「乙なもの」という言葉は、日常会話においてよく用いられています。
ただ、具体的な使い方が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。また、似たような表現の「粋なもの」との違いも分かりにくいです。
そこで本記事では、「乙なもの」の意味や使い方、由来などを含め詳しく解説しました。
乙なものの意味・読み方
「乙なもの」は「おつなもの」と読みます。意味は、「気が利いていて、ちょっといいと思わせるようなもの」です。
主に、「他によいものがあるものの、これもまた趣があっていい」と感じさせるような際に使われます。また、「他とはちょっと変わっているけども、味わいや面白みがあってよい」という意味で使われることもあります。
例えば、海というのは夏にいってこそ楽しむことができる場所です。ところが、夏ではなく冬に行ったとしても普段とは違う美しくてきれいな景色を楽しむことができます。
このような場面では、「冬の海を見に行くのも、乙なものだ」などのように言う事ができます。
つまり、一番の王道ではないけども、趣や風情があって味わい深い様子のことを「乙なもの」と表現するわけです。
乙なものの語源・由来
「乙なもの」の語源は、二つの説があります。
一つ目は、「十干の二番目であるため」という説です。
「十干」とは古代中国の考え方で十の要素からなるものを総称した言葉です。
それぞれ 「甲(こう)・乙(おつ)・丙(へい)・丁(てい)・戊(ぼ)・己(き)・庚(こう)・辛(しん)・壬(じん)・癸(き)」があります。
この十干は、学業の順位や人の評価などを表す際に用いられており、「乙」は上から二番目によいものを指していました。
そのため、「甲のように一番優れているものではないけども、二番目の乙もなかなかよいものだ」という意味で「乙なもの」と言うようになったという説です。
二つ目は、「邦楽で甲より一段低い音が乙であったため」という説です。
邦楽では一番高い音の事を「甲(かん)」と呼びますが、それに対して一段低い音のことを「乙」と呼びます。
乙の音は通常よりも低い音ですが、それでもなかなか味わいのある音でした。そこで同じく、通常の甲ではないものの、乙も素晴らしいという意味で「乙なもの」と言うようになったという説です。
二つ目の説は一つ目の説と異なり、どちらが優れているという話ではありません。あくまで、他とはちょっと変わっているけども、こちらも味わいがあってよいという意味での由来です。
乙なものの類義語
「乙なもの」は、次のような類義語で言い換えることができます。
類義語は「趣や味わいがあること」を表した言葉となります。他と違った側面が含まれていて、なおかつ優れたさまであれば類義語と言えるでしょう。
なお、似たような言葉で「粋なもの」がありますが、「粋(いき)」とは「気質や態度、身なりなどが洗練されていているさま」を表します。
したがって、「粋なもの」とは「気質や態度、身なりなどが洗練されていているもの」を表した言葉となります。例えば、非常におしゃれでかっこいい服に出会ったとしたら、「粋なものを見つけた」などのように言います。
「乙なもの」と「粋なもの」の違いですが、「乙なもの」は「普通とは異なる・個性的な」というニュアンスが含まれた表現です。
対して、「粋なもの」は普通とは異なるような個性的なニュアンスは含まれません。「粋なもの」は、世間一般の多くの人が洗練されていると感じるようなものを対象とします。
乙なものの対義語
「乙なもの」の「対義語」としては「野暮(やぼ)」が挙げられます。
「野暮」とは「言動や趣味、人柄などが洗練されていないこと。無風流なこと」を表した言葉です。
例えば、服装や髪形などの見た目が田舎臭い人のことを「野暮な人」などと言ったりします。また、絵や音楽などの芸術センスがない人のことを「彼は野暮だ」などのように言います。
他には、「粗野」「地味」「雑」などの語も反対語に含まれます。なお、「乙」自体の対義語は「甲」ですが、「甲なもの」という言葉は存在しません。
乙なものの英語訳
「乙なもの」は、英語だと次のように言います。
「stylish」(お洒落な・粋な)
「smart」(賢明な・気の利いた)
「witty」(機知のある・軽妙な)
「quite good」(なかなかよい)
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
She is a stylish student.(彼女はお洒落な学生だ。)
He returned a smart answer.(彼は気の利いた答えを返した。)
He makes witty remarks.(彼は乙なことを言う奴だ。)
This tastes quite good.(これはなかなか乙な味がする。)
この中だと、「quite good」は比較的使いやすい表現だと言えます。「quite」は「かなり・なかなか」などを表す副詞なので、一番ほどではないものの、物事の程度を称賛するような際に使うことができます。
乙なものの使い方・例文
最後に、「乙なもの」の使い方を例文で紹介しておきます。
- たまの休日だが、家でゴロゴロしながら映画をみるのも乙なものだ。
- みんなでこうして山の頂上から町を見渡すのも、なかなか乙なものだ。
- 一番人気のメニューを食べるのもいいが、今日はあえて乙なものを選びました。
- 自分は乙なものだと感じたが、思いのほか値段が安かったのですぐに購入した。
- 今日は雨が降っているが、こういう日に花見に行くのもまた乙なものである。
- 高級レストランばかりではなく、たまには大衆食堂に行くのも乙なものである。
「乙なもの」は、「他によいものがあるものの、これもまた趣や風情があっていいもの」という意味でした。元々は「二番目なもの」が由来となっていますが、悪い意味で使うことは基本ありません。
分かりやすい例で例えるなら、「B級グルメ」のようなものです。一番上の最高ではないけども、味わい深くてすばらしいと感じるようなよいものを対象とするようにします。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「乙なもの」=気が利いていて、ちょっといいと思わせるようなもの。
「語源・由来」=①十干の二番目であるため。②邦楽で甲より一段低い音が乙だから。
「類義語」=「妙・妙味・御洒落・風趣・醍醐味」「対義語」=「野暮」
「英語訳」=「stylish」「smart」「witty」「quite good」
「乙なもの」は、ちょっとした日常会話でも使うことができます。正しい意味を理解したからには、ぜひ積極的に使ってみてください。