『本当は怖い「前提」の話』は、教科書・論理国語で学習する文章です。そのため、高校の定期テストにも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる部分も多いです。そこで今回は、『本当は怖い「前提」の話』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。
『本当は怖い「前提」の話』のあらすじ
本文は、その内容から大きく二つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介します。
①言語学の知識の大部分は人畜無害だが、これは「危ないかも」と思っているものが一つある。文の意味は、「その文によって主張されている内容」である「含意」と、「その文を適切に発するために、事前に成り立っていなくてはならない内容」である「前提」に分けられる。前提を伴う表現や構文は数多く存在する。
②前提の使われ方には、危険なものがある。その一つが、誘導尋問だ。前提を使った誘導尋問は、否定しても分からないと答えても前提を認めてしまうことになるため、相手のペースに嵌まって不利な証言をさせられる恐れがある。前提の利用は、他にも日常の何気ない会話や仕事のメール、本のタイトルにもある。「前提」には、私たちの無意識の心のスキマに入り込むような怖さがある。皆さんには、今回紹介した知識を使って身を守っていただきたい。
『本当は怖い「前提」の話』の要約&本文解説
筆者は、「前提」というのは使い方によっては危ないものになるのだと主張します。本文中には、その事を説明するために、警察官による誘導尋問が紹介されています。
例えば、警察官が「あなたが現場近くを車で通ったのは、〇月×日の何時ごろでしたか?」などのように質問すると、「いいえ」や「分からない」「覚えていない」と答えたとしても、「あなたが現場近くを車で通った」という前提は、事実として認めたことになってしまいます。
警察官も、「あなたは現場近くを車で通りましたか?」と普通に聞いても、「いいえ」と否定されるだけだと分かっています。
相手に認めさせたい内容を前提を担う部分に詰め込むことで、上手く相手を誘導しているのです。
他にも、相手を二回目のデートに誘う場合、「また会ってくれる?」よりも「今度いつ会う?」と言った方が相手は断りづらくなります。これも相手を上手くコントロールするために前提が使われている例です。
筆者はこのように、「前提」には私たちの心のスキマに入り込むような怖さがあるのだと指摘しています。そのため、今回紹介した知識を使って身を守ること、そして悪用する側には決して回らないことを、読者に対して注意喚起しています。
『本当は怖い「前提」の話』の意味調べノート
【言語学(げんごがく)】⇒人類の言語の構造や系統、相互関係などを研究する学問。言語そのものを解明することを目的とする。
【自然科学(しぜんかがく)】⇒自然の不思議を追究する学問。
【物騒(ぶっそう)】⇒何か危険なことや不安を感じさせるさま。
【介する(かいする)】⇒何かを媒介として物事を行う。間に立って仲立ちをすること。
【人畜無害(じんちくむがい)】⇒人や動物に対して害がないこと。
【しっぽを掴む(しっぽをつかむ)】⇒他人のごまかしや悪事の証拠などを押さえる。
【手詰まりになる(てづまりになる)】⇒するべき手段や方法がなく困ること。
【意味論(いみろん)】⇒言語学の内、、言語のもつ意味の構造、歴史的な変化などを研究する部門。意義学とも言う。
【直感的(ちょっかんてき)】⇒物事を理論や分析などに頼らずに、瞬間的な感覚や本能で捉えるさま。
【論理的(ろんりてき)】⇒物事を筋道を立てて考えたり、説明したりするさま。
【断定(だんてい)】⇒物事にはっきりした判断をくだすこと。
【誘導尋問(ゆうどうじんもん)】⇒相手が特定の答えを言いやすいように誘導しながら行う尋問。「尋問」は「問いただすこと。口頭で質問すること」という意味。
【自他ともに認める(じたともにみとめる)】⇒自分の特定の性質について、本人も周囲の人々もその通りだと同意している。
【高をくくる(たかをくくる)】⇒大したことはないと見くびる。
【曖昧(あいまい)】⇒ 態度がはっきりしないこと。あやふやなこと。
【御社(おんしゃ)】⇒相手の会社や企業を敬って呼ぶ際の言葉。主に話し言葉として使われ、書き言葉の際は「貴社」が使われる。
【周知(しゅうち)】⇒世間に広く知られていること。
【悪用(あくよう)】⇒本来の用途とは違って、悪い目的で使うこと。
『本当は怖い「前提」の話』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①ジンチク無害の成分。
②事情をチョウシュする。
③ヨウギ者が現場を通る。
④ヤッカイな事が起こる。
⑤それはシュウチの事実だ。
まとめ
今回は、『本当は怖い「前提」の話』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。