『高瀬舟』は、中学国語や高校現代文の教科書に採用されている小説文です。安楽死や尊厳死などをテーマとして書かれたもので、学校の授業においてもその事については学びます。
ただ、実際に本文を読むと意味の分からない言葉も多く出てきます。そこで今回は、『高瀬舟』に出てくる語句や漢字の読み方について簡単にまとめました。
第一段落の言葉一覧
【罪人(ざいにん)】⇒罪を犯した人。
【遠島(えんとう)】⇒江戸時代の刑罰の一つ。財産を没収した上で、罪人を離れた島へ送った。追放より重く、死罪より軽い。島流し。
【親類(しんるい)】⇒親戚 (しんせき)。
【牢屋敷(ろうやしき)】⇒牢獄を構えた一区域の土地。
【暇乞(いとまごい)】⇒別れを告げること。
【載せる(のせる)】⇒乗り物の上に人を置く。
【護送(ごそう)】⇒罪人を、身柄を拘束したまま他の場所へ送ること。
【京都町奉行(きょうとまちぶぎょう)】⇒江戸幕府が京都に設置した職名の一つ。
【配下(はいか)】⇒支配下にあること。また、その者。
【同心(どうしん)】⇒江戸幕府で、庶務・警察事務を分掌(ぶんしょう)した下級の役人。
【同船(どうせん)】⇒同じ船に乗り合わせること。
【慣例(かんれい)】⇒繰り返し行われて習慣のようになった事柄。しきたり。
【默許(もっきょ)】⇒知らないふりをしてそのまま許すこと。黙認。
【上(かみ)】⇒朝廷・幕府や政府など、時の政治を執り行う機関。
【所謂(いわゆる)】⇒よく言う。俗に言う。
【大目に見る(おおめにみる)】⇒人の過失や悪いところなどを厳しくとがめず寛大に扱う。
【當時(とうじ)】⇒当時。
【勿論(もちろん)】⇒もちろん。
【盜(ぬすみ)】⇒ぬすみ。
【云ふやうな(いうような)】⇒いうような。
【獰惡(どうあく)】⇒性質が乱暴で荒っぽいこと。
【過半(かはん)】⇒半分を超えたもの。
【心得違(こころえちがい)】⇒道理に外れた行為や考え方をすること。
【科(とが)】⇒罰されるべき行為。罪。
【有り觸れた(ありふれた)】⇒ありふれた。
【擧げて(あげて)】⇒挙げて。
【相對死(あいたいじに)】⇒慕い合っている男女が、互いに合意した上で心中すること。
【情死(じょうし)】⇒愛し合っている男女が一緒に自殺すること。
【謀る(はかる)】⇒はかりごとをする。たくらむ。
【活き殘つた(いきのこった)】⇒生き残った。
【類い(たぐい)】⇒同じ種類のもの。同類。
【さう云ふ(そういう)】⇒そういう。
【入相の鐘(いりあいのかね)】⇒日暮れ時に寺でつく鐘。「入相」とは「日が山の端(は)に入る頃。日の暮れる頃。夕暮れ。」などを指す。
【漕ぎ出す(こぎだす)】⇒舟を漕いで出る。
【加茂川(かもがわ)】⇒京都市東部を南流する川。
【両岸(りょうがん)】⇒川などの左右両方の岸。
【其(その)】⇒その。
【夜どほし(よどおし)】⇒夜通し。一晩中。
【身の上(みのうえ)】⇒その人の境遇。
【繰言(くりごと)】⇒同じ事を繰り返して言うこと。特に、泣き事や不平などをくどくどと言うこと。
【傍(そば)】⇒そば。近く。
【眷族(けんぞく)】⇒血のつながっている者。身内の者。親族。
【悲慘(ひさん)】⇒見聞きに耐えられないほどいたましいこと。
【境遇(きょうぐう)】⇒その人が置かれた、家庭環境・経済状態・人間関係などの状況。身の上。
【所詮(しょせん)】⇒どうこう言っても結局は。つまるところ。
【町奉行(まちぶぎょう)】⇒江戸幕府の職名。老中に属し、江戸の町方の行政・司法・警察など民政全般をつかさどった。
【白州(しらす)】⇒江戸時代、奉行所の裁きを受ける庶民が控えた場所。
【表向(おもてむき)】⇒うわべ。表面上。
【口供(こうきょう)】⇒罪人の口から罪状を述べること。
【口書(くちがき)】⇒江戸時代に、罪人の供述を記録したもの。
【讀んだり(よんだり)】⇒読んだり。
【夢にも(ゆめにも)】⇒少しも。いささかも。
【窺ふ(うかがう)】⇒状況を察する。様子を知る。
【勤める(つとめる)】⇒働く。
【種々(いろいろ)】⇒色々。さまざま。
【只(ただ)】⇒ただ。
【耳を掩ひたく思ふ(みみをおおいたくおもう)】⇒聞きたくないように思う。
【冷淡(れいたん)】⇒思いやりがないこと。同情や親切心を示さないこと。
【哀(あわれ)】⇒ 無惨な姿。かわいそうな状態。
【役柄(やくがら)】⇒役目のある身分。また、その役目上の体面。
【ゆゑ】⇒ゆえ。~のため。~によって。
【氣色(けしき)】⇒顔色。
【中(うち)】⇒心の中。内心。
【私かに(ひそかに)】⇒ひそかに。
