『働かないアリに意義がある』は、長谷川英祐による文章です。教科書・論理国語にも収録されています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、本作のあらすじや要約、テスト問題などを解説しました。
『働かないアリに意義がある』のあらすじ
①ミツバチやアリのように、何年もコロニーが続く種類では、女王がワーカーに比べて長生きで、働いてばかりいるワーカーは早く死んでしまう。また、ハウス栽培で受粉させるために使われたミツバチは、過剰労働で寿命を縮め、コロニーが壊滅する。動物は、動くと疲れて、仕事の能率が落ちるのだ。
②個体の疲労とコロニー維持の関係に注目した実験をした。その結果、全員が働くシステムの方が労働効率はよいが、仕事が一定期間以上処理されないとコロニーが死滅するという条件を加えると、働かないものがいるほうが、コロニーが長く存続することが分かった。つまり、働かない働きアリは、コロニーの存続にとってきわめて重要な存在なのだ。
③ムシの社会がうまくいくためには、メンバーにさまざまな個性がなければならない。それは能力の高さではなく、さまざまな状況に対応可能な「余力」である。働かないアリであっても、働く意欲は持っており、状況が整えば立派に働くことができる。規格外のメンバーを多く抱え込む効率の低いシステムを採用していることが、ムシたちの用意した進化の答えである。
④人の社会では、企業は効率のよさを追究している。だが、余裕を失った組織がどのような結末に至るかは自明だ。大学の研究も例外ではない。基礎的研究を行い、技術に応用できる新しい知識を見つけるシードバンクとしての機能は、大学の社会的役割の一つである。今は何の役に立つかわからない研究も、人間社会全体のリスクヘッジの観点から見て意味のあることなのである。
『働かないアリに意義がある』の要約&本文解説
本文は、その内容から四つの段落に分けることができます。
まず第一段落では、ハチやアリにも「過労死」と呼べる現象があり、過剰労働の環境だと、そのコロニーが壊滅してしまうという話題が提示されています。
次の第二段落では、第一段落で提示した話題を受け、ムシの個体の疲労とコロニー維持の関係についての実験結果が説明されています。
この実験では、働かないアリがいるからこそ、逆にコロニーが存続できるということが証明され、働かないものに存在意義を見出したという結論が導き出されています。
第三段落では、第二段落までで導き出した結論を、ムシたちが用意した社会の答えであるとしてまとめられています。
最後の第四段落では、ムシの社会について述べたシステムをヒトの社会に照らし合せて考察した上で、最終的な筆者の考えが述べられています。
筆者は、効率重視の社会では余裕がなくなり、社会が回らなくなると結論付けています。例えば、一見すると社会にとって役に立たなそうな無駄な研究であったとしても、実は後から応用できるような役に立つ知識であったりすることはあります。
このように、今は何に役に立つのかわからないことを調べておくのは、人間社会全体の危機を回避するという観点からみると、意味のあることだと筆者は考えているのです。
『働かないアリに意義がある』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①野菜をサイバイする。
②大地震で街がカイメツした。
③カジョウ労働は寿命を縮める。
④子孫がハンエイする。
⑤利益をツイキュウする。
⑤チメイ的な怪我を負う。
まとめ
今回は、『働かないアリに意義がある』について解説しました。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。