『少女たちのひろしま』は、教科書・現代文に載せられている文章です。ただ、本文を読むとその内容が分かりにくいと感じる箇所もあります。
そこで今回は、『少女たちのひろしま』のあらすじや要約、語句の意味などを含め簡単に解説しました。
『少女たちのひろしま』のあらすじ
本文は、行空きにより3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①『ひろしま』という写真集は、広島で被爆死した人たちが、その日、身に付けていたものを写真家である石内氏が撮影したものである。その内容は、ほとんどが洋服で、若い女性のものが多い。私がこの写真集を見て衝撃を受けたのは、どの洋服も本当にきれいで美しかったからである。
②石内氏に詳細を聞くと「あの洋服たちは、もともとはもっときれいだった」という答えが返ってきた。石内氏の言葉を聞き、彼女たちは初めから犠牲者だったわけではなく、私たちと同じように陽の光の下で生きていた、という当たり前のことを気づかされた。彼女たちは、死の瞬間までは、丁寧に営まれていた日常があったのだ。
③ところで、なぜ当時の広島の女性たちは、こんなにきれいな洋服を着ていたのだろうか?という疑問がある。それは、生命の危険にさらされた戦時下でも、彼女たちはおしゃれがしたかったからだ。それが分かった時、六十数年の時間を越えて、彼女たちが急に身近になったように思った。広島に行ったことは一度しかなかった私だが、広島の死者と自分をつなぐ回路を、思わぬところで見つけた気がした。
『少女たちのひろしま』の要約&本文解説
筆者は、広島で被爆死した人たちの洋服の写真集を見て衝撃を受けました。
通常であれば、戦死した人の遺品は、戦争の悲惨さを現在に伝えるものであり、悲しみや怒りを呼び起こし、反省を促し、追悼の思いをかきたてるものです。
ところが、写真の中の洋服はとても美しく、筆者にとって「こんなに美しく撮っていいの?」と思ってしまうほどでした。
そこで筆者は、その写真を撮った石内氏に直接話を聞き、あることに気付かされます。それは、彼女たちは初めから犠牲者だったわけではなく、私たちと同じように陽の光の下で生きていたということです。
筆者は、写真の中の洋服を単なる歴史資料としてしか見ていなかったため、もともと女性たちのために作られた洋服はもっと美しかったということを改めて思い知ることになります。
さらに筆者は、命の危機にさらされた戦時下であっても、彼女たちはおしゃれがしたかったということに気付かされます。それは誰に見せるわけでもなく、自分自身のためのおしゃれです。
その事を聞き、筆者にとって彼女たちは急に身近になったように感じることになります。なぜなら、六十年前の少女たちも、今を生きる私たちと同じ思いで日常を暮らしていたことが分かったからです。
もちろん、生者と死者の違いはありますが、それでも広島で亡くなった人と自分には共通点があることを思わぬところで筆者は見つけたということです。
『少女たちのひろしま』の意味調べノート
【被爆(ひばく)】⇒原水爆の被害を受けること。
【既製品(きせいひん)】⇒商品としてすでにできあがっている品物。
【遺品(いひん)】⇒故人が残した品物。
【透過(とうか)】⇒通り抜けること。
【繊細(せんさい)】⇒こまやかなこと。
【悲惨(ひさん)】⇒悲しくいたましいこと。
【促す(うながす)】⇒ある行為をするように仕向ける。
【追悼(ついとう)】⇒死者をしのんで、いたみ悲しむこと。
【タブー】⇒禁止された行為。禁忌。
【収蔵(しゅうぞう)】⇒物をとり入れ、おさめておくこと。
【染織(せんしょく)】⇒布を染めることと織ること。染め物と織り物。
【意志(いし)】⇒あることを行いたい、という考え。
【こわごわ】⇒恐ろしく思いながら物事をするさま。おそるおそる。
【極力(きょくりょく)】⇒できる限り。
【閃光(せんこう)】⇒瞬間的に発する光。
【史料(しりょう)】⇒歴史の研究に必要な文献・遺物。
【陰影(いんえい)】⇒光の当たらない、暗い部分。
【華奢(きゃしゃ)】⇒姿がほっそりして上品なさま。
【刻印(こくいん)】⇒刻みつけられた印。
【洋装(ようそう)】⇒西洋風の服装をすること。
【殺伐(さつばつ)】⇒殺気が感じられるさま。
【切実(せつじつ)】⇒心に強く感じるさま。
【希求(ききゅう)】⇒強く願い求めること。
【凄惨(せいさん)】⇒目をそむけたくなるほどいたましいこと。ひどくむごたらしいさま。
『少女たちのひろしま』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①ショウゲキ的な知らせ。
②水玉モヨウの服。
③テレビのシュウロク。
④センサイな感覚を持つ。
⑤幼い頃のキオク。
まとめ
以上、今回は『少女たちのひろしま』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。