【胸を痛める(むねをいためる)】⇒心を悩ます。
【陷つた(おちいった)】⇒望ましくない状態になった。
【涙脆い(なみだもろい)】⇒ちょっとしたことにも涙が出がちである。情にほだされやすい。
【宰領(さいりょう)】⇒付き添い。
【不覺の涙(ふかくのなみだ)】⇒思わず流れ出した涙。ここでの「不覚」は「思わずそうなること」を表す。
【禁じ得ぬ(きんじえぬ)】⇒抑えることができない。「禁じる」は「ある気持ちを抑える」、「得ぬ」は「~できない」という意味。
【不快(ふかい)】⇒いやな気持ちになること。
【職務(しょくむ)】⇒仕事。役目。
第二段落の言葉一覧
【白河樂翁(しらかわらくおう)】⇒江戸中期の白川藩主である「松平定信」の異称。
【侯(こう)】⇒封建制における称号を表す語。
【政柄(せいへい)】⇒政治を行う上での権力。
【寛政(かんせい)】⇒江戸中期、光格天皇の時の年号。1789年1月25日~1801年2月5日。
【智恩院(ちおんいん)】⇒京都市東山区にある浄土宗の総本山の寺院。
【櫻(さくら)】⇒桜。
【入相(いりあい)】⇒日が山の端(は)に入る頃。日の暮れる頃。夕暮れ。
【夕(ゆうべ)】⇒日の暮れるころ。夕方。
【喜助(きすけ)】⇒弟殺しの罪で島流しを言い渡された男。
【住所不定(じゅうしょふじょう)】⇒住んでいる場所が一定でないこと。特定の居住地を持たないこと。
【固より(もとより)】⇒元より。以前から。もともと。
【乘つた(のった)】⇒乗った。
【庄兵衞(しょうべい)】⇒罪人を護送する役人。
【棧橋(さんばし)】⇒船を横づけにして、人の乗り降りや貨物の積みおろしなどができるように、岸から水上に突き出して造った構築物。
【痩肉(やせじし)】⇒痩せて肉づきが細いこと。痩せた体。
【蒼白い(あおじろい)】⇒血の気がない顔色を表したさま。
【神妙(しんみょう)】⇒態度がおとなしく、すなおなこと。
【をば】⇒を。
【公儀(こうぎ)】⇒朝廷、また、幕府。
【逆はぬ(さからわぬ)】⇒逆らわない。
【往々(おうおう)】⇒物事がしばしばあるさま。
【温順(おんじゅん)】⇒おだやかで、すなおなこと。ひかえめで、やさしいさま。
【裝う(よそおう)】⇒表面や外観を飾って、他のものに見せかける。ふりをする。
【權勢(けんせい)】⇒権力と威勢。
【媚びる(こびる)】⇒気に入られるような態度をとる。へつらう。
【單に(たんに)】⇒単に。
【擧動(きょどう)】⇒挙動。立ち居振る舞い。動作。
【暮方(くれがた)】⇒日の暮れるころ。 夕方。
【歇んで(やんで)】⇒止(や)んで。
【蔽つた(おおった)】⇒覆った。
【輪廓(りんかく)】⇒輪郭。物の外形を形づくっている線。
【かすむ】⇒ぼんやりして、物の姿や形がはっきり見えなくなる。
【やうやう】⇒次第に。だんだん。
【温さ(あたたかさ)】⇒あたたかさ。
【川床(かわどこ)】⇒川底となる地面。
【靄(もや)】⇒大気中に無数の微小な水滴が浮遊し、遠くがかすんで見える現象。
【下京(しもきょう)】⇒京都市の三条通り以南の地。
【舳(へさき)】⇒船の前の方の部分。舳先(へさき)。
【夜舟(よぶね)】⇒夜に航行する舟。
【濃淡(のうたん)】⇒色の濃いことと薄いこと。
【從つて(したがって)】⇒従って。
【仰ぐ(あおぐ)】⇒上を向く。上方を見る。
【額(ひたい)】⇒おでこ。
【微かな(かすかな)】⇒やっと感じ取れる程度であるさま。
【始終(しじゅう)】⇒絶えず。常に。
【樂しさう(たのしそう)】⇒楽しそう。
【若し(もし)】⇒もし。
【對する(たいする)】⇒対する。
【氣兼(きがね)】⇒遠慮。
【幾度(いくど)】⇒どのくらいの回数。何度。
【殆ど(ほとんど)】⇒ほとんど。
【目も當てられぬ(めもあてられぬ)】⇒目も当てられぬ。
【遊山船(ゆさんぶね)】⇒遊山客を乗せる船。「遊山」とは「気晴らしに遊びに出かけること」を表す。
【よしや】⇒たとえ。かりに。
【惡い(わるい)】⇒悪い。
【行掛り(いきがかり)】⇒物事との関係のぐあいで、すでに手を引くことができない状態にあること。なりゆき。
【好い(いい)】⇒いい。
【心持(こころもち)】⇒気持ち。気分。
【筈(はず)】⇒はず。
【痩男(やせおとこ)】⇒やせている男。
【缺けて(かけて)】⇒欠けて。
【稀(まれ)】⇒めずらしいさま。
【辻褄(つじつま)】⇒合うべきところがきちんと合う物事の道理。
後半へと続く
「第三段落~第四段落(後半)」へと続く。(こちらもしくはページ下部の2をクリック)