に及ぶこと。
【措置(そち)】⇒物事に対して、必要な対応や処理をすること。
【監視(かんし)】⇒注意深く見張り、異常や問題がないか見守ること。
【再配分(さいはいぶん)】⇒資源や利益などを、もう一度分け直すこと。
【侵害(しんがい)】⇒他人の権利や自由などをおかすこと。
【犠牲(ぎせい)】⇒何かを得るために、他のものを手放したり失うこと。
【我慢(がまん)】⇒つらさや不快をこらえて耐えること。
『権力とは何か』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①国のハンエイを願う。
②研究にセンネンする生活を送る。
③国民の声がダンアツされた。
④意見の違いでハイジョされた。
⑤自由をシンガイする行為だ。
次のうち、本文の内容を最も適切に表しているものを一つ選びなさい。
(ア)権力には否定的な面しかなく、私たちは常にそれから逃れようとすべきである。
(イ)国家による権力はすべて国民の自由を奪うものであり、生存や繁栄には関係がない。
(ウ)権力には否定的な面と積極的な面があり、その二面性を見極めることが重要である。
(エ)私たちは権力の強制力に屈しており、自ら権力関係を選択することはできない。
まとめ
今回は、『権力とは何か』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。