「寄る年波」という言葉をご存知でしょうか?年賀状の文面などによく見られ、「寄る年波には勝てない」「寄る年波にはかなわない」などのように用います。
ただ、具体的な使い方やそもそも何歳から使えばよいのかといった疑問があります。そこで本記事では、「寄る年波」の意味や語源、例文などを解説しました。
寄る年波の意味・読み方
「寄る年波」は「よるとしなみ」と読みます。意味は「老化や高齢などによりじわじわと年をとること」を表したものです。
例えば、久しぶりに運動をした高齢者が、翌日思った以上に疲れてしまったような場合に、「寄る年波には勝てない」あるいは「寄る年波には勝てぬ」などのように言います。
「寄る年波」は、物の老朽化などには使わず個人の老いに対して使われる言葉です。体力低下などの肉体的な衰えはもちろんのこと、心や精神の老いに対しても使われます。
ただ、人に使うとは言っても他人に対して使うようなことは基本ありません。自分自身に対して老いを感じたような時にこの言葉を使います。
寄る年波の語源・由来
「寄る年波」は、「年が寄る」を波にかけた表現から生まれた言葉です。
まず、「年が寄る」とは「年齢を重ねたり老いたりすること」を意味します。「年寄り」という言葉も、「年が寄る」を名詞にした形であることからも分かるかと思います。
そして「波」というのは、風や振動などにより海の水がうねるように動く現象を表します。砂浜などにいると、波は押し寄せるようにじわりじわりとこちらへと向かってきます。
この事から、「加齢などにより年を取ること」を「じわじわと寄って来る年の波」という意味で、「寄る年波」と表現するようになったわけです。
つまり、「寄る年波」とは押し寄せる波のように加齢してゆくことを比喩的に例えた慣用句ということになります。
なお、場合によっては「波」を使わずに「寄る年には勝てない」などのように言うこともあります。どちらを使っても意味自体はまったく同じと考えて下さい。
寄る年波の類義語
続いて、「寄る年波」の「類義語」を紹介します。
類義語は、「年を重ねることにより体や心が衰えること」を表した言葉となります。熟語で言い換えるなら、「加齢」や「老化」が意味としては最も近いです。
ただ、一般に「寄る年波」単独で使うことは少なく、「寄る年波には勝てない」のようにことわざの一部として用いる場合がほとんどです。
そのため、「寄る年波にはかなわない」「寄る年波には抗(あらが)えない」などの表現も類義語に含まれます。
寄る年波の英語訳
「寄る年波」は、英語だと次のように言います。
「aging」(加齢・老化)
「advancing age」(年を重ねること)
「growing old」(年を取ること)
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
Sleep deprivation has an aging effect.(睡眠不足には老化作用がある。)
People become more likely to forget with advancing age.(年を重ねるごとに人は忘れやすくなる。)
She felt herself growing old.(彼女は自分自身が老いていくのを感じた。)
その他、ことわざだと次のような表現も可能です。
「Old age tires both body and soul.」(年を取ることは、肉体と精神の両方を疲れさせる。)
「Nobody can struggle against advancing age.」(誰も年を重ねることに打ち勝つことはできない。)
「tire」は「疲れさせる・くたびれさせる」などの意味を持つ動詞です。そのため、「年をとるのは人を疲れさせる」⇒「寄る年波には勝てない」という意味になります。
また、「struggle against~」は「~に対して苦闘する」という意味の熟語です。単に戦うというよりは、勝ち目のない相手に対して絶望的な戦いをするような際に使われる表現です。
寄る年波の使い方・例文
最後に、「寄る年波」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 久しぶりに仲間と野球をしたが、翌日体中が痛くて寄る年波には勝てぬとつくづく思ったよ。
- 寄る年波には勝てないとはよく言ったものだ。昔と比べて明らかに体力が落ちてきたよ。
- 若い頃は健康だったが、今では毎日のように病院に通っている。寄る年波には勝てないものだね。
- 最近ちょっと動いただけですぐに首や腰が痛くなるようになった。寄る年波には勝てないですよ。
- 私も寄る年波にあらがえず、本年をもちまして最後のご挨拶とさせていただきたく存じます。
- 私自身も寄る年波には勝てず、毎年の年賀状をしたためることも難しくなってまいりました。
- 私自身も寄る年波には勝てず、誠に勝手ながら本年をもちまして年頭のご挨拶状を失礼させていただきたく存じます。
「寄る年波」は、一定の年齢に達することにより、若い頃にできた行動ができなくなったと感じるような場面で使います。そのため、前向きな意味で使うというよりは、どちらかと言うと現実的・悲観的な意味を込めて用いられることが多いです。
実際に使う年齢ですが、老化の基準というのは人によって異なるため、具体的に何歳から使うなどの決まりはありません。ある人にとっては40歳もしれませんし、ある人にとっては60歳かもしれません。
なお、「寄る年波」は例文5~7のように年賀状の文面において用いられることもあります。この場合は、「年賀状を今年で辞めたい」という意思を丁寧に相手へ伝えるような場面で用います。
「加齢により~」「老化により~」などの言い方よりも、「寄る年波には~」という表現の方が相手へ丁寧かつおごそかに伝えることができるので、年賀状で用いる際には適していると言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「寄る年波」=老化や高齢などによりじわじわと年をとること。
「語源・由来」=「年が寄る」を波にかけたことから。押し寄せる波のように加齢してゆくことを比喩的に例えた表現。
「類義語」=「加齢・老化・老衰・高齢化・年には勝てない・弱るは老いの習い」
「英語訳」=「aging」「advancing age」「growing old」
「寄る年波」というのは、「年が寄る」という表現と「押し寄せる波」を掛け合わせた言葉です。語源を理解したからには、ぜひ正しい場面で使って頂ければと思います。