『わらしべ長者の経済学』は、梶井厚志による評論文です。教科書・現代の国語にも採用されています。
ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる人も多いです。そこで今回は、『わらしべ長者の経済学』のあらすじや要約、語句の意味などを解説しました。
『わらしべ長者の経済学』のあらすじ
本文は、大きく3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①「わらしべ長者」という物語では、男が特に努力もせずに最終的には富を得たという幸運に対して注目が集まる。だが、経済学者の私としては、この話が労せず大儲けしたという意味に解釈されるのは大変残念だ。なぜなら、「わらしべ長者」には、交換による経済学的価値の創造という、経済の基本原則が美しく表現されているからだ。わらしべを持った男が大儲けできたのは、登場する人々の間では直接に取引できる場が完備しておらず、また取引を媒介できる人物が彼しかいなかったからである。
②男が取引を媒介できたのは、第一に「おもちゃの生産」という人を喜ばせる創造的なアイディアの発明、第二に「死にそうな馬を引き取る」というリスクの大きい事業への投資、第三に「ミカンを商人の元へ運ぶ」という欲している人へ物を動かす行為、という三つの正当な経済活動を行ったからだ。実際、我々はだれしも毎日、わらしべ長者的な生活を営んでいるのだ。
③「わらしべ長者」は日本独特の話ではなく、世界各国に似たような昔話がある。そこに、私は経済学的な考え方の普遍性を感じる。ブータンで語られる話では、男は市場価値が高いものから低いものへ交換したにも関わらず、自発的な交換により、前よりも幸せな状態になった。経済学の理屈では、この男も利益を得たはずだし、こういう人物こそ、人生で本当に大きな利益を得られるのだろう。
『わらしべ長者の経済学』の要約&本文解説
昔話「わらしべ長者」では、特に努力をせずにただ道を歩いていただけで、つまらないわらしべが最後に高価な屋敷に化けたという話が書かれています。そのため、どうしてもわらしべを持った男の幸運に注目が集まりがちです。
しかし、経済学者でもある筆者は、「わらしべ長者」=「楽に大儲けした話」のような意味に解釈されるのは、大変残念な事であると述べています。
筆者は、「わらしべ長者」には、交換による経済学的価値の創造という経済の基本原則が表現されているのだと主張します。
主人公である男は、単にモノを交換しただけではなく、無視できない重要な経済活動を行いました。
例えば、男はわらしべにアブを結びつけたことで、「人を喜ばせるアイディアの創造」を行いました。また、死ぬかもしれない馬を引き取るという、「リスクの大きい事業への投資」を行いました。
さらに、まるで畑で採れたミカンを街中までトラックで運び、道行く人へ売るかのように、「欲している人の元に物を動かす」という立派な経済活動を行いました。
このように、「わらしべ長者」に出てくる男は、他人を喜ばすという正当な経済活動を営んだからこそ、富貴を得ることができたと筆者は考えているわけです。
したがって、筆者は、このような地道な勤労に基づくわらしべ長者的な生活は、美徳の結果として称賛されるべきだと主張しています。
最終的に、筆者は「わらしべ長者」は日本独特の話ではなく世界各国に似た昔話があるのだと述べています。そして、その話には経済学的な考え方の普遍性を感じるのだとも述べています。
『わらしべ長者の経済学』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①合格をキガンする。
②病人をカイホウする。
③ヤシキを手放す。
④ユウフクな家庭で育つ。
⑤キンロウを美徳とする。
⑥悪くカイシャクする。
⑦ミリョク的な女性。
⑧利益をキョウジュする。
⑨ショウテンを当てる。
⑩トッシュツした業績をあげる。
まとめ
以上、今回は『「わらしべ長者」の経済学』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。