「市場経済」と「計画経済」は、どちらも経済をテーマとした文章によく出てきます。また、この2つの言葉は現代文のテーマとしてもよく使われているようです。
今回はそんな、「市場経済」と「計画経済」の仕組みについてなるべく簡単にわかりやすく解説しました。後半では、両者の「メリット」「デメリット」にも触れています。
市場経済とは
まず、「市場経済」の意味を調べると次のように書かれています。
【市場経済(しじょうけいざい)】
⇒個々の経済主体が自由に経済活動を行い、財・サービスの需要と供給は市場機構によって社会的に調整される経済制度。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
上記の説明だと難しいため、簡単に解説します。
「市場経済」とは「売りたい人と買いたい人が自由にモノを売買できる社会」のことだと考えてください。
「市場」とは、生産者と消費者が色々な商品を自由に売り買いする場所のことです。
この場所は、特定の場所などではなく、自由に売買ができるシステムのことを指します。
例えば、スーパーやコンビニなどのシステムがあります。これらのお店では、「生産者(売る側)」と「消費者(買う側)」が自由に売り買いをしています。
生産者は、適正な価格でモノを売り、利益を上げることができます。一方で、私たち消費者は好きなモノを好きな価格で買い、生活を快適にすることができます。
当たり前のように聞こえますが、このように生産者と消費者が自由に売買できる社会を「市場経済」と言うのです。
別の言い方をすると、「市場経済」=「私たちが生活している社会そのもの」とも言えるでしょう。
計画経済とは
続いて、「計画経済」の意味です。
【計画経済(けいかくけいざい)】
⇒一国の経済活動全般が、中央政府の意思のもとに計画的に管理・運営される経済体制。生産手段を公有化した社会主義国家経済の特徴の一つ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「計画経済」とは「国(政府)がモノの売買を決める社会」のことだと考えてください。
「国が決める」とは、例えば以下のようなことです。
「我が国は〇〇製品を1万個生産しよう。そのためには、国民が〇〇時間労働して〇〇日までに完成させよう。」
つまり、モノの生産量や種類、人の働く時間などを全て国が決めるということです。
一般的な社会では、このような方針は「企業」が決めます。ところが、計画経済では「国」が決めるのです。
「計画経済」というシステムは、旧ソ連(1922年~1991年)などの「社会主義」の国で行われました。
「社会主義」とは「国がお金やモノを管理し、みんなを平等にしよう」という考え方のことです。
平等を目指すために、モノの生産量や種類は全て国が管理します。そして、その結果生まれた利益を全て国民に平等に分けたのです。
このように、「国が計画的に経済をコントロールする社会」を「計画経済」と言うことになります。
市場経済と計画経済の違い
ここまでの内容を整理すると、
「市場経済」=自由にモノを売買できる社会。
「計画経済」=国がモノの売買を決める社会。
ということでした。
「市場経済」は、基本的に生産者と消費者の自由に任せる社会です。
したがって、「需要(買う側)」と「供給(売る側)」によって自然に決まる社会だと言えます。
一方で、「計画経済」は国のトップがモノの売買を計画的に決める社会です。したがって、こちらは人為的に決められる社会だと言えます。
「人為的(じんいてき)」とは、「人の手が加えられる」という意味です。
つまり、両者の違いを簡単に言うと
「市場経済」=自由で自然な社会。「計画経済」=計画的で人為的な社会。
ということになります。
両者はお互いが正反対の意味なので、「対義語」同士ということになります。
では、これらを踏まえて、それぞれのメリット・デメリットを解説していきたいと思います。
市場経済のメリット・デメリット
市場経済のメリットは、「経済が発展しやすいこと」です。
売る側の生産者としては、
- 「どうしたら商品が売れるだろうか?」
- 「どうしたら消費者が満足するだろうか?」
ということを常に研究します。
一方で、買う側の消費者としては、
- 「もっと良い商品はないだろうか?」
- 「もっと安い商品はないだろうか?」
ということを常に考えます。
お互いがより良い高みを目指すことで、その国の経済を発展させることができるのです。
しかし、市場経済にもデメリットがあります。
それは、「格差の問題」です。
市場経済では、常に競争が求められます。その結果、勝ち組と負け組がはっきりするのです。
売れない商品を作ってしまった企業は、当然つぶれてしまいます。場合によっては、強い企業だけが生き残り、市場を独占してしまうこともあるでしょう。
そうなれば、負けてしまった企業は自然と淘汰されていくことになります。結果的に、消費者側としても選択肢の幅が狭まり、大きな不便となるのです。
計画経済のメリット・デメリット
一方で、「計画経済」のメリットは「格差が起こらないこと」です。
計画経済では、国の指令に基づいてモノの計画と作成を行います。そこには、企業間同士の争いや競争はありません。
したがって、お金持ちと貧乏人のような格差はまず起こらないのです。もちろん、失業やリストラなどもありません。
そのため、不況になった時などは労働者としては大きなメリットと言えるでしょう。
一方で、計画経済にもデメリットがあります。それは、「経済が発展しないこと」です。
計画経済の場合、どれだけ頑張ったとしても給料は皆一緒です。また、競争相手もいないため、全力で頑張る理由もありません。
したがって、国民の働く意欲が低下してしまうのです。
また、その他のデメリットとして、国のトップの予測が外れた時の損失が挙げられます。
いくら国のトップと言っても、人間なので当然予測が外れることもあります。もしもいらない商品を無駄に多く作ってしまえば、国にとって大きな損失になるでしょう。
実際に、過去のソ連では雪が多いということで、大量に長靴を作った時代がありました。ところが、頭の固いおじさんたちが予測して作ったものなので、多くの女性はダサくて履きたがらなかったそうです。
このような消費者のニーズに合わない大量生産は、計画経済ではたくさんありました。その結果、ソ連経済は破たんし、社会主義崩壊の大きな原因となってしまったのです。
まとめると、
「市場経済」=経済は発展しやすいが、格差が出る。
「計画経済」=格差は出ないが、経済が発展しない。国の予測が外れたら大変。
となります。
一見すると、どちらも長所と短所があるので5分5分にも見えますが、計画経済をとった国々はわずか100年ほどで市場経済に戻ったという事実があります。
言い換えれば、「計画経済はうまく行かないシステムである事が歴史的に証明されてしまった」ということです。そのため、現在はほぼ全ての国が「市場経済」によってお金を回しています。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「市場経済」=自由にモノを売買できる社会。(自然)
「計画経済」=国がモノの売買を決める社会。(人為的)
「違い」⇒「市場経済」は、経済は発展しやすいが格差が出やすい。「計画経済」は格差は出ないが、経済が発展しない。
個人的な見解としては「計画経済」では人は幸せになれないと考えています。しかし、「市場経済」も完全なシステムではありません。「市場経済」のデメリットである「格差の拡大」は今もなお進んでいます。この問題を解決することが、今後の私たちにとって重要な課題と言えるでしょう。