たばこ タバコ 使い分け 煙草 莨 由来

「たばこ」という言葉は、ひらがなとカタカナのどちらで書くのかといった疑問があります。つまり、「たばこ」と書くのか?それとも「タバコ」と書くのか?ということです。

また、場合によっては「煙草」や「」のように漢字で書くこともあります。本記事ではこれらの疑問を解消すべく、「たばこ」の意味や由来、表記の仕方などを解説しました。

煙草(たばこ)の由来

 

まず、分かりやすくするために便宜上、「Tabako」と表記します。

「Tabako」は元々南アメリカ原産のナス科の植物で、16世紀前半頃の大航海時代を経て南アメリカからスペインに渡りました。

その後、ヨーロッパから世界中に広がり、日本には1600年頃の南蛮貿易を通じて伝わったと言われています。

したがって、「Tabako」という語はまぎれもなく外来語ということになります。

外来語は現代においてはカタカナで書くことが広く行われているため、普通に考えれば「タバコ」と書けば何も問題はないということになります。

ところが、「Tabako」は今から400年以上も前から用いられているため、明治以後(1868年~)に入ってきた数多くの外来語とは異なり、本来の外来語の意識が薄くなっている語だと言えます。

また、「Tabako」がどこの国の言語に由来するかは今のところはっきりしていません。

複数の辞典を確認してみると、スペイン語・ポルトガル語・オランダ語・ハイチ語などの説はあります。

他には、南アメリカ原産なので「アメリカ先住民であるインディアンの言語ではないか?」という説もあります。しかし、スペインでは新大陸以前から薬草類を「tabako」と呼んでいたため、新大陸発見に紐づけた説は信憑性としては薄いです。

このような経緯もあり、日本では古くから「Tabako」のことを当て字による漢字で「煙草」と表記していました。

この当て字も「煙草」以外だと、「烟草」や「莨」をはじめとして「淡婆姑・丹波粉・多葉粉・相思草・南霊草・金糸烟・糸煙」など複数の漢字が当てられていました。

つまり、「Tabako」は通常の外来語よりも起原が古いため、漢字書きが普通であったということです。

煙草・たばこ・タバコの違い

たばこ タバコ 違い

次に、この「煙草」がどのようにして「たばこ」や「タバコ」へと移り変わっていったのかを説明していきます。

明治12年から明治45年までの「Tabako」の広告を見ると、最初の方は「たばこ・煙草・烟草」の3つの表記があります。

しかし、ひらがな表記はこの1回のみで、後は「烟草・莨」などもありますが、「煙草」が圧倒的に多いです。

また、法律では明治29年施行の「葉煙草専売法」がありますが、この法律や条文にも「煙草」を用いています。⇒(第一条政府ハ葉煙草ノ専売権ヲ有ス。)

他には、明治37年に「煙草専売法」が施行となり、「煙草専売局」から「Tabako」が売り出されることになるのですが、ここでも新聞広告では「煙草専売局」と書かれています。

