「胸」を使った慣用句はいくつかあります。
中でも「胸をつかれる」という表現は特によく聞きます。この「胸をつかれる」ですが、具体的にどのような感情を指すのでしょうか?
本記事では、「胸をつかれる」の意味や例文、類語、関連語句などを詳しく解説しました。
胸をつかれるの意味
最初に、この言葉の意味を辞書で引いてみます。
【胸を衝く(むねをつく)】
①心に衝撃を与える。ショックを受ける。「たわいのない冗談が―・く」
②さまざまな思いがつのる。「前途への不安が―・く」
[補説]「胸をつつく」とするのは誤り。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「胸をつかれる」は、辞書だと「胸を衝(つ)く」と表記されています。
すなわち、一般に使われている「胸をつかれる」は「胸をつく」の受け身の形ということになります。「つく」は漢字だと「突く」「衝く」の二つの表記がありどちらも使うことが可能です。
「胸をつかれる」の意味は二つあり、一つ目は、「心に衝撃やショックを受ける」ということです。この場合は、何気ない一言や何気ないシーンによって衝撃を受けたときに使われます。
例えば、幼い子供が発した言葉にはっと気づかされた時、あるいは偶然見ていた映画の一シーンで心が動かされた時などが当てはまります。他には、小説や漫画などを読んでいて、ハッとした時やショックを受けた時なども「胸をつかれた」と言うことができます。
そして二つ目は、「様々な思いがつのる」という意味です。この意味の場合は、喜びや不安、希望、絶望など様々な感情が複雑に入り混じるような時に使われます。
例えば、入学式や卒業式などの前日は、悲しみや不安、喜びなど様々な感情が含まれています。また、新しい環境へ引っ越すようなときもたくさんの感情が入り混じり心の中で思いがつのってきます。
このような心の状態に陥ることを、「胸をつかれる」と言うわけです。
なお、辞書の説明にはありませんが、「胸をつく」には「坂道などの勾配が急である」という意味もあります。
文字通り、胸を突かれて苦しくなるほど坂道が急であるという意味です。この意味で使われることは少ないですが、念のため頭の中に入れておくとよいでしょう。
胸をつかれるの類義語
次に、「胸をつかれる」の類義語を紹介します。
- 心に響く
- 痛感する
- 心を打たれる
- 胸を打たれる
- 胸に突き刺さる
- 胸が一杯になる
- 動揺させられる
- はっと驚かされる
- 魂を揺さぶられる
- 衝撃を受ける
- 感銘を受ける
- 電流を受ける
- ガツンとやられる
「胸を突く」という慣用句は、様々な表現で言い換えることが可能です。
ただ、どの類義語も「衝撃を受けたりショックを受けたりする」という意味では共通しています。今まで気づかなった事に気づかされ、不意に心を揺さぶられたときに使うことができる言葉です。
その他、「思いがつのる」という意味だと、「感情が入り混じる」「思いが高まる」「思いが増す」などの表現も類義語に含まれます。
逆に、対義語としては「暖簾に腕押し」「馬の耳に念仏」などが挙げられます。
「暖簾に腕押し(のれんにうでおし)」とは「手ごたえや反応が一つもないこと」、「馬の耳に念仏(うまのみみにねんぶつ)」とは「いくら話しかけても意味がないこと」です。衝撃やショックなどを受けず、反応がない様子を表す言葉が反対語となります。
胸をつかれるの英語訳
「胸を突かれる」は、英語だと次のように言います。
「be shocked」
「be surprised」
「shock」は「~に衝撃を与える」、「surprise」は「~を驚かせる」という意味です。それぞれの前にbe動詞を付けて受け身の形にすることで、「胸を突かれる」という訳にすることができます。
例文だと、それぞれ以下のような言い方です。
I was shocked by the casual words of the girl.(私は少女の何気ない一言に衝撃を受けた。)
He was surprised at the ending of this novel.(彼はこの小説の結末に驚かされた。)
また、「感銘を受けた」という言い方だと、「be impressed」などの表現も可能です。
I was impressed by his word.(私は彼の一言により感銘を受けた。)
胸をつかれるの使い方・例文
最後に、「胸をつかれる」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 恩師が放った胸をつかれるような一言が、私の人生を変えました。
- 先日友人と観に行った映画は、胸をつかれるシーンの連続であった。
- 彼女の何気なく発した冗談めいた発言に、胸を突かれるほどショックを受けた。
- 卒業式を終えて来週から新生活が始まるが、胸をつかれるような不安がある。
- 学生時代のアルバムを見返すと、胸をつかれるような懐かしさが込み上げてくる。
- のんびり昼寝をしていたが、急にサイレンが鳴り出し、胸をつかれた気分だった。
- 胸をつくような険しい山道を、何とか二時間以内に登りきることができた。
「胸をつかれる」は複数の意味があるので、多くの状況に対して使うことができます。
ただ、一般的には「衝撃を受ける・ショックを受ける」という意味で使われることが多いです。普段の何気ない会話や行動の中で大きな衝撃を受けた時に「胸を突かれた」と言うことができます。
この衝撃というのは、心揺さぶられる感動という意味での衝撃、心が傷つくという意味での衝撃、物事の真理を知ることができたという意味での衝撃などいくつか種類があります。
いずれにせよ、自分の心の中を激しく揺さぶられることであれば、それは「胸を突かれる」と表現できます。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「胸をつかれる」=心に衝撃やショックを受ける・様々な思いがつのる・勾配が急である。
「類義語」=「心を打たれる・胸を打たれる・胸に突き刺さる・動揺させられる・魂を揺さぶられる」等。
「対義語」=「暖簾に腕押し」「馬の耳に念仏」
「英語訳」=「be shocked」「be surprised」
胸をつかれるシーンというのは、私たちが生きていく中でも比較的多いです。これを機にぜひ普段の文章でも使ってみてはどうでしょうか?