「頒布」という言葉は、主にビジネスシーンにおいて使われています。「頒布する」「頒布会」などのような使い方が一般的です。
ただ、似たような言葉で「販売」や「配布」が使われることもあります。そこで本記事では、これらの言葉の違いについて詳しく解説しました。
頒布の意味・読み方
最初に、「頒布」の意味を辞書で引いてみます。
【頒布(はんぷ)】
⇒品物や資料などを、広く配ること。「希望者に無料で頒布する」「銘酒の頒布会」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「頒布」は「はんぷ」と読みます。意味は「品物や資料などを広く配ること」です。
「頒布」は不特定多数の人へ広く物品を配ることを意味します。そして、有料・無料を問わず配るという点がポイントです。
つまり、お金を取り有料として配る場合もあれば、逆にお金を取らずに無料で配る場合もあるということです。
例えば、「頒布会」と呼ばれる会では、実際に会費を払っている会員に向けて、商品や刊行物などを定期的に配っています。このような行為は、お金を取り有料で物品を配ることなので「頒布」と言います。
一方で、何かのイベントにおいて参加者に無料で品物や資料などを配るようなこともあります。こういった場面においても、無料で物品を配る行為なので「頒布」ということになります。
「頒布」の「頒」は、「分け与える・配る」という意味です。そして、「布」は「布教・布告・公布」などの熟語があるように「広く行き渡らせる」という意味があります。
したがって、広く行き渡らせるように何かを配ることを「頒布」と言うのです。
販売の意味・読み方
次に、「販売」の意味です。
【販売(はんばい)】
⇒商品を売ること。「輸入雑貨を販売する」「通信販売」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「販売」とは「商品を売ること」を意味します。
「販売」は文字通り何かを売ることなので、その対価として必ずお金をもらいます。言い換えれば、「有料で相手に物を提供する」ということです。
身近な例で言うと、スーパーにある食品や雑貨などをお客さんに売る行為は「販売」です。また、家や土地などの不動産を売る行為なども「販売」に当てはまります。
このように、営利目的で特定の相手に対して行われる行為が「販売」ということになります。
逆に、無料で相手に物品を渡したりするような際は、「販売」とは言いません。この場合は単に「渡す」「あげる」などと言います。
「販売」はあくまで、商売上必要な利益を獲得するために行われるのです。
配布の意味・読み方
最後に、「配布」の意味です。
【配布(はいふ)】
⇒配って広く行き渡らせること。「駅前でちらしを配布する」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「配布」とは「配って広く行き渡らせること」を表します。
「配布」は「無料で配る」ということが重要なポイントです。つまり、お金などをとらずにタダで相手に渡すということです。
例えば、駅前でティッシュを通行人に渡す行為などは「配布」です。また、チラシを不特定多数の人へ渡す行為なども「配布」です。
その他、学校の生徒全員に教科書を渡したり、会社の従業員全員に資料を渡すことなども「配布」と言います。
このように、無料で物品を配り広く行き渡らせることを「配布」と呼ぶのです。
実際には、「有料配布」などの言葉もありますが、「配布」は基本的に無料で行き渡らせることを指します。お金をとって物を配ることは一般に「配布」とは言いません。
頒布・販売・配布の違い
ここまでの内容を整理すると、
「頒布」=有料・無料を問わず、不特定多数へ物品を配ること。
「販売」=有料で特定の者へ物品などを売ること。
「配布」=無料で不特定多数へ物品を配ること。
ということでした。
まず、「頒布」と「販売」の大きな違いは「有料か無料か?」という点が挙げられます。
「頒布」は、有料、無料どちらの場合も使える言葉です。対して、「販売」の場合は有料の場合にしか使えない言葉となります。
ただ、実際には「頒布」は無料よりも有料の物に対して使うことの方が多いです。そのため、「頒布」と「販売」は「有料」、「配布」は「無料」と区分けしても構いません。
では同じ有料にも関わらず、なぜ「頒布」を使うケースがあるのかと言いますと、それは両者の扱う商品に関係しています。世の中には、商売であることを前面的に出しにくい商品というのも存在します。
例えば、神社のお守りやお札といったものは神様に関係するものなので、「売り・買い」といった言葉は使いにくいです。そこでこのような商品を有料で渡すような場合は、「販売」ではなく「頒布」を使うわけです。
似たようなケースとしては、同人活動の一巻である「コミケ(コミックマーケットの略)」などにおいても当てはまります。コミケでは、同人誌などの二次創作の作品を有償・無償問わず相手に譲渡するような場合があります。
このような作品は、著作権の関係上、第三者に対して販売するようなことはできません。そのため、「販売」ではなく「頒布」を使うということです。
そして、「頒布」と「配布」の違いですが、どちらも「不特定多数へ物品を渡す」という意味は共通しています。
しかし、先述したように「頒布」は主に有料の物を渡す際に使われるのに対し、「配布」は主に無料の物を渡す際に使われるという違いがあります。
その他、「頒布」は「頒布会」などのイベント名として使われることもありますが、「配布」は「配布会」などの名称で用いられるようなことはありません。この点も両者の違いだと言えます。
使い方・例文
最後に、それぞれの使い方を具体的な例文で紹介しておきます。
【頒布の使い方】
- 事前に予約した者に限り、特定の品を頒布する予定です。
- 頒布会では、入会特典として毎月定期的に本が頒布される。
- 全巻購入の特典として、希望者には特典の品が頒布された。
- 全国の神社では、お神札やお守りなどを来訪者に頒布している。
- 10名限定のプレミアムグッズが頒布されるというイベントに参加した。
- 今回のコミケでは、人気のキャラクターグッズが頒布されるようだ。
【販売の使い方】
- 彼は家電製品を販売する仕事に就いている。
- チケットの販売は、来月から始まるようです。
- 販売価格を下げられるかどうか値下げ交渉をした。
- 訪問販売の営業マンがこんな時間に来たようだ。
- バットやグローブなどの野球道具をセットで販売する。
【配布の使い方】
- マンションの住人に対して、折り込みチラシを配布する。
- ポケットティッシュを配布するアルバイトに応募する。
- 全国で同じ内容の教科書が配布されることとなった。
- 従業員に今月のスケジュールが入った資料を配布した。
- あらかじめ配布エリアを決めてから、ポスティングを行う。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「頒布」=有料・無料を問わず、品物や資料などを広く配ること。
「販売」=特定の相手に商品を売ること。(有料)
「配布」=無料の品を配り、広く行き渡らせること。
「頒布」は商売であることを全面的に出しにくい品に対して使われます。対して、「販売」は営利目的・利益目的の品を売る際に使われます。「配布」に関しては、チラシやティッシュ、教科書などを無料で広く行き渡せる際に使う言葉です。それぞれの違いを理解して上で、実際に使用して頂ければと思います。