「フロントマン」という言葉をご存知でしょうか?
バンドのメンバーやマンション、ホテルなどで働く人を対象とする言葉です。主にビジネスで使われる言葉ですが、複数の意味があるため分かりにくく感じる人も多いと思われます。
そこで本記事では、「フロントマン」の意味や使い方、類語、反対語などを詳しく解説しました。
フロントマンの意味
「フロントマン」とは「集団や組織の中で先頭に立ち、表立った活動をする人のこと」を指します。
「フロント」とは「前」、「マン」とは「男」という意味です。したがって、「フロントマン」を直訳すると「前の男・前に立つ男」などの意味になります。
集団や組織で活動するためには、誰かが先頭に立って前に立つことが欠かせません。誰かが先頭に立ち、部外の人とやり取りをすることで、組織が上手く運営されていると言えます。
そのような「先頭者」としての役割を担っている人を「フロントマン」と呼ぶのです。
「フロントマン」は、言わば「グループの顔」です。「フロントマン」の質により、そのグループ全体の印象が変わると言っても過言ではありません。それほど「フロントマン」の役割や任務は重要ということになります。
フロントマンの英語訳
「フロントマン」は、英語だと「frontman」と表記します。
「front」は英語だと「前・前面・表・正面・第一線・第一面」など複数の意味がありますが、ここでは「前」という意味で使われています。そして、「man」は「男・男性」などの意味です。
この事から、「前に立つ男性」を表す言葉として、カタカナで「フロントマン」と呼んでいるということです。
なお、女性のことは「フロントマン」とは通常言いません。理由は簡単で、「マン」は「男」を表す単語であり「女」ではないからです。
仮に女性に対して使うとなると、「フロントウーマン(frontman)」となりますが、英語圏ではこのような単語は存在しません。ただ、和製英語としての「フロントウーマン」が使われる場合はあります。
「和製英語」とは、日本で日本人により作られた英語に似ている言葉のことです。ほとんどカタカナで表記され、元々の英語の単語をつなぎ合わせたり、変形させたりして作られるものが多いです。
英語圏では、和製英語は理解されずに別物と解釈される可能性があります。したがって、いずれにせよ「フロントウーマン」は原則使わない方がよいということになります。
フロントマンの使い方
「フロントマン」は、主に次の3つの職業において使われます。
ホテルのフロントマン
「ホテルのフロントマン」とは「ホテルのフロントに立ち、接客を提供する人」のことです。
ホテルに入ると、まずロビーの正面に「フロントデスク」があります。そこで接客業務をする人のことを「フロントマン」と言うのです。
「フロントマン」の主な仕事内容としては、お客様の案内、電話応対、予約管理、会計業務などが挙げられます。訪問客にとっては、ホテルに入って最初に会話をする相手ですので、「フロントマン」の役割は非常に重要です。
「フロントマン」の応対次第で、そのホテルのイメージが決まると言っても過言ではありません。
そのため、丁寧な言葉遣いで相手に気を利かせたり、急なトラブルにも臨機応変に対応するなど、あらゆるプロフェッショナルな接客スキルが必要とされます。
「ホテルのフロントマン」は、男性、女性ともに採用されているという現状があります。
ただ、先述したように「フロントマン」は男性のみを表す言葉なので、英語では「フロントスタッフ(front staff)」と呼ばれています。
バンドのフロントマン
「バンドのフロントマン」とは「ステージ前部でパフォーマンスをする人」のことです。主に、ボーカルを指すことがほとんどで、ボーカリスト、リードボーカルなどと呼ばれることもあります。
ただし、ボーカルとギターが二枚看板だったりする場合は、ギタリストも含めた両方が「フロントマン」となります。
また、ごくまれなケースですがベースやドラムのことを「フロントマン」と呼ぶこともあるようです。しかし、ベースやドラムなどは音の土台を支える要のパートなので、「リズム隊」と呼ばれることの方が多いです。
大抵の場合は、ステージ前で歌を披露するボーカリストの事を「フロントマン」と呼びます。
バンドにおける「フロントマン」は、当然歌の上手さが要求されます。また、演技力や表現力、アクション技術といったものも要求されます。その他、ライブのMCなどをすることがあるため、トーク力などもあるに越したことはありません。
このように、華やかなイメージのあるフロントマンですが、必ずしもそのバンドのリーダーを務めているとは限りません。
