異時代人の目 100字要約 意味調べ テスト問題 漢字 解説

『異時代人の目』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、高校の定期テストにも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『異時代人の目』のあらすじや要約、意味調べなどを簡単にまとめました。

『異時代人の目』のあらすじ

 

本文は、内容から三つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①人間は、ある異質な時間を自覚したときに、量的な時間のゆるやかな流れの中で堆積した過去を、整理しようと思い立つ。過去は、「記録」や「文献」によって、真実の姿を残すわけではない。コトバのない画面こそが、多義的であるが故に、いっそう包み隠された内面の真実が埋葬されている場所なのだ。

②同時代人は、さまざまな先入主や偏見によって、真実にヴェールをかける。それを取り除くには、旧い価値の体系が崩壊しなければならない。ただ「時」が過ぎれば真理が見えるわけではない。必要なのは、異質の時間がやってくることである。

③われわれにできるのは、将来の人たちに余計なつけを残さないことだ。そして、歴史家としての使命は、真実に光を当てるのは人間の知性であることを、将来の人々に信じさせることである。歴史学は、最終的には希望を捨てない人間にだけやれる商売である。

『異時代人の目』の要約&本文解説

 

100字要約歴史において見えなかったものが見えるには、ただ時が過ぎるだけでなく異質の時間が必要である。歴史学の意義は、未来への布石をし、現代において真実が見えないことも、未来の人間が明らかにしていくことである。(99文字)

筆者は、歴史というのはただ単に時が過ぎれば真理が見えるわけではないのだと主張します。なぜなら、同時代に生きる人は、さまざまな先入観や偏見によって真実にヴェール(覆い)をかけるからです。

この目に見えないヴェールを取り除くには、何らかの価値の転換が発生する危機の時代において、異質の時間がやってくることが必要だと筆者は述べています。

例えば、16世紀の西欧では、当初はずっと否定されていた天動説に代わり、新しい地動説が台頭したことで、宗教改革が行われました。

また、20世紀の西欧の知性も、二度の世界大戦と植民地の独立などにより、かつてないほどの自己否定的な価値の転換が行われました。

このように、目に見えないものが見えるようになるには、それまでの時間の流れで堆積した過去が異質なものだと自覚する「異質の時間の訪れ」が必要だと筆者は考えているわけです。

その上で筆者は、歴史家というのは未来への布石をすることが使命であると結論付けています。

たとえ同時代人が偏見に満ちて真理を見誤ったとしても、未来の人間に知性の存在を信じさせることができれば、その誤りはいずれ正され、真実に光が当たることになります。

したがって、現代において真実が見えないことも、未来の人間が明らかにしていくことができるようにすることが、歴史学の意義であり、歴史家の使命であると筆者は考えているのです。

『異時代人の目』の意味調べノート

 

【概念(がいねん)】⇒物事の意味内容。ある物事に対する大まかな理解やイメージ。

【体系化(たいけいか)】⇒バラバラだったものを一つにまとめ、分かりやすく整理すること。

【観念(かんねん)】⇒頭の中で思い描く物事に対する考え。

【堆積(たいせき)】⇒積み重ねること。

【とうてい…ない】⇒とても…ない。当然だが…ない。

【より取り見取り(よりどりみどり)】⇒好き勝手に選び取ること。多くのものの中から自由に選び取ること。

【厳然(げんぜん)】⇒動かしがたい威厳のあるさま。

【未亡人(みぼうじん)】⇒夫が亡くなった女性。特に、結婚していた夫が死去した後、再婚していない女性のこと。

【回想録(かいそうろく)】⇒過去の出来事について、関係者が回想し、つづった記録。「回想」とは、過去のことをふりかえって思いおこすこと。

【多義的(たぎてき)】⇒一つの言葉が多くの意味をもっているさま。

【インペイ】⇒隠蔽。覆い隠すこと。

【抹殺(まっさつ)】⇒消し去ること。

【埋蔵(まいぞう)】⇒埋もれ隠れていること。

【崇拝(すうはい)】⇒心から尊敬し、対象を敬い尊ぶこと。

【漂着(ひょうちゃく)】⇒海などをただよい流れて、岸に着くこと。

【奸計(かんけい)】⇒悪いはかりごと。悪だくみ。

【寓意画(ぐういが)】⇒ある意見や教訓などを伝えることを目的とした画。

【先入主(せんにゅうしゅ)】⇒「先入観」に同じ。自由な思考を妨げる、あらかじめ抱いている固定観念。

【偏見(へんけん)】⇒かたよった見方・考え方。

【正当(せいとう)】⇒道理にかなっていて正しいこと。

【崩壊(ほうかい)】⇒くずれて壊れること。

【成果(せいか)】⇒あることをして得られたよい結果。

【布置(ふち)】⇒物を適当な所に置き並べること。配置。

【布石(ふせき)】⇒将来のために配置しておく備え。

【迷妄(めいもう)】⇒物事の真実や本質が分からず、誤った考えにとらわれること。

『異時代人の目』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①土砂がタイセキする。

キキの時代が訪れる。

③お宝がマイゾウされた場所。

④心から相手をスウハイする。

ヘンケンに満ちた考え方。

解答①堆積 ②危機 ③埋蔵 ④崇拝 ⑤偏見
問題2『この絶望感から救われるには、~』とあるが、ここでの「絶望感」とはどのようなことか?
解答自分の生きている時代の価値の体系が次々と変わり、何をよりどころとすればよいか分からなくなってしまうこと。
問題3『古代ローマ人は、「真理は時の娘」といった。』とあるが、「真理は時の娘」とはどういうことか?
解答物事の真理は、長い時間が経つ内に必然的に明らかにされるということ。
問題4『必要なことは、異質の時間がやってくること、である』とあるが、なぜそう言えるのか?
解答異質の時間は、旧い価値の体系を崩壊させることで、量的で均質な時間の流れの中に埋没している真実を見えるようにする働きを持っているため。

まとめ

 

今回は、『異時代人の目』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。