グローバリゼーションの光と影 解説 意味調べノート 漢字 教科書 現代文

『グローバリゼーションの光と影』は、小熊英二による評論文です。高校現代文の教科書にも載せられています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が読み取りにくい箇所も多いです。そこで今回は、本作のあらすじや要約、語句の意味などを含めわかりやすく解説しました。

『グローバリゼーションの光と影』のあらすじ

 

あらすじ

グローバリゼーションとナショナリズムは、対立関係というより共犯関係である。

両者は同じ現象の別側面であり、交通の発達や文化の均質化が、国境内で起こる場合にはナショナリズムと呼ばれ、国境を跨いで起こる場合にはグローバリゼーションと呼ばれる。

両者は相互に高め合う補完関係にある。ナショナリズムの形成はグローバルな模倣関係によって行われるし、国家はしばしばグローバリゼーションを加速する。グローバリゼーションと呼ばれる現象の多くは、国家の存在を前提として成り立っている。

ではなぜ両者の対立と称される現象が存在するのか?それは、権力の配置から派生した問題にある。両者の最大の違いは、国家には主権があるが、国家を超える権力は存在しないという点にある。そのため、両者の対立という議論は、多くの場合、「国家にしか存在しない権力」の活用や正統性をめぐって行われている。

権力の問題でも、国家とグローバリゼーションは共犯関係にある。グローバリゼーションの被害者は国家に期待するが、国家を動かす為政者はグローバリゼーションに対応した競争の強化を唱える。

両者を対立させ、一方に肩入れする議論はその構図自体が不毛である。国家とそれを超える動きが共犯関係として並存する状況を把握することなしに、現実的な議論は進まない。

『グローバリゼーションの光と影』の要約&本文解説

 
200字要約近年、「グローバリゼーションとナショナリズムの対立」という図式があるが、両者は対立関係というより共犯関係である。両者は同じ現象の別側面であり、相互に高め合う補完関係にある。最大の相違は主権の有無にあるが、権力の問題でも国家とグローバリゼーションは共犯関係にある。両者を対立させて議論する構図自体が不毛であり、国家とそれを超える動きが共犯関係として並存する状況を把握しなければ現実的な議論は進まない。(199文字)

本文を理解する上で、まず「グローバリゼーション」と「ナショナリズム」の意味を理解することが重要となります。

「グローバリゼーション」とは、政治や経済、文化などが国境を越えて世界的な規模で広がることです。

一方で、「ナショナリズム」とは、国家の統一・発展・独立などを目指す考え方のことです。簡単に言えば、自分の国のことを大事にする考え方のことです。

普通に比較すれば、両者は対立関係にあるようにも思えます。しかし、筆者はこの両者は同じ現象の別側面であるのだと続けます。

例えば、同じ交通や文化が発達する場合であっても、一つの国の中であれば「ナショナリズム」と呼びますが、国境を越えて広がれば「グローバリゼーション」と呼ばれます。

また、日本へ黒船がやってきたときも、最初はグローバルな他者からの接触でしたが、結果的に国内に蒸気船という交通技術が発達することになりました。

このように、両者はお互いを高め合う補完関係にあるのだと筆者は述べています。

両者を対立させる議論の多くは、「国家にしか存在しない権力」の活用や正統性をめぐって行われていますが、権力の問題であっても両者は共犯関係にあるのだと言います。

「共犯」は本来「二人以上の者が一つの罪に関与していること」という意味ですが、ここでは「共犯関係」=「お互いが切っても切り離せない関係」と言い換えて問題ありません。

最終的に筆者は、両者を対立関係で捉える議論自体が不毛であり、国家とそれを超える動きが共犯関係として並存している状況を把握しなければ現実的な議論は進まない、と結論付けています。

全体としては、「グローバリゼーション」と「ナショナリズム」は対立関係ではなく、補完関係・共犯関係にあるという筆者の主張を読み取ることがポイントとなります。

『グローバリゼーションの光と影』の意味調べノート

 

