「世話を焼く」という慣用句を聞いたことがあるでしょうか?
男性と女性の両方を主語にでき、ビジネスシーンにおいても用いられています。ただ、具体的な使い方や語源などが分かりくい表現でもあります。
そこで本記事では、「世話を焼く」の意味や例文、類義語などを含め詳しく解説しました。
世話を焼くの意味・読み方
最初に、「世話を焼く」を辞書で引いてみます。
【世話を焼く(せわをやく)】
⇒他人の世話をする。進んで他人の面倒をみる。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「世話を焼く」は「せわをやく」と読みます。意味は「他人の世話をする・進んで他人の面倒をみる」といった行為を表したものです。
例えば、職場においてあなたの面倒をよくみてくれる上司がいたとしましょう。具体的には、仕事を上手くサポートしてくれたり、一緒に飲みに連れて行ってくれたりといったことです。
このような上司は、「部下に世話を焼く人だ」などのように言うことができます。つまり、あれこれと気を配って人の手助けをすることを「世話を焼く」と表現するわけです。
世話を焼く人というのは、相手に対して気遣いができ、なおかつ人情味のある性格です。したがって、基本的には相手から喜ばれる人だと考えて問題ありません。
ただ、世話を焼く行為が行き過ぎると、「自己満足で押しつけがましい」というマイナスの印象を与えてしまうことになります。この場合、頭に「お」をつけて「お節介(おせっかい)」などと言います。
世話を焼くの語源・由来
「世話を焼く」の「焼く」は、「火をつけて燃く」などの物理的に焼く行為を指しているわけではありません。
「焼く」は、ここでは「(心を)焼く・(気を)焼く」などの意味を表しています。つまり、まるで自分の心を燃やすようなほど熱心に相手に気を遣うという意味です。
この意味での「焼く」は他にも使われており、例えば「手を焼く」が挙げられます。「手を焼く」とは「うまく処理できなくて困る。てこずる」という意味の慣用句です。
「世話を焼く」もこれと同様に「相手に対して心を焼くほど面倒をみる」といった意味になります。
なお、「世話を妬く」は誤用なので注意して下さい。「妬く(やく)」は「ねたむ・嫉妬する」などの意味なので、「焼く」とは違う意味の言葉となります。
世話を焼くの類義語
続いて、「世話を焼く」の「類義語」を紹介します。
- 世話をする
- 世話をかく
- 面倒を見る
- ケアをする
- 手をかける
- 手助けする
- サポートする
- 目をかける
- 気を遣う
- 心を遣う
- 心を配る
- 配慮する
- 尽力する
類義語は、相手に対して気を遣ったり、手助けをしたりする行為を表したものとなります。この中でも、「世話をする」と「世話をかく」は、「世話を焼く」とほぼ同じ意味です。両者に関しては、「世話を焼く」の同義語と定義してもよいでしょう。
他には、「面倒を見る」もよく使われる表現です。ただ、「面倒を見る」に関しては、自分よりも立場や身分が下の人の支援をする際に使われます。例えば、「兄が弟の面倒を見る」「上司が部下の面倒を見る」といった使い方です。
「世話を焼く」も似たような使い方ができますが、こちらは上下関係を意識しなくても使うことのできる慣用句です。必ずしも下の人の世話をする時に使わなければいけないわけではありません。
世話を焼くの対義語
「世話を焼く」の「対義語」は、以下の通りです。
- 面倒を見ない
- 世話をしない
- 手助けしない
- 目をかけない
- ケアをしない
- 気を遣わない
- 心を配らない
- 配慮しない
- 興味を持たない
- 関心を持たない
いずれも後ろに「~ない」を付けた表現となっていることが分かるかと思います。対義語に関しては、このように類義語を否定した表現が主なものとなります。別の言い方をすれば、明確な反対語と呼べるような言葉は存在しないということです。
世話を焼くの英語訳
「世話を焼く」は、英語だと次のように言います。
①「take care of~」(~の世話をする)
②「meddle in~」(~に余計な世話をする)
①は良い意味で相手の世話をするような時に用いられる表現です。対して、②の方は相手から疎まれるような世話をしてしまった際に用いられる表現です。例文だと、次のようになります。
He takes good care of his little brother.(彼はよく弟の世話を焼く。)
She don’t want you to meddle in your affairs.(彼女はあなたから世話を焼かれるのを嫌がっている。)
その他、簡易的な表現だと次のような言い方も可能です。
Mind your own business!(余計な世話を焼くな!)
Do not meddle in others’ affairs!(要らぬ世話を焼くな!)
世話を焼くの使い方・例文
最後に、「世話を焼く」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 彼は長男だったので、幼い頃から妹の世話を焼くのは当たり前であった。
- 祖母は孫たちの世話を焼くのが非常に好きで、いつも一緒になって遊んでくれます。
- 母親が自分の子供の世話を焼きたがるのは、ある意味で当然とも言えるだろう。
- 彼女は困っている人を放っておけない性格なので、あなたの世話を焼いている。
- たとえ自分のかわいい弟子であっても、世話を焼きすぎるのは師匠としてよくない。
- 部長があそこまで彼女の世話を焼くのは、何か別の心理があるのかもしれないね。
世話を焼く人の心理としては、男性・女性ともにポジティブな用例がほとんどです。大抵の場合、「困っている人を放っておけない優しい人」「情が深くて人間味がある人」などを対象とします。
ただ、場合によっては「おせっかいな人」「支配欲が強い人」などを対象とすることもあります。特に、職場において上司が男性、部下が女性である場合にこのケースが当てはまります。
世話を焼くのは原則よいことですが、世話を焼きすぎるのはよいことではありません。相手から嫌がられない程度に気を遣うのが、人間関係においては望ましいと言えます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「世話を焼く」=他人の世話をする・進んで他人の面倒をみる。
「語源・由来」=「(心や気を)焼くほど、熱心に相手に気を遣う」という意から。
「類義語」=「世話をする・世話をかく・面倒を見る・手助けする・サポートする・気を遣う・心を配る」など。
「英語訳」=「take care of~」(~の世話をする)「meddle in~」(~に余計な世話をする)
「世話を焼く」は、ビジネスシーンでも使える便利な慣用句です。ただ、必ずしもこの表現を使わなければいけないわけではありません。「世話をする」「世話をかく」など他の表現での言い換えも可能なため、状況に応じて使い分けるようにしてください。