フロントマンは、ボーカリストとして自分の声を楽器として扱っている人達なので、個性が強い場合が多いです。そのため、「まとめる」という役よりは「まとめられる」役の方が多いです。
また、舞台では中央に立つことが多く、常にバンドの顔としての役割が求められます。したがって、それを誰かが支える必要があるため、ボーカル≠リーダーという傾向が一般に強いと言われています。
マンションのフロントマン
「マンションのフロントマン」とは「マンションの管理会社と居住人の間に入り、サポートをする人」のことです。
通常、分譲マンションを購入した人は管理組合に入ります。管理組合とは、マンションの適切な維持管理のために設立された組織のことです。
しかし、マンションの運営には専門的な知識が必要となるため、実際の管理業務のほとんどは購入者が管理会社に委託します。
その際に、委託された管理会社は各マンションごとに担当者である人物を設置します。この時に設置される人物が「フロントマン」ということです。
マンションのフロントマンと聞くと、何となくマンションを掃除する人や1階で受付をしている人などを連想しがちですが、これは誤解です。実際に清掃や受付、巡回などを行う人は「管理人」と呼びます。
「管理人」はパートやアルバイトなどが多く、正社員としての採用は多くありません。一方で、「フロントマン」はマンション全体の運営に関わる責任が業務なため、正社員であることが多いです。
フロントマンの仕事内容としては、デスクワークでの事務処理が中心です。主に理事会や総会の資料作成、管理規約のルール作成、会計プランの立案などといったことを行います。
その他には、建物や設備の維持管理をするために現場へ点検に行くこともありますが、多くは資料の作成が主な仕事となります。
フロントマンの類義語・対義語
「フロントマン」の「類義語」は次の通りです。
- メインボーカル
- リードボーカル
- ミュージシャン
- バンドメンバー
- ギタリスト
- フロントスタッフ
- 受付人
- 管理業務主任者
上記のように、どの業界のフロントマンを指すかによって類義語は異なってきます。
音楽業界であれば、「ボーカル・ギタリスト」などのミュージシャンを指し、ホテル業界であれば、「フロントスタッフ・受付人」などを指します。また、不動産業界であれば「管理業務主任者」は「フロントマン」に近い意味を持っています。
「管理業務主任者」とは国家資格の名称であり、マンション管理業を営む際に設置が義務付けられているものです。フロントマンに就職した場合は、この国家資格の取得を求められることが多いです。
一方で、「フロントマン」の「対義語」と呼べるような言葉は特にありません。しいて挙げるならば、「裏方」「ローディ」などが挙げられます。
「裏方」とは「表に出ずに裏で支える人のこと」です。また、「ローディ」とは「楽器のメンテナンスや管理、ミュージシャンに対するサポートなどを行う人々」のことです。別名、「ロードクルー」「ロードマネージャー」などと呼ばれることもあります。
フロントマンの例文・用例
最後に、「フロントマン」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 彼はバンドのフロントマンとして活動している人物である。
- ボーカルとギターを担当するフロントマンの2名が決定した。
- 来年の春からビジネスホテルのフロントマンとして就職する予定です。
- フロントマンは、お客のチェックイン・チェックアウト業務を行う。
- 管理会社と入居人の仲介役を担っているのがフロントマンである。
- マンションのフロントマンは、理事会や総会の運営サポートなどを行う。
例文のように、「フロントマン」の使い方は場面によって異なってきます。1・2が「バンドのフロントマン」、3・4が「ホテルのフロントマン」、5・6が「マンションのフロントマン」です。
いずれの場合も「表立った活動をする人」という意味では共通しています。しかし、それぞれの業務や役割などは異なるため、場面によって使い分けるようにしてください。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「フロントマン」=集団や組織の中で先頭に立ち、表立った活動をする人のこと。
「ホテルの場合」=ホテルのフロントに立ち、接客を提供する人。
「バンドの場合」=ステージ前部でパフォーマンスをする人。主にボーカル。
「マンションの場合」=マンションの管理会社と居住人の間に入り、サポートをする人。
「フロントマン」は一見すると見慣れない言葉です。しかし、ビジネスの世界ではよく用いられています。これを機に正しい意味を覚えて頂ければと思います。