『クレールという女』は、高校現代文の教科書で学ぶ随想です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。
ただ、実際に本文を読み進めるとその内容が分かりにくい箇所もあります。そこで今回は、本作のあらすじやテスト対策などを含め解説しました。
『クレールという女』のあらすじ
本文は、大きく分けて4つの段落から構成されています。ここでは、各段落のあらすじを簡単に紹介していきます。
①まだ大学院生だった四十年前、夢中になって読んだ本があった。今その本を読んだらどう感じるか知りたい気がした。家のあちこちを探したが見当たらないので、図書館へ行くことにした。懐かしい公園の小道を歩いていると、当時の記憶がよみがえってくる。あの頃はまだ戦争が済んで間もなく、私はこれからどう生きればいいのか、二度と戦争に巻き込まれないためには何をすればいいかを、友だちと夜を通して話し合っていた。
②図書館に行くと、その本は見つかった。『人間のしるし』というタイトルで、あらすじはこうだ。第二次世界大戦中、ドイツ軍の捕虜として服役していたジャンは、収容所で彼の妻クレールの友人であるジャックと出会う。だが、ジャックとクレールがお互いに手紙を出し続けていることを知り、さらにジャックが持っていた結婚前のいきいきとしたクレールの写真を見て嫉妬する。釈放後のある日、ジャンはクレールの日記を盗み読んでしまう。そこには、自分の生活に意味を与えてくれたジャックへの思いと自分に独自の生活を与えようとしないジャンへの不満がつづられていた。やがて、ジャンは少しずつ変わり始める。その後ジャンは逮捕され、牢獄生活の後、家に戻ると、逮捕されたクレールの残した日記で自分への愛情を知ることになる。小説は、ジャンが再び抵抗運動に身を投じるだろうと思わせる言葉で終わっている。
③『人間のしるし』が、あの時代に私たちをとりこにした第一の理由は、それが抵抗運動について書かれたものであったからだ。だが、もう一つの重要な理由は「人間らしく生きる」とは何かという問題が、根本のところで提示されていたからだと思われる。人間とは、男女とはいったいなんだろう…。私たちは三人の生き方について何時間もじゃべり続けたが、まだ本当に歩き始めてもいない人生について語る言葉は、軽くて容易だった。
④性急に生きて収容所で命を終えたジャックは、一つの思想でしかない。ジャックに嫉妬し、悩み苦しみながら生きたジャンこそが、より人間らしいやり方でクレールを愛したのではなかったか。あれから四十年たった今、私が『人間のしるし』へ出した答えがそれだった。あの本を友人たちと読んだ頃、人生がこれほど多くの翳(かげ)りと、それと同じぐらいの豊かな光に満ちているとは想像もしていなかったのだ。
『クレールという女』の本文解説
筆者は家で本棚を整理している時、40年も前に読んだ本のことを思い出します。そして、その本を見つけるために図書館へと向かうことになります。
図書館で見つけたのは、『人間のしるし』という本でした。この本は、第二次世界大戦下におけるフランスの抵抗運動がテーマとなっています。
この本では、ジャン・クレール・ジャックの三人が登場しますが、筆者はこの小説を読み、学生時代の友人たちと人生について真剣に語り合いました。
内容としては、「人間とは何か?」「男女とは何か?」といったことです。こういう哲学的な議論というのは、人生経験が豊富でないとなかなか深く語れるものではありません。
そのため、まだ本当の人生を歩き始める前の若者たちの言葉は、今思えば、たとえようもなく軽く、容易であったと筆者は述べています。
一方で、筆者はそんな青春時代の自分たちの議論を単に浅はかなものだと思っているわけではありません。なぜなら、本当の困難や挫折を克服した時の喜びを知らない若者が、純粋に理想を求めるのは当然のことだからです。
筆者はむしろ、そうした胸を躍らせていた青春時代を懐かしく回想し、今になって感慨深いに思いに浸っていることが分かります。
最後の一文でも、人生がこれほど多くの翳りとそれと同じくらい豊かな光に満ちていることを、私たちは想像もしていなかった。とあります。
これはつまり、人生は良くも悪くも多くの悲しさと嬉しさに満ちあふれている、ということを私たちに伝えてくれている一文でもあります。
『クレールという女』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①ナツかしい記憶。
②ショウゲキを受ける。
③ヤッキになる。
④シュウヨウ所での生活。
⑤集団でダッソウする。
⑥ヘイオンな日々。
⑦カイメツ的な被害。
⑧ユカタを着る。
⑨コドクな生活を好む。
⑩カンセイな町並み。
「ジャン」⇒愛や嫉妬に苦しみながらも、人生の矛盾を抱えながら懸命に生きた、より人間らしい生き方。
「ジャック」⇒あまりにも「純粋」で観念的であり、一つの思想でしかないような生き方。
まとめ
以上、今回は『クレールという女』について解説しました。内容が分かった上で、もう一度本文を読み返してみるのもよいでしょう。なお、作中に出てくる重要語句については以下の記事でまとめています。