『人工知能の可能性と罠』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。
ただ、本文を読むとその内容や筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『人工知能の可能性と罠』のあらすじや要約、意味調べなどをわかりやすく解説しました。
『人工知能の可能性と罠』のあらすじ
①ビッグデータや人工知能(AI)をめぐる見解には、明と暗の両面がある。明暗いずれにしても、そこには人工知能がどんどん賢くなり、やがて人間以上の知力ばかりか、自我意識さえも持つようになるという議論が前提となっている。2045年には、人工知能の能力が人間を超えると予測する「シンギュラリティ(技術特異点)仮説」は、この議論を明確に強調したものである。
②現在の人工知能ブームは、「第三次ブーム」と言われている。1950年~1960年代に起こった最初の第一次ブームの人工知能は、正確な論理処理をする機械であった。次に、「知識」を論理命題で表し、推論規則で組み合わせるというアプローチをとったのが80年代の第二次ブームである。そして、2010年代半ばに始まった現在の第三次ブームでは、ビッグデータを統計処理して確率の高い答えを出す(それゆえ誤りの可能性もある)という考え方に至っている。
③第三次人工知能ブームを引き起こしたのは、「深層学習」という技術である。深層学習は、パターン認識技術としては画期的なものである。だが、深層学習によって人工知能が人間社会で通用する「概念」を把握できる、というのは過大評価である。深層学習のような学習機械は厳密には他律システムであり、予測を超えた事態には対処不能となる。これが人工知能の限界なのだ。
④深層学習を中核とする現在の人工知能の内実は、ビッグデータの統計処理である。人工知能が有効なのは、環境条件が安定している場合に限り、環境条件が激しく変化すると、むしろ負の効果を生むこともある。だから、最終的な判断は必ず人間が責任をもって下さなくてはならない。大切なのは人間と機械の協働であり、役割分担である。人工知能の活用には、人間の知恵が不可欠なのだ。
『人工知能の可能性と罠』の要約&本文解説
筆者は、人工知能(AI)の発展には、期待される可能性と避けられない限界の両面があると述べています。その上で、AIを適切に活用するためには、人間の知恵が欠かせないということを強調しています。
特に現在のAI技術の中核を成す「深層学習」は、ビッグデータを基にした統計処理を用いる画期的な技術ですが、この技術は予測外の事態や急激な環境変化に対応することができず、完全に自律した存在にはなり得ないという限界を抱えています。
筆者は、そのような限界を持つAIの能力を過大評価するのは危険であり、人間が主導権を持ち続けることが重要であると警鐘を鳴らしています。
また、機械と人間にはそれぞれ得意不得意があるため、その際に機械と人間の明確な役割分担をして協働することが大切だとも述べています。
最終的には、AIの活用において責任を持つべきなのは常に人間であり、その判断には人間の知恵が不可欠であるということを強く主張しています。
全体を通して筆者が最も主張したいことは、最後の「人工知能の活用には、人間の知恵が不可欠である」という一文に集約されていると言えます。
『人工知能の可能性と罠』の意味調べノート
【停滞(ていたい)】⇒物事が順調に進まないこと。
【促進(そくしん)】⇒物事の進行や発展を早めること、またはそれを助けること。
【懸念(けねん)】⇒気にかかって不安に思うこと。
【代替(だいたい)】⇒それに見合う他のもので代えること。
【シンギュラリティ】⇒人工知能(AI)が人間の知能を超えて、社会が予測できない大きな変化が起こる転換期のこと。
【推進(すいしん)】⇒物事を前へ進めること。
【不可分(ふかぶん)】⇒密接に結びついていて、分けたり切り離したりできないこと。
【時々刻々(じじこくこく)】⇒その時その時。
【途方もない(とほうもない)】⇒並々でない。
【手に余る(てにあまる)】⇒物事が自分の能力以上で、その処置ができない。手に負えない。
【端的にいうと(たんてきにいうと)】⇒簡潔に言うと。要点だけを言うと。
【併せる(あわせる)】⇒二つ以上のものを一つにする。
【挫折(ざせつ)】⇒計画や目標が思うように進まず、途中で失敗したり、あきらめたりすること。
【前途(ぜんと)】⇒行き先。将来。
【光明(こうみょう)】⇒あかるい見通し。希望。※「こうめい」とも読む。
【翻訳(ほんやく)】⇒ある言語で表された文章を他の言語に置き換えて表すこと。
【深層学習(しんそうがくしゅう)】⇒コンピュータ自らが、大量のデータを使って自分で学んでいく技術のこと。
【模する(もする)】⇒ある形に似せて作る。まねる。
【抽出(ちゅうしゅつ)】⇒多くの中からある特定のものを抜き出すこと。
【画期的(かっきてき)】⇒新しい時代を切り開くさま。今までにないほど斬新なさま。
【短絡(たんらく)】⇒物事の本質を考えず、またとるべき手順を踏まえずに、原因と結果を性急に結びつけてしまうこと。
【所与(しょよ)】⇒他から与えられること。また、そのもの。
【駆使(くし)】⇒自由自在に使いこなすこと。
【浅薄(せんぱく)】⇒考えや知識が浅く行き届いていないさま。あさはか。
【相違(そうい)】⇒違い。
【信奉(しんぽう)】⇒ある考え方や人物、宗教などを信じて支持すること。
【通説(つうせつ)】⇒多くの人が正しいと信じている、一般的に受け入れられている説や考え方。
【人為(じんい)】⇒人の力で何かを行うこと。人のしわざ。
【要するに(ようするに)】⇒つまり。
【臨床(りんしょう) 】⇒患者に接して診察・治療を行うこと。病床に臨んで診療すること。
【普及(ふきゅう)】⇒広く行き渡ること。
【臨機応変(りんきおうへん)】⇒状況に応じた行動をとること。その時その場に応じて、適切な手段をとること。
『人工知能の可能性と罠』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①経済成長がソクシンされる。
②病院でシンダンを受ける。
③大きなザセツを味わう。
④英語から日本語へホンヤクする。
⑤仮説をシンポウする。
⑥リンショウ現場で研修を受ける。
①人工知能は所与のパターン群を統計処理によって自動分類するが、人間は人間社会で通用する「概念」を歴史的に形成していく。
②人間を含む生物はあくまで自律的に作動しているが、人工知能は人間の指示通り、他律的に作動している。
まとめ
今回は、『人工知能の可能性と罠』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。