『動的平衡としての生物多様性』は、福岡伸一氏による評論文です。教科書・現代の国語にも載せられています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、あらすじや要約、テスト対策などを含め解説しました。
『動的平衡としての生物多様性』のあらすじ
本文は、内容により4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①私は生物学者として「生命とは何か」という問題を考えながら研究を進めてきた。その結果、生命とは「動的平衡である」と考えるようになった。生命は絶え間なく動きながらバランスをとっており、動的平衡であるからこそ環境に対して適応的で、変化に対して柔軟でいられる。さらに、動的平衡は生命の外部、生命と生命の関係性にもおよび、地球環境全体もまた動的平衡なのである。
②地球上の生命は、自分の持ち場(ニッチ)の中で物質・エネルギー・情報のパスを繰り返しており、すべての生物は動的平衡を支えているプレーヤーといえる。プレーヤーである生物が急に消滅することは、動的平衡を脆弱にし、乱すことを意味する。
③ここ一〇〇年ほどのあいだに起きている生物種の絶滅の多くは、人間の諸活動の結果として生じたものと考えられる。人間は、生物多様性を保全するために、他の生命をふくめた自分たちのすみかのあり方を考える責任を負わなければならない。
④十七世紀のデカルトからはじまった、人間の理性の優位性を信奉し、人間以外の生物をみな機械的なものとみなす思考は、現代では行き詰まりを見せている。大切なのは、世界に動的な平衡を回復しなくてはならないということだ。人間は、専有(エゴ)に走りすぎた思考から、共有(エコ)へとパラダイムをシフトする必要がある。
『動的平衡としての生物多様性』の要約&本文解説
本文を理解する上で、まず「動的平衡」という言葉が一つのキーワードとなります。
「動的平衡」は、本文中だと「生命が絶え間なく動きながらバランスをとること」だと説明されています。言い換えれば、「生命が変化しながら、バランスをとること」という意味です。
例えば、私たち人間は、食べ物を体の中に取り込み、消化酵素によって細胞が吸収できる大きさまで「分解」し、生命活動に必要なエネルギーや物質を「合成」します。
そして、生命活動の結果生じた不要物や有害物質などを、尿や便などの形にして適切なタイミングで体の外へと「排出」します。
このように、生命を構成する要素が、内部で行われる分解・合成・摂取・排出によって更新され、環境の変化に柔軟に適応することを「動的平衡」と呼ぶわけです。
そして筆者は、「生命」とは動的平衡そのものなのだと述べています。生命は動的平衡を持つからこそ、環境に対して適応的で、変化に対しても柔軟でいることができるのです。
ところが、現在の人間の諸活動は多くの生物種の絶滅を招き、地球の動的平衡に大きな負荷をかけています。そのため、筆者は、世界に動的平衡を回復させるためにも、専有(エゴ)から共有(エコ)へとパラダイムシフトしなければならないと結論付けています。
これはつまり、私たちは今までの生命や環境に対する考え方を改めて、自分たちの思考の枠組みを変える必要があるということです。
『動的平衡としての生物多様性』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①栄養のセッシュ。
②情報をコウシンする。
③ジュウナンな思考の持ち主。
④血液がジュンカンする。
⑤ゼイジャクな神経。
⑥機械をセイギョする。
⑦新しい思想をシンポウする。
まとめ
今回は『動的平衡としての生物多様性』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。