誰かの靴を履いてみること 解説 国語 教科書 意味調べノート テスト

『誰かの靴を履いてみること』は、教科書・現代の国語に収録されている文章です。ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。

そこで今回は、『誰かの靴を履いてみること』のあらすじや要約、語句の意味などを簡単に解説しました。

『誰かの靴を履いてみること』のあらすじ

 

本文は、大きく4つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介します。

あらすじ

①2018年の英国の街、ブライトンでは大雪で様々なものがストップしていた。その中で、わたしの携帯に友人から電話がかかってきた。友人が勤めているホームレス支援団体が、施設を開放して路上生活者の人々を受けいれていたのだ。わたしは息子とともに、ボランティアとして路上生活者への支援を手伝いに向かった。路上生活者たちの前を横切る際、息子の表情は少しこわばっていた。

②友人は、路上生活者が多いのは緊縮財政により自治体の支援ができなくなり、その分を民間が支援するしかないからだと説明した。そして友人は息子に、民間の善意による支援ばかりに頼るのではなく、国からの支援の必要性を説いた。

③友人の娘が息子を誘い、緊急シェルター間の物資の移動に向かった。英国では災害時の民衆の対応は迅速だ。グレンフェル・タワーという高層住宅が火災になった際も、国が動くよりも民間が先に支援活動を行っていた。こうした支援活動は、個人の善意のみに頼っているわけではなく、学校教育の中で相互扶助の精神を学び、確かなシステムとして根付いているのだ。

④しばらくすると、息子たちが戻ってきた。息子は、路上生活者からキャンディーをもらっていた。善意は確かにあるんだと喜ぶ息子を見て、わたしはふとエンパシーという言葉を思い出した。シンパシーよりもエンパシーの方が善意と繋がっているような気がしたのだ。他人の靴を履いてみる努力を人間にさせるもの、そのひとふんばりをさせる原動力こそが、善意かそれに近い何かではないかと息子は言った。

『誰かの靴を履いてみること』の要約&本文解説

 

200字要約2018年の英国では、大雪の際にホームレス支援団体や近隣の住民達による路上生活者への支援が行われていた。わたしと息子は支援活動に参加し、息子は善意の支援活動の重要性と限界を学んだ。息子が路上生活者からキャンディーを貰って喜ぶ姿を見て、善意はエンパシーと繋がっている気がした。他人の靴を履いてみる努力を人間にさせるもの。そのひとふんばりをさせる原動力が、善意かそれに近い何かではないかと息子は言った。(199文字)

本文を理解する上で、「シンパシー」と「エンパシー」の違いを理解することが重要となります。「シンパシー」とは、かわいそうな立場の人や問題を抱えた人、自分と似たような意見を持っている人々に対して抱く感情のことです。相手に共感するという心の動きに基づくのが特徴です。

一方で、「エンパシー」とは、自分とは違う理念や信念を持つ人や、別にかわいそうだと思えない立場の人々が何を考えているのだろうと想像する力のことです。

つまり、相手のことをかわいそうと思わない場合でも、相手の立場に立って、想像する力なのが「エンパシー」ということです。同じ意見ではない相手に対しても理解を示す点が、エンパシーの特徴となります。

わたしの息子は、当初は路上生活者の人々と接するのに気後れしたり、匂いに耐えられなくなったりして、緊張していました。ところが、最終的には少し怖いと思っていたホームレスの人からキャンディーを貰い、ホームレスに対する認識が変わりました。

そして、わたしはうれしそうに笑っている息子を見て、善意はエンパシーと繋がっているように感じます。また、息子も他人の靴を履いてみる努力を人間にさせるものこそが、善意に近い何かなのでは考えるようになります。

ここでの「善意」とは、息子が路上生活者の人からキャンディーを貰ったことであり、まさに立場の違う人を理解して思いやる行動です。こういった、自分とは違う考えや立場の人を理解して思いやる力こそが、善意に近い何かだと私と息子は考えるようになったということです。

『誰かの靴を履いてみること』の意味調べノート

 