【グローバリゼーション】⇒国を超えて経済活動やものの考え方などが世界的規模に広がること。

【ナショナリズム】⇒民族や国家の統一・発展・独立を進めることを強調する思想。「国家主義・民族主義・国民主義」などと訳される。

【均質(きんしつ)】⇒性質や状態が同じであること。

【基盤(きばん)】⇒物事を支えるよりどころ。物事の土台。

【普及(ふきゅう)】⇒広く一般に行きわたること。

【補完(ほかん)】⇒足りないところを補い、完全なものにすること。

【覚醒(かくせい)】⇒目をさますこと。

【革新(かくしん)】⇒習慣、制度、方法などを改めて、新しくすること。

【模倣(もほう)】⇒他のものをまねること。似せること。

【しばしば】⇒同じ事が何度も重なって行われるさま。たびたび。

【港湾(こうわん)】⇒海が陸地に入りこんだところ。また、人工的にそのようにつくられたところ。船の出入や停泊、客の乗降、貨物のあげおろしなどの設備がある。

【興隆(こうりゅう)】⇒勢いが盛んになること。

【相違(そうい)】⇒違い。

【優遇(ゆうぐう)】⇒優先的に扱うこと。

【動機(どうき)】⇒行動を起こす直接の原因。

【派生(はせい)】⇒もとのものから分かれて生じること。

【主権(しゅけん)】⇒国民および領土を統治する国家の権力。

【典型的(てんけいてき)】⇒その特徴・性質をよく表しているさま。

【争点(そうてん)】⇒争いの中心となっている点。

【擁護(ようご)】⇒かばい守ること。

【草の根(くさのね)】⇒一般大衆。一般の人々。政党などの指導者層に対していう語。

【台頭(たいとう)】⇒勢いを増してくること。

【為政者(いせいしゃ)】⇒政治を行う者。

【潮流(ちょうりゅう)】⇒時代の流れ。時代の傾向。

【原資(げんし)】⇒もとで。資金源。

【抽象的(ちゅうしょうてき)】⇒現実から離れて具体性を欠いているさま。

【肩入れ(かたいれ)】⇒ひいきすること。力を貸すこと。

【不毛(ふもう)】⇒なんの成果も発展も得られないこと。

【並存(へいぞん)】⇒二つまたはそれ以上のものが同時に存在すること。

『グローバリゼーションの光と影』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

リョウイキを拡大する。

②自動車のフキュウ

③他の作品をモホウする。

④文明がコウリュウする。

⑤新たな問題がハセイする。

⑥貧富の差をナゲく。

⑦時のイセイシャとなる。

解答①領域 ②普及 ③模倣 ④興隆 ⑤派生 ⑥嘆 ⑦為政者
問題2「グローバリゼーションとナショナリズムは、同じ現象の別側面だといえる」とあるが、これはどういうことか?本文中の語句を用いて説明しなさい。
解答例交通の発達や文化の均質化などの現象が、国境内で起こる場合にはナショナリズムと呼ばれ、同じ現象が国境を跨いで起こる場合にはグローバリゼーションと呼ばれるということ。
問題3「ナショナリズムの形成は、グローバルな模倣関係によって行われる。」とあるが、これはどういうことか?
解答例ナショナリズムは、グローバルなナショナリズム形成政策を学び、それを模倣することにより形成されるということ。
問題4「どちらか一方に肩入れするという議論は、その構図自体が不明であろう」とあるが、不毛であると筆者が考えるのはなぜか?本文中の語句を用い、130文字程度で述べなさい。
解答例グローバリゼーションとナショナリズムのどちらか一方に肩入れするという議論は、両者を抽象的に対立させているだけであり、実際には両者は共犯関係であるため、国家とそれを超える動きが共犯関係として並存している状況を把握することなしには、現実的な議論は進まないため。(128文字)
問題5

次の内、本文の内容を表したものとして適切でないものを選びなさい。

(ア)交通・通信技術の発達、文化の均質化、経済活動の領域拡大などは、グローバリゼーションだけでなくナショナリズムの基盤でもある。

(イ)ナショナリズムの特徴は、どこの国家もグローバルな模倣を行うことで、各国の独自性の主張が国ごとに異なる点にある。

(ウ)ナショナルとグローバルは、実際にはコインの表裏であるはずだが、権力の問題に限っては明確な相違がある。

(エ)国家を動かす為政者は、グローバリゼーションの被害者が期待する国家の再分配機能を重視せず、国際競争力の強化を唱える。

解答(イ)本文中には、ナショナリズムの特徴は、どこの国家も「独自性」を主張しながら、その「独自性」の主張の方法がどこでも同じである点にある。と書かれている。

まとめ

 

以上、今回は『グローバリゼーションの光と影』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。