表情に乏しい 意味 例文 水の東西 使い方 類語 英語

「表情に乏しい」という言葉をご存知でしょうか?

『水の東西』という国語の評論文で登場する表現でもあります。単に人間の表情に使われる言葉だと思われがちですが、実はそうではありません。

本記事では、「表情に乏しい」の意味や短文、類義語、対義語などを詳しく解説しました。

表情に乏しいの意味・読み方

 

表情に乏しい」は「ひょうじょうにとぼしい」と読みます。意味は「表情が十分ではない・人間味が薄い・感情が薄い」などの様子を表したものです。

「表情」とは「人の感情が表れたときの顔つき」、「乏しい」とは「欠乏」「貧乏」などの熟語があるように「十分でないさま・足りないさま」を意味します。したがって、人の感情が薄い様子を表す時に「表情に乏しい」を使うことになります。

例えば、誕生日プレゼントをあげても反応が薄い人などは「表情に乏しい」と言います。また、スポーツの試合で勝ってもあまり感情を表に出さないような人も「表情に乏しい」と言います。

なお、「表情」という言葉は、単に「状況・様子」を表す意味として使われることもあります。

【例】⇒被災地の表情。全国各地の週末の表情。など。

このように、「人」以外にも使われる言葉が「表情」ということです。

『水の東西』での意味・用例

表情に乏しい 水の東西

「表情に乏しい」は、『水の東西』という評論文に出てきます。以下、実際の引用部分です。

伝統は恐ろしいもので現代の都会でも、日本の噴水はやはり西洋のものほど美しくない。そのせいか東京でも大阪でも、町の広場はどことなく間が抜けて、表情に乏しいのである。

出典:山崎正和『水の東西』

ここでの「表情に乏しい」は、「個性や華やかさが感じられない」という意味で使われています。町の広場の様子を人の表情に例えた表現です。

その前の文で「伝統は恐ろしいもので現代の都会でも、日本の噴水はやはり西洋のものほど美しくない。」と書かれています。これは、噴水という伝統を持たない日本人が、西洋の噴水を形だけまねて作っても美しくないという意味です。

そして、東京や大阪の街の広場はどことなく「間が抜けて」とあります。「間が抜ける」とは「大事なことが抜け落ちている」という意味です。つまり、「本来中心となるべき噴水が貧弱なため、もの足りない」ということです。

日本人が形だけをまねて噴水を作ったとしても、その広場自体はありきたりで個性や華やかさは感じられません。また、噴水自体も貧弱であるため、のっぺりとした感じを見る者に与えてしまいます。

そのため、町の広場の貧弱な様子を人の表情にたとえて、ここでは「表情に乏しい」が使われているのです。

『水の東西』では、終始、「日本における水」と「西洋における水」が対比して語られています。

日本における水を象徴するものが「ししおどし」です。「ししおどし」とは、流水を竹筒に導き、音が出るようにしたもので、水力により自動的に音響を発生する装置を表します。

対して、西洋における水を象徴するものが「噴水」です。「噴水」は、現在でも公園などに設置されていますが、その歴史は「ししおどし」よりも新しく、近代以降になってから日本に入ってきたものです。

つまり、西洋由来の噴水は私たち日本人にとって、個性や華やかさがないだけでなく、伝統的になじみが薄いものということです。

表情に乏しいの類義語

 

「表情に乏しい」の類義語は次の通りです。

  • 無表情の
  • 感情のない
  • 無愛想な
  • 仏頂面な
  • 平然とした
  • 親しみのない
  • 人間味のない
  • 喜怒哀楽のない
  • 表情が冷たい

類義語は、表情や感情などが薄い様子もしくはそれらがない様子を表した言葉となります。この中では「無表情の」などは比較的近い意味です。

その他、「ポーカーフェイス」なども類義語に含まれます。「ポーカーフェイス」とは「表情を変えないこと」を意味し、ポーカーをする際に手札を悟られまいと無表情を装う様子からできた外来語です。

いずれも悪い意味として使うものばかりですが、「ポーカーフェイス」だけは良い意味として使います。

表情に乏しいの対義語

 

逆に、対義語としては以下の言葉が挙げられます。

  • 表情豊かな
  • 親しみのある
  • 人間味のある
  • 情味のある
  • 愛想のある
  • 表情が明るい
  • 喜怒哀楽が激しい

反対語の場合は、表情豊かな様子や人間味の溢れる様子を表した言葉となります。こちらは基本的に良い意味として使われるのが特徴です。

表情に乏しいの英語訳

 

「表情に乏しい」は、英語だと次のように言います。

poker-faced」(無表情の・ポーカーフェイスな)

stone-faced」(無表情の・感情を表に出さない)

「poker-faced」は、先述したようにポーカーというカードゲームを由来とするものです。無表情な人を表す表現として一般に使うことができます。

また、「stone-faced」は直訳すると「石の顔つき」という意味で、「感情を表に出さない冷たい様子」を表します。こちらも無表情な様子を表す単語として使うことが可能です。

例文だと、それぞれ次のような言い方です。

He is a poker faced guy.(彼はポーカーフェイスな男である。)

She interviewed a stone-faced actor.(彼女は無表情な俳優へインタビューをした。)

表情に乏しいの使い方・例文

 

最後に、「表情に乏しい」の使い方を例文で紹介しておきます。

  1. 彼は表情に乏しいので、周りの人間からは誤解される傾向にある。
  2. 彼女は表情に乏しいタイプだから女優には向いていないと思うよ。
  3. あまりに表情に乏しい子供なので、何を考えているのか分からない。
  4. 表情に乏しい人は、まず笑顔の練習から始めるのがよいだろう。
  5. 面接官から表情に乏しいと言われたので、改善するつもりです。
  6. この辺の地域は、西洋の建築ばかりで表情に乏しい風景ばかりだ。

 

「表情に乏しい」は、基本的に人の表情に対して使われる表現です。『水の東西』のように風景に対して使われることは比較的少ないです。

ただ、悪い意味として使われるという点は共通しています。「表情に乏しい」ことにより、「周りから誤解される」「何を考えているか分からない」「親しみがない」といった負の意味を表すような時にこの言葉は使われます。

なお、別の言い方だと「表情が乏しい」と表記することもあります。どちらも意味自体は同じと考えて問題ありません。

まとめ

 

以上、本記事のまとめです。

表情に乏しい」=表情が十分ではない・人間味が薄い・感情が薄い

水の東西での意味」=個性や華やかさが感じられない。

類義語」=「 無表情の・感情のない・親しみのない・人間味のない・喜怒哀楽のない」など。

対義語」=「表情豊かな・親しみのある・人間味のある・表情が明るい・喜怒哀楽が激しい」など。

英語訳」=「poker-faced」「stone-faced」

「表情に乏しい」は、複数の意味を持った表現です。評論文などでは、また違った意味として使われることがあります。これを機にぜひ正しい意味を覚えて頂ければと思います。