【誰のものとも知らない】⇒誰のものと特定できない。

【集う(つどう)】⇒集まる。

【託児所(たくじしょ)】⇒保護者に代わって乳幼児を預かり、保育する施設。

【開放(かいほう)】⇒門などを開けたままにして、自由に出入りさせること。

【立ち往生(たちおうじょう) 】⇒ある場所で止まったまま、動きがとれず、どうすることもできなくなること。

【募る(つのる)】⇒広い範囲に呼びかけて集める。

【ボランティア】⇒自主的に社会事業などに参加し、無償の奉仕活動をする人。

【ベイクドビーンズ】⇒インゲンマメを甘辛いソースで調理した料理。

【慈善(じぜん)】⇒恵まれない人々や被害にあった人々に経済的な援助をすること。

【ライフセイバー】⇒人命救助員。

【おずおずと】⇒おそるおそる。びくびくしながら。

【心なしか】⇒気のせいか。思いなしか。

【臭気(しゅうき)】⇒いやなにおい。くさいにおい。

【塒(ねぐら)】⇒人が寝る場所。自分の家。

【シェルター】⇒避難所。

【緊縮(きんしゅく)】⇒支出を減らして節約すること。

【自治体(じちたい)】⇒国から自治の権能を認められた公共団体。日本では、都道府県や市町村などの地方公共団体を指す。

【善意(ぜんい)】⇒他人のためを思う親切心。他人を思う心。

【確固(かっこ) 】⇒確かなさま。しっかりしているさま。

【目の覚めるような】⇒はっと驚くくらいに見た目や動きが美しいさま。

【軒下(のきした)】⇒屋根の下。「軒」とは、建物の外に張り出した屋根の部分を指す。

【即答(そくとう)】⇒すぐに答えること。

【いっちょ前に】⇒一人前に。

【告知(こくち)】⇒人々に告げ、知らせること。

【物資(ぶっし)】⇒人が生活や活動をするために必要なもの。

【草の根(くさのね)】⇒民衆。一般大衆。ここでは、民間の組織を意味する。

【機動力(きどうりょく)】⇒状況に応じてすばやく活動できる能力。

【~きっての】⇒その範囲の中で最もすぐれているさま。

【一角に存在する(いっかくにそんざいする)】⇒ある地域の一部分に存在する。

【惨事(さんじ)】⇒悲惨でむごたらしい出来事。いたましい事件。

【節減(せつげん)】⇒数量や経費などを切り詰めること。

【しかるべき】⇒そうするのがふさわしい、正しい。

【格差(かくさ)】⇒資格・価格・等級などの差。

【象徴(しょうちょう)】⇒形のない抽象的なものを、形のある具体的なもので表すこと。

【瞬く間(またたくま)】⇒まばたくほどのごく短い間。

【ボランティア志願者(しがんしゃ)】⇒ボランティアをしたいと申し出る者。

【相互扶助(そうごふじょ)】⇒互いに助け合うこと。

【実地研修(じっちけんしゅう)】⇒実際の現場で体験して学ぶこと。

【まんざら】⇒必ずしも。

【根付く(ねづく)】⇒定着する。

【断続的(だんぞくてき)】⇒途切れたり続いたりするさま。

【勃発(ぼっぱつ)】⇒突然に起こること。急に起こること。

【うつろ】⇒精神がしっかりせず、ぼんやりしているさま。

【年季の入った(ねんきのはいった)】⇒物が長く使い込まれているさま。

【境遇(きょうぐう)】⇒その人が置かれた、家庭環境・経済状態・人間関係などの状況。

『誰かの靴を履いてみること』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

ケイタイに連絡が来た。

②倉庫をカイホウする。

ジゼン団体を立ち上げる。

④先輩にアイサツする。

キンシュク財政が続く。

⑥その事故は大サンジを招いた。

⑦喧嘩がボッパツする。

解答①携帯 ②開放 ③慈善 ④挨拶 ⑤緊縮 ⑥惨事 ⑦勃発
問題2『路上生活者たちの前を横切るときに、息子の表情が少しこわばっているのがわかった。』とあるが、息子の表情が少しこわばっていたのはなぜだと考えられるか?
解答例息子はそれまで路上生活者の人と接したことがなく、どのように接したらいいのか分からず、戸惑っていたため。
問題3「他人の靴をはいてみる」とは、どのようなことか?
解答例相手の立場に立ち、その境遇を想像して理解すること。
問題4「善意はエンパシーと繋がっている気がした。」とは、どのようなことか?「シンパシー」と「エンパシー」を比較した上で説明しなさい。
解答例「シンパシー」は、単に相手に対する同情・共感のような心の動きを表した言葉なのに対し、路上生活者の人が息子にキャンディーを渡したという行為は、立場の違う者への善意であり、違う境遇の人を理解して思いやるというエンパシーが発揮されたのだとわたしは感じたということ。

まとめ

 

以上、今回は『誰かの靴を履いてみること』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。