『日本人の美意識』は、現代文の教科書に載せられている評論文です。ただ、本文を読むと筆者の主張などが分かりにくい箇所も多いと思われます。
そこで今回は、『日本人の美意識』のあらすじや要約、テスト対策などを簡単に解説しました。
『日本人の美意識』のあらすじ
本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①日本人の美意識を探る手がかりとして、「うつくし」と「きよし」という二つの古語に注目したい。「うつくし」は、古くは「かれんだ」「かわいい」といった小さな者に対する愛情を表す語であったが、室町時代以降、現在の「美しい」という意味になった。また、「きよし」はもともと「汚れのない」「純粋無垢」の意味で、不純なもののない状態を示すことから、古くは「美しい」の意味を持っていた。ここに、日本人の美意識の大きな特色があると言ってよい。
②「うつくしい」という言葉の変遷をたどると、日本人の美意識が、主として自分よりも小さいもの、弱いもの、保護してやらなければならないものに向けられていたことが分かる。ここから、日本独特の工芸や絵画が持つ「縮小された世界」や部分的な表現を重視する性格も説明できる。西欧はこの点では全く対照的で、美は力強いもの、強大なものと結びつき、遠近法を用いて統一された「空間構成」を重視していたことが分かる。
③「きよし」という言葉は「汚れのない」状態を表すが、これは余計なものを排除する意識であり、「貧しさの美学」「否定の美学」などとも呼ばれる。「わび」「さび」、水墨画や能なども、この美意識の反映である。西欧はこの点でも反対で、力や富が美と結びつくという伝統がある。日本人独自の伝統的な美意識は、美術や芸術の領域にとどまるものではなく、日本人の生活行動全般にまで及んでいる。明治以来、日本は西欧の文化に接することによって大きく変わったが、美に対する上代人たちの感受性は、今もなお生き続けていると思われる。我々はもう一度、祖先たちの美意識がどのようなものであったかを考え直してみる必要がある。
『日本人の美意識』の要約&本文解説
筆者はまず第一段落で、日本人の美意識を明らかにするには「うつくし」と「きよし」という二つの古語に注目するのがよいと述べています。この二つに注目することで、日本人は小さい者や汚れがない対象に対して古来から「美しい」というイメージを持っていたことが分かる、というものです。ここでは、第一段落で早くも結論を暗示していることが分かります。
そして、第二段落・第三段落ではこの結論の証明を行っています。第二段落では、「うつくし」に込められた美意識が日本と西欧で対照的であること、第三段落では「きよし」に込められた美意識が日本と西欧でそれぞれ対照的であることを述べています。
証明の段階では、筆者の専門である美術方面での知見が申し分なく発揮されています。最後に、これらの日本人の美意識が、芸術分野にだけあてはまるのではなく、私たちの生活や行動のすみずみにまで行き渡っているという指摘もしています。
全体の構成としては、「結論」⇒「結論に対する証明」⇒「再度、結論」といった流れになっているのがポイントとなります。
『日本人の美意識』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①トクシュな事件。
②環境をホゴする。
③タンテキに言う。
④成績がケンチョに伸びる。
⑤メンミツに計画を立てる。
⑥色彩のノウタン。
⑦室内をソウショクする。
⑧感情をヨクセイする。
⑨エイビンな聴覚を持つ。
⑩テッテイした方針。
まとめ
以上、今回は『日本人の美意識』について解説しました。「美」をテーマとした文章は、入試においてもよく出題されます。ぜひ正しい読解をして頂ければと思います。なお、本文中の重要語句については以下の記事でまとめています。