『変貌する聖女』 要約 意味調べ テスト問題 解説

『変貌する聖女』は、教科書・論理国語で学習する文章です。高校の定期テストにも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『変貌する聖女』のあらすじや要約、意味調べなどを簡単に解説しました。

『変貌する聖女』のあらすじ

 

本文は、行空きにより四つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介します。

あらすじ

①かつてのキュリー夫人の伝記は、「聖女のような」科学者にして妻であり母である伝統的なイメージに基づいて書かれていた。この伝統的なイメージは、ロバート・リードが書いた『キュリー夫人の素顔』によって崩れた。これ以降、キュリー夫人は「聖女」ではなく、19世紀末から20世紀前半を生きた一人の人間にして女性科学者、という視点から描かれるようになった。

②1970年は、「女性による女性の伝記の転換年」とも言われている。それは、1960年代にはじまった第二波フェミニズム運動と深いかかわりがある。1968年のフランスの「五月革命」では、表に立つのは主に男子学生で、女子は後ろで彼らを支えるだけだった。この頃は、日本でも男女学生の専門分野に大きな違いがあった。

③自分たちの置かれた不平等な立場を自覚し始めた女性たちは、このままでは問題が解決しないことに気付いた。女性たちは、「ジェンダー」が不動のものではないことに気付き始め、言葉の問い直しも始まった。ランジュヴァン事件について触れたキュリー夫人の新しい伝記も、このような運動を踏まえてできた作品である。しかし、これを読んだすべての人が、作者の人権擁護の姿勢を理解したわけではなかった。

④映画であれ小説であれ、私たちは自分に「感動」をもたらした社会的要因について、内省する必要がある。同じDNAを持ったとしても、現在と同じ好みである保証はない。「個人的なことは」あくまで「政治的」なのだ。

『変貌する聖女』の要約&本文解説

 

200字要約かつてのキュリー夫人伝は、伝統的なイメージに基づいて書かれていたが、そのイメージは別の視点から描き出されたことで崩れた。そして、一九六〇年代にはじまった第二波フェミニズム運動により、女性たちは「ジェンダー」が不動ではないことに気づいた。家族やセクシュアリティの問題などは、広く社会や政治とつながっており、個人の苦しみは決して個人だけの問題ではない。「個人的なことは」あくまでも「政治的」なのだ。(197文字)

筆者の主張を一言で述べるなら、「個人的なことは政治的なことである」ということになります。

これはつまり、個人的な問題は、個人で解決できるようなものではなく政治で解決するしかないということです。

家族やセクシャアリティといった個人的な諸問題は、その時代の社会や文化の影響を強く受けており、時代や場所によって変化する問題なので、政治と深くつながっています。

そのため、筆者は、個人的な問題は政治的な問題と切っても切り離せない関係だと捉えているのです。

まず全体の構成としては、次のようになっています。

  • 「第一段落」⇒「キュリー夫人の伝記の変化」について。
  • 「第二段落」⇒「フェミニズム運動の第一波と現実」について。
  • 「第三段落」⇒「第二波フェミニズム運動とキュリー夫人の新しい伝記」について。
  • 「第四段落」⇒「個人的なことは政治的である」という筆者の結論部分。

冒頭では、キュリー夫人の伝記の話が紹介されています。

元々は伝統的なイメージだった彼女が、第二波フェミニズム運動の流れの中で、様々な伝記が出版されたことで、一人の人間で女性科学者である、という別の観点から描かれたことが説明されています。

この流れを受け、当時の女性たちは、「女らしさ」や「男らしさ」といった概念は不動なものではないことに気付き始めます。

そして、この問題を解決するには、フェミニズム運動が深く立ち入ることがなかった「個人的なこと」が、広く社会や政治とつながっていて、個人の苦しみは個人だけの問題ではないことをさらけだすことが必要でした。

このような話を紹介した上で、最終的に筆者は、「個人的なことは」あくまで「政治的」なのです。という自らの主張を述べています。

要約する際は、最後のこの結論部分を入れるのは必須だと言えます。

『変貌する聖女』の意味調べノート

 

【変貌(へんぼう)】⇒姿や様子が変わること。

【聖女(せいじょ)】⇒神聖な女性。特に宗教に身を捧げた女性を指す。

【おびただしい】⇒非常に多い。

【焼き直し(やきなおし)】⇒すでにある作品に手を加えて、新しい作品に作り変えること。

【過言(かごん)】⇒言い過ぎ。

【伝記(でんき)】⇒ある人物の生涯にわたる行動や業績を叙述した文章や本。

【あいまって】⇒相互の力が一緒になって。

【せきたてる】⇒催促して急がせる。

【ベストセラー】⇒ある期間内に最もよく売れた商品。特に本を指して言うことが多い。

【踏む(ふむ)】⇒見当をつける。

【崇高(すうこう)】⇒けだかく尊いさま。

【抹消(まっしょう)】⇒消してなくすこと。

【もとより】⇒言うまでもなく。もちろん。

【渡りに船(わたりにふね)】⇒自分にとって都合の良いことが、ちょうどいいタイミングで起こること

【必然的(ひつぜんてき)】⇒必ずそうなるさま。

【素顔(すがお)】⇒そのままの顔。飾らないありのままの姿。

【実態(じったい)】⇒実際の状態。

【側面(そくめん)】⇒別の面。

【フェミニズム】⇒男女間の社会的、政治的、経済的な平等を追求し、女性に対する差別や抑圧をなくすことを目的とした思想・運動。

【結束(けっそく)】⇒志を同じくする者が団結すること。

【民主化(みんしゅか)】⇒考え方・制度などが民主的なものに変わっていくこと。

【銃後(じゅうご)】⇒戦場の後方。直接戦闘には参加しないが、間接的に何かの形で戦争に参加している一般国民のこと。

【対照的(たいしょうてき)】⇒違いがはっきりしているさま。

【圧倒的(あっとうてき)】⇒他より非常に勝っているさま。

【政治的うねり】⇒「政治が変動しているさま」を比喩的に表している。

【白日の下に晒す(はくじつのもとにさらす)】⇒隠されていた物事を世間に公開する。

【概念(がいねん)】⇒物事の意味内容。ある物事に対する大まかな理解やイメージ。

【宿命(しゅくめい)】⇒生まれる前からその人に定まっている運命。

【据わりの悪い(すわりのわるい)】⇒落ち着き具合が悪い。

【不可侵(ふかしん)】⇒侵害を許さないこと。

【揶揄(やゆ)】⇒からかうこと。

【人権擁護(じんけんようご)】⇒人間としての基本的な権利を守ること。

【盛り込まれていた】⇒中に記述されていた。

【内省(ないせい)】⇒自分の考えや行動などを深くかえりみること。反省。

【貧農(ひんのう)】⇒貧しい農民。

『変貌する聖女』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

スウコウな精神をもつ。

②登録がマッショウされる。

③仲間のケッソクが固い。

④人権をヨウゴする。

⑤過去をナイセイする。

解答①崇高 ②抹消 ③結束 ④擁護 ⑤内省
問題2『すでに有名であった女性たちが、新しい角度から語られ始めただけでなく、~』とあるが、ここでの「新しい角度」とはどういうことか?
解答例女性たちを崇高なイメージで語るのではなく、生きた一人の人間という観点から見つめるようになったこと。
問題3「こうした流れ」とは、どういう流れか?
解答例ジェンダーによって作られた家族やセクシュアリティ、言葉を問い直そうという流れ。

まとめ

 

今回は『変貌する聖女』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。