つまり、少なくとも明治時代までは「煙草」がほぼ独占的に使われていたということです。

しかし、明治から昭和に移り、さらに戦後になるとその様相が変わってきます。

1945年以降の戦後は、主に「たばこ」や「タバコ」が使われるようになりました

戦後は新しい制度の下で経済を発展させようということで、「Tabako」の新しい銘柄が次々に登場することとなります。

そして、1958年に日本専売公社が出した広告だと、「今日も元気だ。たばこがうまい。」というキャッチコピーが書かれています。

この時点で、「たばこ」というひらがなの表記が一般的になっていることが分かります。逆に言えば、「煙草」という表記は一般的ではなくなったということです。

これはなぜかと言いますと、戦後の日本は一連の国語施策によりなるべく従来使っていた漢字は使わない方針になったからです。

特に読み方が難しい漢字やそれまで当て字として使っていた漢字などは、避けられるようになりました。そのため、「煙草」という表記は優先的に使われなくなったのです。

「たばこ」か「タバコ」か

たばこ タバコ 使い分け

以上のように、「煙草」という表記は一般にされなくなりました。そのため、「たばこ」か「タバコ」のどちらかを使えば問題ないということになります。

ただ、現在では一般にひらがなである「たばこ」を用いることが多いです。特に、公用文など国が関与する文書においてはこの傾向が強く見られます。

その理由は、教育機関のトップである文部科学省がひらがなで書くことを推奨しているためです。以下、実際に引用した文章となります。

外国の地名・人名および外来語・外国語(当分の間中華民国の場合を除く)は、かたかな書きにする。ガス・ガラス・マッチ等)ただし、外来語でも「かるた」「さらさ」「たばこ」などのように、外来語の意識のうすくなっているものは、ひらがなで書いてもよい。【中略】

次のようなものは、かな書きにする。/たとえば/有難う→ありがとう/…して頂くしていただく…/

なお、つぎのようなものをかな書きにすることはいうまでもない。/たとえば/煙草→たばこ/一寸→ちょっと/昨日→きのう/ただし、音読する場合は漢字で書く。

出典:『公用文の書き方』昭和24・4

外国の地名・人名(中国・挑戦を除く。)および外国語・外来語はかたかなで書く。/ただし、外来語でもその意識のうすくなっているものはひらがなで書く。/たばこ・かるた・さらさ

出典:『文部省刊行物 標記の基準』(昭和25・9)

その使われ始めた歴史が古く、国語に融合しきっていて、国民一般がこれを外来語とはかんじないもの、たとえば、たばこ・かっぱ・きせるなど。

出典:国語審議会報告「外来語の表記」の「まえがき」昭和29・3

要約すると、「外来語であっても外来語の意識が薄く、外来語とは感じにくいものはひらがなで書く」ということです。

「Tabako」という語は、私たち日本人にとって外来語の意識が強いものではありません。多くの人がいつ頃日本に入ってきて広まったかなどは知らず、どこの国の言語かということも知りません。

場合によっては、日本由来の語だと考えている人ですらいます。このような語は、原則としてひらがなで表記するということです。

なお、新聞や雑誌などの報道業界でも「Tabako」そのものは「たばこ」と表記しています。ただ、植物名として用いる場合は「たばこ」ではなく「タバコ」と表記するようにしているようです。

たばこ離れに伴って、国内消費は増えないのに、葉タバコの耕作面積は減らせないし、・・・

出典:A新聞 昭和58・4・19

上記のように、同じ一文の中でも「たばこ」と「タバコ」を使い分けています。

他には、先述した日本専売公社に関しても「たばこ」と表記するようにしています。

5月1日から、たばこの手かが変わります。

出典:日本専売公社新聞広告 昭和58・4・30

以上の事から考えまして、「Tabako」という語はひらがなで「たばこ」と書くのが一般的であるという結論になります。

本記事のまとめ

 

本記事の内容をまとめると、次のようになります。

Tabako」=元は南アメリカ原産の植物を指し、外来語を由来とする。どこの国の言語かは不明。

煙草・たばこ・タバコの違い」=「煙草」は当て字で戦前まで使われていた漢字。「たばこ」と「タバコ」は戦後に使われるようになった漢字。

それぞれの使い分け」=「たばこ」が一般に使われているので、原則としてひらがな表記にする。ただ、植物名として用いる場合は「タバコ」と表記することもある。

「Tabako」は複数の表記があります。漢字で「煙草」と表記するのは「煙の草」と書くので分かりやすいです。しかし、この表記は当て字なので本来の言葉の使い方とは言えません。

一方で、「たばこ」とひらがなで表記すると、簡潔かつ柔らかい印象を与えることができるので使いやすいです。そのため、基本的には「たばこ」と書くことをおすすめします。

「タバコ」に関しては外来語のなじみが薄い日本ではあまり使われていない表記です。カタカナ表記にするのは、植物としての「Tabako」を指すような限定的な使い方にするのが賢明です。