『無痛化する社会のゆくえ』は、教科書・現代の国語で学習する文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる部分も多いです。そこで今回は、『無痛化する社会のゆくえ』の要約や意味調べ、意見文などを解説しました。
『無痛化する社会のゆくえ』のあらすじ
本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①今あるつらさや苦しみから、我々がどこまでも逃げ続けていけるような仕組みが、社会の中に張りめぐらされていくこと。これを私は「無痛化」と呼んでいる。「無痛化」はそれだけでなく、将来起きるかもしれない苦しみやつらさを予測して、あらかじめ手を打つこと、という特徴も持つ。そういう方向に向かって、機関車のように邁進している我々の文明を「無痛文明」と呼んでいる。
②無痛化社会の問題点は、我々から「よろこび」が失われていくことにある。苦しみから次々に逃れていった後には、快楽と快適さと安楽さが残る。そして、欲しい刺激は手に入れられる、楽をしたいときには楽ができるという状態になる。すると、「気持ちがいいけれどもよろこびがない、刺激が多いけれども満たされない」という状態になる。これが、現代文明の根本問題だと私は考える。
③これは現代に特有の問題ではない。快楽はあるけれどもよろこびがない、物はあるけれども充足しないといったことは、人類が昔から直面してきた普遍的問題である。昔の社会では貴族や王族などこういう状況に陥る人は少数だったが、文明が進歩した結果、この状況が大衆化したと考えられる。無痛化する現代文明とは、昔は一握りの人しか抱えこむことのなかった富の逆説を、社会全体で抱え込まなければならなくなった文明のことである。
『無痛化する社会のゆくえ』の要約&本文解説
本文では「無痛化」という言葉を中心に、現代社会の方向性が論じられています。 「無痛化」とは、痛みや苦しみを避けるために技術を発展させ、それらを排除していくことを指します。
例えば、暑さを和らげるためのエアコン、通勤の負担を軽減するリモートワーク、ストレスを避けるための対人関係の工夫なども無痛化の一例です。こうして社会全体が痛みを避ける仕組みを張り巡らせてきたのが現代文明の特徴です。
しかし、痛みを排除することで快適さと安楽を手に入れた一方で、我々から「よろこび」が失われるという逆説が生じたことを筆者は指摘しています。
かつては努力の末に得られた成功が大きな喜びにつながりましたが、現代は効率化が進み、苦労せずに達成できることが増えた結果、満足感が薄れています。
この問題は、以前は一部の特権階級のみが経験していたものでしたが、文明の発展により、社会全体が「快適だが満たされない」という状況に直面するようになりました。
娯楽があふれているのに何をしても飽きてしまう、物質的に豊かになったのに幸福感が薄いといった現象は、まさに「無痛化社会」の特徴です。
筆者の主張は、「痛みを完全に排除することが本当に良いのか?」を考えるきっかけを与えてくれるものだと言えます。
『無痛化する社会のゆくえ』の意味調べノート
【邁進(まいしん)】⇒目標に向かって勢いよく進むこと。
【テクノロジー】⇒科学技術や工学的な技術のこと。
【サポート】⇒支援すること、助けること。
【直観的(ちょっかんてき)】⇒理屈ではなく感覚的に理解するさま。
【猛暑(もうしょ)】⇒非常に厳しい暑さ。
【開発(かいはつ)】⇒新しいものを作り出すこと。
【文明(ぶんめい)】⇒人類が進歩させた文化や社会のあり方。
【哲学(てつがく)】⇒人生や世界について深く考える学問。
【安楽(あんらく)】⇒心身ともに苦しみがなく、楽なこと。
【根本(こんぽん)】⇒物事の基本となる部分。
【即する(そくする)】⇒状況や条件にぴったり合うこと。
【充足(じゅうそく)】⇒必要なものが満たされること。
【搾取(さくしゅ)】⇒他人の労働や利益を不当に奪うこと。
【逆説(ぎゃくせつ)】⇒一見すると矛盾しているが、真理を含むこと。
『無痛化する社会のゆくえ』のテスト対策問題
次の文のカタカナを漢字に直しなさい。
①カイテキな部屋で読書を楽しむ。
②モウショの季節になってきた。
③カイゴの仕事は体力も必要だ。
④コンポン的な解決策を考える。
⑤ザイサンを有効に活用する。
⑥予想外の問題にチョクメンする。
次の中から本文の内容と合致するものを一つ選びなさい。
(ア)無痛化が進むほど、人々はより幸福になる。
(イ)無痛化社会では、欲しい刺激を得ても満たされにくい。
(ウ)昔の人々は無痛化の恩恵をまったく受けていなかった。
(エ)無痛文明は近年になって初めて生まれたものである。
まとめ
今回は、『無痛化する社会のゆくえ』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。