二十億光年の孤独 解説 谷川俊太郎 詩 くしゃみの効果

『二十億光年の孤独』は、谷川俊太郎による有名な作品です。そのため、高校の教科書にも取り上げられています。

ただ、実際にこの詩を読むとその内容や意味が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『二十億光年の孤独』を詳しく解説しました。

『二十億光年の孤独』の全文

 

全文人類は小さな球の上で
眠り起きそして働き
ときどき火星に仲間を欲しがったりする
 
火星人は小さな球の上で
何をしてるか 僕は知らない
(或いは ネリリし キルルし ハララしているか)
しかしときどき地球に仲間を欲しがったりする
それはまったくたしかなことだ
 
万有引力とは
ひき合う孤独の力である
 
宇宙はひずんでいる
それ故みんなはもとめ合う
 
宇宙はどんどん膨らんでゆく
それ故みんなは不安である
 
二十億光年の孤独に
僕は思わずくしゃみをした

『二十億光年の孤独』の解説

 

谷川俊太郎の詩『二十億光年の孤独』は、人類と宇宙、そして孤独感について考えさせられる作品です。詩の中で、作者は宇宙の広がりとその孤独をテーマにしています。

まず、人間が「小さな球の上」で生活している様子が描かれています。この「小さな球」とは地球のことを指しています。

人間が地球という限られた空間で眠り、働き、時には火星に仲間を欲しがるという姿を説明しているのです。

ここでの「火星に仲間を欲しがる」という表現は、人類が未知の宇宙に対して希望や探求心を持ちながらも、孤独を感じる瞬間を表しています。

次に、火星人がどんな生活をしているのか分からないとしながらも、火星にも仲間を欲しがる存在がいるということが書かれています。

この部分は、孤独が地球に限らず、宇宙全体に共通する感情であることを示唆しています。

また、「万有引力とはひき合う孤独の力である」という一節は、物理学的な万有引力を、孤独という感情に結びつけて表現しています。

「万有引力」は、物体同士を引き寄せる力ですが、ここでは、その力が「孤独をひき寄せる力」として表現されています。宇宙の広がりと共に、私たちは孤独を感じ、その孤独が人と人とを引き寄せ、つながりを作る力となっているという深い意味が込められています。

さらに、「宇宙はどんどん膨らんでゆく」という表現は、宇宙の広がりとともに、人は不安や孤独を感じることを示しています。

それでも、その孤独を抱えたまま、私たちは生きていくしかありません。「二十億光年の孤独」という表現は、無限の時間と空間を感じさせ、孤独がどれほど深遠であるかを強調していると言えます。

解説の補足

「二十億光年の孤独」は、人間の孤独とつながりの本質を、宇宙の視点から詩的に表現した作品です。

日常の中でふと感じる孤独、そしてそれを埋めようとするつながりの欲求が、火星人や万有引力といったモチーフを通して描かれています。さらに、宇宙の膨張を不安に重ねることで、人間の心理を深く表現しています。

この詩が伝えたいのは、「私たちは孤独な存在だからこそ、他者を求める」という普遍的な真理です。宇宙の広がりの中で生きる私たちは、孤独でありながらも、つながりを求めることで生きているのです。

「くしゃみ」の意味や効果は?

 

この作品は、「僕は思わずくしゃみをした」という表現で締めくくられています。この「くしゃみ」には一体どのような意図が込められているのでしょうか?

これは様々な解釈があるため、一つの決まった答えがあるというわけではありません。しかし、いくつかの考察の余地はあるため、下記でその内容を説明します。

1. 現実に引き戻す効果

くしゃみは、考えたり意図したりして出るものではなく、不意に起こる生理現象です。宇宙の壮大さについて思索を巡らせていた「僕」ですが、くしゃみをすることで、突然現実の世界に引き戻されます。

この一瞬の動作が、「深い思索からふと日常に戻る瞬間」を象徴しており、どれほど壮大なことを考えても、人間は日常の中で生きていることを示していると言えます。

2. 宇宙の孤独を受け流す効果

「二十億光年の孤独」という表現は、広大な宇宙における人間の小ささを示しています。この圧倒的な孤独に対し、「僕」がとった行動は「くしゃみをする」という何気ないものです。

これは、孤独を深刻に受け止めるのではなく、どこか軽やかに受け流しているようにも見えます。つまり、「孤独にとらわれすぎなくてもいい」というメッセージが込められていると解釈することもできます。

3. 宇宙とのつながりを感じさせる効果

くしゃみは、外部からの刺激(ほこりや寒さなど)によって引き起こされます。この詩の中では、「二十億光年の孤独」という圧倒的な広がりが、「僕」の身体に何かしらの影響を与え、くしゃみを引き起こしたようにも読めます。

つまり、「僕」は宇宙の孤独を単なる概念として考えているのではなく、それを身体的に感じ取り、反応しているという解釈です。この視点から見ると、人間は決して宇宙と無関係な存在ではなく、その一部としてつながっていることが分かります。

このように、「くしゃみ」は単なる生理現象ではなく、現実に引き戻し、孤独を軽やかに受け流し、宇宙とのつながりを感じさせるという3つの重要な意味を持っていると考えられます。

まとめ

 

今回は、「二十億光年の孤独」について解説しました。この作品は、宇宙的な視点から人間の孤独とつながりを描いたものです。

最後の部分は様々な解釈がありますが、「二十億光年の孤独」の前でくしゃみをすることで、孤独を過剰に考えず、自然体で生きる大切さを伝えているとも理解できます。 ​

もう一度この作品を読み、作者がどのような意図をもってこの詩を書いたのかを考えているのもよいでしょう。