「テンダネス」という言葉をご存知でしょうか?
音楽の歌詞などにおいて登場する語で、場合によっては医療の用語として使われることもあります。この「テンダネス」ですが、具体的にどのように使うのかイメージしにくいと感じる人も多いです。
そこで本記事では、「テンダネス」の意味や語源、使い方などをなるべく分かりやすく解説しました。
テンダネスの意味
「テンダネス」とは「優しさ・柔らかさ・敏感さ」などの意味を持つ語です。この中でも特に、「優しさ」という意味で使われることが多いです。
一言で「優しさ」と言っても様々な種類がありますが、「テンダネス」の場合は「気遣いのある優しさ」のことを指しています。
例えば、エレベーターを降りる際にドアを開け、中の人を先に通してあげる行為などは気遣いのある優しさです。また、大勢で食事をしている際に他の人へ食事を取り分けてあげる行為なども気遣いのある優しさです。
他には、飲み会の途中で帰るタイミングを切り出しにくい人のために、「そろそろ一次会はお開きにしましょうか?」などと帰宅する機会を作ってあげることも気遣いのある優しさだと言えます。
このように、相手や周囲の人を気遣う、さりげない優しさのことを「テンダネス」と言うわけです。周囲の人からみて、「あの人は気遣いができるな~」と感じる様子であれば、それは「テンダネス」ということになります。
テンダネスの英語訳
「テンダネス」は、英語だと「tenderness」と表記します。現在使われている「テンダネス」は、この「tenderness」をカタカナ表記にしたものです。
「tenderness」は「tender」を語源とする名詞で、「tender」とは「柔らかい・弱い・か弱い・壊れやすい・虚弱な」などの意味を持つ形容詞です。
この「tender」は、元々ラテン語の「tener(繊細な・壊れやすい)から来た言葉で、「tender」に対して「状態や性質」を表す「ness」が付けられ「tenderness」という語が生まれました。
つまり、元々は「壊れやすく、弱い」という意味を持つ語から作られたのが「tenderness」ということになります。
「壊れやすい」ということは、裏を返せばやさしく接しなければいけません。この事から、次第に「優しさ」という意味に派生していった語が「テンダネス」なのです。
なお、「tenderness」は、英文だと次のような使い方をします。
Thank you for your tenderness.(あなたの優しさには感謝しています。)
His tenderness is respected by those around him.(彼の優しさは周囲の人から尊敬されている。)
She seems to have felt his tenderness.(彼女は彼のやさしさを感じていたようだ。)
医学用語としての意味
「テンダネス」は、医療用語として使われることもあります。医療用語として使う場合は「圧痛(あっつう)」という意味になります。
「圧痛」とは「指などで身体の一部を圧迫した際に生じる、強い痛み・違和感」のことです。
主に医者が患者の体を触診する際に使われるもので、指で押すことにより、その付近の臓器などに異変がないかを調べます。
この時に実際に強く痛みが出た点を「圧痛点」と呼びます。例えば、胃の近辺に圧痛点があるとするならば、何らかの異常が胃にある可能性が考えられるというわけです。
病気の兆候を表すものは様々ですが、特定の部位に圧痛点が生じる疾病も存在するため、テンダネス(圧痛)は、医療において診断要素の一つとなっています。
こちらも英語の使い方を紹介しておきます。
He confirmed the point of tenderness.(彼は圧痛点を確認した。)
The doctor examined for tenderness in the abdomen.(その医者は腹部の圧痛がないか調べた。)
「圧痛点」は英語だと「point of tenderness」や「tender point」などと言います。
また、後者の「in the abdomen」は「腹部の」という意味です。前に「tenderness」を付けることで、「腹部における圧痛」と訳すことができます。
テンダネスとカインドネスの違い
「テンダネス」と似たような語で「カインドネス」があります。
「カインドネス」は英語の「kindness」をカタカナ表記にしたもので、「優しさ・親切・親切な行為」などの意味を持ちます。
「テンダネス」も「カインドネス」も「優しさ」という点では共通しています。ただ、「カインドネス」の場合は困っている人を助けたりするような際に使われる言葉です。
例えば、道が分からなくて困っている人に丁寧に道を教えてあげたり、重い荷物を運べずに困っている人の手伝いをするような行為は「カインドネス」です。
また、災害などで被害を受けた地域に対して、ボランティア活動をしたり寄付をしたりすることも「カインドネス」に含まれます。
一方で、「テンダネス」の方は「カインドネス」のような表立った親切さというよりは、さりげない優しさ、そっと支えてあげるような優しさに対して使います。
なお、山口百恵の歌である『さよならの向こう側』では、歌詞の中にどちらの言葉も登場しています。
- Thank you for your kindness.
- Thank you for your tenderness.
この場合は、前者は「あなたの(親切な)やさしさにありがとう」、後者は「あなたの(気遣う)優しさにありがとう」というニュアンスで考えればよろしいかと思われます。
テンダネスの使い方・例文
最後に、「テンダネス」の使い方を例文で紹介しておきます。
- あなたのテンダネスには、本当に感謝しています。
- 食事を取り分ける彼女の行為からは、テンダネスを感じました。
- ドアを開け、先に女性を通す彼は、テンダネスを意識しているに違いない。
- 人間関係においてはカインドネスだけでなく、テンダネスも必要だろう。
- ビジネスで共同作業をする際は、テンダネスを意識することが非常に重要です。
- この高級枕はテンダネスを感じるようなふわふわとした素材でできています。
- 腰の下付近を強く押すと、何とも言えないテンダネスを感じることに気づいた。
「テンダネス」を文章で使う際は、上記のように「気遣いのある優しさ」を表すような場面で使うのが基本です。「柔らかさ」や「敏感さ」、「圧痛」などの意味で使うこともできますが、実際にはこれらの用例はそこまで多いものではありません。
その他には、音楽のタイトルや歌詞の一部として用いられることもあります。
- 「テンダネス」高橋真梨子
- 「テンダネス」水谷豊の歌
- 「テンダネスを抱きしめて」サーカスの歌
- 「からくりだらけのテンダネス」Sexy Zone
音楽の世界では、英語やカタカナが使われることがよくあります。この場合も同じく、「気遣いのある優しさ」「繊細な優しさ」「包み込むような優しさ」などと訳せば問題ありません。
まとめ
以上、今回は「テンダネス」について解説しました。
「テンダネス」=優しさ・柔らかさ・敏感さ。英語だと「tenderness」。
「医療での意味」=圧痛。指などで身体の一部を圧迫した際に生じる強い痛み。
「カインドネスとの違い」⇒「テンダネス」は相手や周囲の人を気遣う優しさを指し、「カインドネス」は同じ優しさでも、困っているような人を助けるような親切さを表す。
「テンダネス」は見慣れない言葉ですが、現在では使われる機会も多いです。本記事によりぜひ正しい使い方を理解して頂ければと思います。