「腕前」という言葉は、「料理の腕前」「ゴルフの腕前」などのように普段からよく使われています。
この腕前ですが、よく使われているにも関わらず具体的な使い方が分かりにくいです。
そこで本記事では、「腕前」の意味や語源、例文、類義語などを含め詳しく解説しました。
腕前の意味・読み方
まず、「腕前」の意味を辞書で引いてみます。
【腕前(うでまえ)】
⇒巧みに物事をなしうる能力や技術。手並み。技量。うで。「洋裁の腕前が上がる」「腕前を披露する」
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「腕前」は「うでまえ」と読みます。意味は、「物事を巧みになしうる能力や技術・技量」のことです。
「巧(たく)みに」とは、手際よく上手に行うさまを表します。よって、物事を手際よく上手に行う能力のことを「腕前」と呼ぶことになります。
例えば、「料理の腕前がある人」であれば、「おいしい料理を手際よく上手に作れる人」といった意味になります。具体的な人物で言うと、一流の和食料理人や、三ツ星のシェフといったイメージです。
また、「ゲームの腕前がある人」であれば、「時間内にゲームを上手にクリアできる人」といった意味になります。普通の人なら何十時間もかかる難しいゲームであっても、数時間で簡単にクリアしてしまうような人です。
つまり、「腕前」とはその人自身が身に着けた能力や技術を表した言葉ということになります。
ここで言う能力や技術というのは、持って生まれた才能や先天的に備わっている素質というわけではありません。あくまで、その人が生まれた後で、努力によって身に着けた後天的なものを指します。
腕前の語源・由来
「腕前」の「腕」という字は、人の肩から手首までの部分のことです。
ただ、ここでの「腕」は物理的な人の部位を指しているのではなく、「物事をする能力や技量」という意味で使われています。
昔から、人は「腕」を使い様々な作業を行ってきました。この事から、「大工の腕がいい」「腕の見せ所」などのように「腕」自体で「技術」を指す言葉として使われてきたのです。
そして、「前」は「物理的な前・空間的な前」という意味ではなく、「強調」としての意味で使われています。
「前」という字は「男前」「一人前」などの語があるように、前の名詞を強調する働きがあります。この事から、「腕(技術)」を強調する役目として使われている語が「前」なのです。
つまり、通常であれば「腕」だけでも通用する所を、前を付けることで強調した言葉が「腕前」ということになります。
腕前が上がると腕前を上げるの違い
「腕前」が向上することを、「腕前が上がる」「腕前を上げる」などと言ったりします。この場合、どちらが正しい表現なのか迷うという人も多いと思われます。
結論としてはどちらも正しいです。すなわち、どちらも実際に使用できる表現ということになります。
両者の違いとしては「上がる」は自動詞ですが、「上げる」は他動詞という点が挙げられます。
したがって、「腕前が上がる」だと「能力や技術が向上する」といった意味になります。一方で、「腕前を上げる」だと「能力や技術を向上させる」といった意味になります。
似たような例文で比較しますと、
- ゴルフの腕前が上がるようになった。
- ゴルフの腕前を上げるつもりです。
前者は、誰かに教わったり自分で努力したりすることによりゴルフの能力が向上するという意味です。そして、後者は今は身に着いていないけども、これからの努力によりゴルフの能力を上げていくといった意味になります。
それぞれの場面に応じて、両者を使い分けるようにして下さい。
腕前の類義語・対義語
「腕前」は、次のような「類義語」で言い換えることができます。
- 【腕】⇒物事を行う能力。技術や技量。
- 【手腕】⇒物事をうまく処理していく能力。
- 【技術】⇒物事を処理する際の方法や手段。技。
- 【技量】⇒ある物事を行う能力や腕前。手並み。
- 【能力】⇒物事を成し遂げることのできる力。
- 【力量】⇒物事を成し遂げる力の程度。能力の大きさ。
- 【才能】⇒生まれつき備え持っている能力や技量。
- 【スキル】⇒訓練によって得られる特殊な技術。技量。手腕。
どれも似たような意味の語ですが、全く同じ意味の言葉(同義語)というのはありません。
例えば、一番最初の「腕」は、強調する意味の「前」が付いていないので、「腕前」よりは言葉としての意味が弱いものです。
また、「手腕」は「腕前」とほぼ同じ意味ですが、「手腕を発揮する」「政治的手腕」のように、使い方がビジネスや政治などの改まった場面に限定されます。「腕前」は、「料理」や「ゴルフ」など幅広い対象に使うことができます。
「技術」や「技量」、「能力」「力量」といった言葉は、「巧みに行う」という意味までは含まれていません。
「才能」はその人が先天的に持っているものです。「スキル」に関しては仕事の技術や技量に対してしか基本的には使いません。
なお、「腕前」の「対義語」と呼べるものはありません。これは技術や技量、能力などの反対語がないのと同じ理由からです。
「腕前」という単語自体には良い・悪いの意味はなく、「腕前が良い」「腕前が悪い」などのように表現されます。この言葉には、「上手」「下手」などの意味は含まれていません。よって、「対義語」は存在しないということになります。
腕前の英語訳
「腕前」は、英語だと「skill」と言います。
「skill」は「技術・技能・技量・手腕」など複数の意味があり、「腕前」の意味も含んでいます。したがって、人の巧みな技術に言及したりするシーンで使うことが可能です。
例文だと、次のような言い方となります。
He is a great skill.(彼は大した腕前だ。)
You haven’t shown enough skill yet.(あなたはまだ十分に腕前を発揮していない。)
She showed her skill as a negotiator.(彼女は交渉人として腕前を発揮した。)
その他、「ability」を使う方法もあります。
This job will not be possible with your ability.(あなたの腕前ではこの仕事は無理だろう。)
「ability」だとニュアンス的に「能力」や「力量」といった意味になりますが、こちらも同じような意味として使うことが可能です。
腕前の使い方・例文
最後に、「腕前」の使い方を例文で紹介しておきます。
- あいつのサーフィンの腕前は大したものだ。感心するよ。
- 彼女は最近になり、料理の腕前を自慢するようになった。
- 以前は下手だった彼も、ゴルフの腕前を上げるようになった。
- 経験豊富な医者なので、手術の際にはすぐれた腕前を見せた。
- きつい練習のかいもあり、日々腕前が上がるのを実感しています。
- 明日はマジシャンとして、お客さんに腕前を披露するつもりです。
- 彼女のピアノの腕前は相当高く、プロにも匹敵するレベルと聞いています。
「腕前」という言葉は、その人の特技や趣味など様々な対象に使うことができます。人を感心させるような技術であれば、それは「腕前が高い人」「腕前のあるすごい人」ということになります。
使い方としては、先述した「腕前が上がる」「腕前を上げる」以外だと、「腕前を披露する」「腕前を自慢する」などが多いです。
ただ、「腕前を磨く」「腕前を発揮する」などとは通常は言いません。この場合は、「腕を磨く」「手腕を発揮する」のように用います。
まとめ
以上、本記事のまとめとなります。
「腕前の意味」=物事を巧みになしうる能力や技術・技量。
「語源・由来」=「腕」は「物事をする能力や技量」、「前」は「強調」の意味を表す。
「類義語」=「腕・手腕・技術・技量・能力・力量・才能・スキル」
「英語訳」=「skill」「ability」
「腕前」とは物事をうまく行う能力や技術のことです。生まれつき備わっているものではなく、後天的にその人が身に着けたものを指します。普段の生活やビジネスなどで身に着けた技術があれば、ぜひこの言葉を使ってみて下さい。