自他の「間あい」 要約 あらすじ 意味調べ テスト問題 解説

『自他の間あい』は、鷲田清一による評論文です。教科書・論理国語にも掲載されています。

ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『自他の間あい』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。

自他の「間あい」のあらすじ

 

あらすじ

①「間」というのは、自分をそこに預けることにより、自分の存在を見つめ直す自己調整の場である。他者とのコミュニケーションで最も重要なのは、自分とは異なる他者の存在を感受することであり、他者との差異に深く思いを致すことで、自分という存在の輪郭を知ることである。

②なぜ「間」というものが、自他の間には必要なのか?それは、「間」の持つ隙間や柔性が人の存在にしなやかな強さを与えるからだ。「間」は、小さすぎても大きすぎても問題になってしまう。適度な「間合い」があることで、人は他人との関係の少々の齟齬やずれが、決定的なダメージにならなくてすんでいるのである。

③自分の存在を確かなものとして感じ得るには、他者の存在を欠くことはできない。アイデンティティには、必ず他者が必要だ。自分の存在が何も意味を持っていないと感じる時に、人はひどく落ち込む。わたしが他人にとって、なんらかの関心の宛て先になっているという実感が、人の存在証明になるのだ。

自他の「間あい」の要約&本文解説

 

200字要約自他の間には、ある程度の伸縮が可能な、緩衝帯のような「間」が必要である。適切な「間あい」があることで、人は他人との関係において少々の齟齬やずれが生じたとしても、決定的なダメージを負わずにすんでいる。自分の存在を確かなものとして感じ得るには、自分自身のかけがえのなさを、自らにおいて感じることのできる他者の存在が必要だ。他人のなんらかの関心の宛て先になっているということが、人の存在証明となる。(196文字)

本文は、内容により三つの段落に分けることができます。まず、第一段落では「間」というものの役割を示し、読者に話題の提供をしています。

筆者は、「間」とは「自己調整の場」なのだと述べています。人は他者との関係において、他者との差異に深く思いを致すことで、自分という存在の輪郭を知ることができます。

例えば、ある人が他人と話したことで「あなたは話が上手な人だ」と言われたとしたら、自分は他の人と比べて話が上手いのだと初めて知ることができます。

このように、人は他者を通した自己の経験をすることにより、自分のことを深く知ることができるという特徴を持っているのです。

次の第二段落では、第一段落の内容を受けて、「間」の必要性が考察されています。

筆者は、自他の間に「間」が必要なのは、「間」の持つ隙間や柔性が人の存在にしなやかな強さを与えるからだと述べています。

例えば、卵を運ぶ際には、鉋くず(ふわふわした木のクズ)で包み込むことにより、表面に傷やひびが入らずに安全に運ぶことができます。

また、建造物を建てる際にも、揺らぎを許容する隙間があることで、少々のことでは折れない頑丈な建物を建てることができます。

人間同士の関係も同様に、「間合い」があるおかげで、人は他人との関係の少々のずれが決定的なダメージにならなくて済んでいると考えているわけです。

最後の第三段落では、これまでの内容をふまえた上で、アイデンティティにおける他者の必要性が説かれています。

アイデンティティには、必ず他者が必要とされます。例えば、教師は生徒がいることで、医師は患者がいることで、初めて自分の存在価値を証明することができます。

このように、わたしが「誰か」を知るには、必ず自分以外の他者の存在が必要だと筆者は結論付けているわけです。

自他の「間あい」の意味調べノート

 

【動機づける(どうきづける)】⇒意思や行動を決定する直接のきっかけを持たせる。

【各人(かくじん)】⇒それぞれの人。

【ありありと】⇒はっきりと。あきらかに。

【感受(かんじゅ)】⇒外界の刺激を受け入れること。

【差異(さい)】⇒違い。

【思いを致す(おもいをいたす)】⇒考えを及ばせる。心を向ける。

【輪郭(りんかく)】⇒物の外形を形づくっている線。物事の大体のありさま。

【息せき切る(いきせききる)】⇒激しい息づかいをする。非常に急いで行動する。

【集積(しゅうせき)】⇒集まって積み重なったもの。

【侵犯(しんぱん)】⇒他の領土や権利をおかすこと。

【弾力性(だんりょくせい)】⇒外力によって変形した物体が、元に戻ろうとする性質。

【欠如(けつじょ)】⇒必要な物事が欠けていること。

【間が持てない】⇒時間をもてあます。

【間が取れない】⇒適切な間隔を取れない。

【緩衝帯(かんしょうたい)】⇒対立するものの間にあり、衝突や不和を和らげる部分。

【契機(けいき)】⇒きっかけ。動機。

【緊密(きんみつ)】⇒物と物とがすきまなくくっつくこと。物事の関係が密接なこと。

【たわんだ】⇒しなった。弾力のあるものが曲がった。

【許容(きょよう)】⇒許すこと。そこまではよいとして認めること。

【アナロジー】⇒二つの異なるものに、似た部分を見つける考え方。

【微細(びさい)】⇒きわめて細かく小さいこと。

【反作用(はんさよう)】⇒物体に働くある作用に対して、同じ大きさで反対方向に働く作用。

【隔て(へだて)】⇒仕切り。間を仕切ったもの。

【撤退(てったい)】⇒その場から退くこと。

【同一性(どういつせい)】⇒時や場所を越えても同じである性質。

【隔離(かくり)】⇒距離を置いて離すこと。

【堂々巡り(どうどうめぐり) 】⇒ 同じようなことが何度も繰り返され、進行しないこと。

【齟齬(そご)】⇒物事がうまくかみ合わないこと。食い違うこと。

【不可避(ふかひ)】⇒避けようがないこと。

【相互補完(そうごほかん)】⇒お互いに足りないところや弱いところを補って、助け合うこと。

【端的に(たんてきに)】⇒はっきりと。明白に。

【思いにとらわれる】⇒ある考えにつかまり、自由な発想を妨げられる。

【排除(はいじょ)】⇒おしのけてそこからなくすこと。

【無視し得ない(むししえない)】⇒無視することができない。

自他の「間あい」のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①光をカンジュする。

スキマを埋める。

③領土をシンパンする。

シンシュクする物体。

⑤揺らぎをキョヨウする。

⑥市場からテッタイする。

ハイジョの対象となる。

解答①感受 ②隙間 ③侵犯 ④伸縮 ⑤許容 ⑥撤退 ⑦排除
問題2筆者は『「間」は自己調整の場である』と述べているが、これはどういうことか?
解答例「間」は、他者との関係性において、自分がどのような存在なのかを見直すことができ、今までの自己認識から自己を解放させることのできる場であるということ。
問題3「間」が自他の間に必要となるのはなぜか?本文中の語句を使い答えなさい。
解答例「間合い」があるおかげで、他人との関係の少々の齟齬やずれが、決定的なダメージにならなくてすんでいるから。
問題4「建造物」と「自他」の共通点はどういった点か?
解答例両者とも、緩衝帯がないと些細なことでもひびやひずみが入るが、揺らぎを許容する隙間があれば、少々のことでは折れないしなやかな強さが備わる点。
問題5「誰もわたしに話しかけてくれない」とは、どういうことか?
解答例自分が他者の誰一人にとっても何の関心の対象にもなっていないということ。

まとめ

 

今回は、『自他の間あい』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。