デジタルメディア時代の複製 要約 教科書 解説 意味調べノート

『デジタルメディア時代の複製』は、教科書・現代の国語で学習する文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『デジタルメディア時代の複製』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『デジタルメディア時代の複製』のあらすじ

 

本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①運動会の会場では、今と昔では格段に変化したことがある。今は、観覧場所に「カメラ撮影、ビデオ撮影専用スペース」が設けられていることが多い。昔は、保護者は子どもたちのその時の頑張りを自らの一部として共有していた。カメラでの撮影は、その時の高揚感を後から懐かしむためのものだった。だが、昨今はデジタルメディアの発達により、誰でも気軽に撮影できるようになった。今では保護者はカメラを回すのに夢中で、目の前の我が子の頑張りを、「何度も再生し、その都度同じように楽しむための」複製産物をつくりあげるという行為が日常化している。それは保護者たちにとって、オリジナル性のコピーである。

②絵画や彫刻では「原形芸術」と呼ばれるものがあり、これは、本物の生の姿は、本物が飾られている場所でしか見ることができないというものである。映画では、「複製芸術」と呼ばれるものがあり、これは、誰でも、どこでも「本物を」鑑賞することができるような芸術、ということである。数多くの複製産物そのものがオリジナルとしての価値を保有するような芸術形態を指して、「複製芸術」と呼ぶのである。

③運動会は、何ものにも代えがたい”原形芸術”のはずだった。ところが、ファインダーを通じてのみ子どもを眺める親たちにとって、運動会は”複製芸術”に過ぎず、ビデオカメラがあれば運動会に出かける必要はない。たとえビデオカメラの操作に集中しなくてはならないとしても、それは運動会の熱気と子どもたちの生の歓声に囲まれて初めて意味のある状況だと言える。いったい誰が、「観客は林立するビデオカメラだけ」といった近未来的で絶望的な状況を「好し」とするだろうか。

『デジタルメディア時代の複製』の要約&本文解説

 

100字要約運動会は本来「原形芸術」だったが、デジタルメディアの発展により、映像を通じて何度も楽しむ「複製芸術」へと変化した。保護者は撮影に没頭し、その場の熱気や歓声などの直接の体験を軽視する傾向が強まっている。(100文字)

筆者は、デジタルメディアの発展によって、運動会のような「その場で直接体験することに価値がある出来事」が、カメラを通じた「複製可能な映像」に置き換えられつつあることを問題視しています。

かつては、運動会の感動はその瞬間に共有されるものでした。しかし、現在では多くの保護者が撮影に夢中になり、その場の生の体験ではなく「映像として再生すること」に重点を置いています。

このことを、筆者は「原形芸術」と「複製芸術」の対比で説明しています。絵画や彫刻のように「その場でしか味わえないもの」を「原形芸術」、映画のように「どこでも同じ体験が可能なもの」を「複製芸術」と呼んでいます。

運動会は本来、「原形芸術」であり、その場でしか味わえない価値があるはずのものですが、ビデオ撮影の普及によって「複製芸術」のように扱われているという現状があります。

筆者はこの状況に警鐘を鳴らし、「カメラを通じた体験ではなく、その場で直接子どもの姿を目に焼き付けることの大切さ」を訴えています。現代の親たちは「再生可能な思い出」を作ることにこだわるあまり、「生の感動」を見落としているのではないかと問題を提起しているのです。

例えば、スポーツ観戦でも、実際にスタジアムで試合を観るのと、テレビで録画を観るのとでは熱気や臨場感が全く異なります。運動会も同様で、実際に子どもが頑張る姿をその場で見るからこそ価値があります。しかし、現代の親は「映像として記録すること」に執着しすぎて、本来の感動を失ってしまっていると筆者は考えているのです。

『デジタルメディア時代の複製』の意味調べノート

 

【大挙(たいきょ)】⇒大勢がまとまって行動すること。

【観覧(かんらん)】⇒見物すること。特に、公式な行事や展示物などを見ること。

【高揚感(こうようかん)】⇒気持ちが高まり、興奮する感覚。

【昨今(さっこん)】⇒最近。近ごろ。

【翻って(ひるがえって)】⇒これまでとは別の方面から。

【オリジナル】⇒独自のもの。原作や本来の形。

【コピー】⇒複製されたもの。また、複製すること。

【一回性(いっかいせい)】⇒一度しか起こらない性質。

【レプリカ】⇒本物を模した複製品。復元品。

【鑑賞(かんしょう)】⇒芸術作品などを見て、その価値を味わうこと。

【事態(じたい)】⇒物事の成り行きや状況。

【形態(けいたい)】⇒物事の姿やあり方。

【一挙手一投足(いっきょしゅいっとうそく)】⇒ちょっとした動作や行動。

【警鐘(けいしょう)】⇒危険を予告し、警戒を促すもの。警告。

【歓声(かんせい)】⇒喜びや興奮で発する大きな声。

『デジタルメディア時代の複製』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

カンラン者が美術館に集まった。

②彼の技術はカクダンに向上した。

モウマクに映る光が鮮明だった。

チョウコクはとても精巧だった。

⑤彼は多くの美術品をホユウしている。

解答①観覧 ②格段 ③網膜 ④彫刻 ⑤保有
問題2「保護者たちにとってのオリジナル性のコピー」とは、どういうことか?
解答保護者たちがデジタルメディアを使い、運動会で頑張る目の前のわが子の姿を、何度も再生して同じように楽しむために複製すること。
問題3「原型芸術」の「本物」と「複製芸術」の「本物」は、どのように違うか?
解答原型芸術の「本物」は、その作品が飾られている場所でしか生の姿を見ることができないものだが、複製芸術の「本物」は、数多くの複製産物そのものがオリジナルとしての価値を持つものである。
問題4「むろん、この議論は一つの警鐘に過ぎない。」とあるが、ここでの「警鐘」とはどのようなことに対するものか?
解答自身の目で生の感動を得ることが重要視されなくなっていること。

まとめ

 

今回は、『デジタルメディア時代の複製』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。