「精を出す」という慣用句をご存知でしょうか?
日常生活からビジネスまで様々な場面で使われている言葉です。ただ、具体的にどのような場面で使うのか分かりにくい表現でもあります。
そこで本記事では、「精を出す」の意味や語源、短文、類語などを含め詳しく解説しました。
精を出すの意味・読み方
最初に、読み方と基本的な意味を紹介します。
【精を出す(せいをだす)】
⇒精いっぱい働く。こつこつ物事をする。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「精を出す」は、「せいをだす」と読みます。意味は、「精いっぱい働く・こつこつ物事をする」などの行為を表したものです。
例えば、入社1年目の社員がいたとして、毎日一生懸命会社で働いていたとしましょう。上司、同僚など周囲の誰もが認めるくらい、熱心に働いているようなイメージです。
このような人物に対しては、「彼は精を出して働いている」などと言うことができます。
あるいは、仕事に限らず勉学でも構いません。受験生だとしたら、毎日必死にコツコツと勉強している人がいたとします。このような人も、「合格に向けて精を出している」などと言うことができます。
つまり、「精を出す」とは物事に対して一生懸命にこつこつと取り組む様子を端的に表した慣用句ということです。
精を出すの語源・由来
「精を出す」の「精」とは、「心・魂・気力・エネルギー」などの意味があります。これは「精神」「精進」「精力」などの熟語があることからも分かると思います。
また、「出す」とは文字通り「何かを外に出す」という意味です。身近な例だと、水を外に出したりゴミを外に出したりするのと同じような意味です。現在でも大事なイベントを前にした時は、気合を出す、やる気を出すなどと言います。
以上の事から考えますと、「精を出す」は気力やエネルギーを外に出すことが原義であることが分かります。
気力やエネルギーを外に出すということは、裏を返せば、その人が全力で物事に取り組んでいることを意味します。転じて、「熱心さ・一生懸命さ」を表す慣用句になったということです。
なお、「精」を「性」と書くのは誤用です。
「精を出す」⇒「〇」 「性を出す」⇒「×」
「性」は「性格」「天性」「本質」などの意味なので、「気力」といった意味は含まれていません。これはよくある書き間違えなので注意してください。
精を出すの類義語
続いて、「精を出す」の類義語を紹介します。
- 頑張る
- 励む
- 努力する
- 力を注ぐ
- 尽力する
- 努める
- 奮闘する
- 汗を流す
- 怠らない
- 汗を流す
- 勤(いそ)しむ
- 熱心になる
- 一生懸命になる
いずれの言葉も、その人の一生懸命さを表す言葉であることが分かると思います。この中だと、「勤しむ」「熱心になる」「一生懸命になる」はほぼ同じ意味なので、「精を出す」の同義語だと考えて問題ありません。
その他、四字熟語だと「粉骨砕身」や「奮励努力」なども類義語に含まれます。「粉骨砕身」とは「力の限り、懸命に働くこと」、「奮励努力」とは「気力を奮い起こして励むこと」という意味です。
精を出すの対義語
逆に、「精を出す」の対義語としては、以下のような言葉が挙げられます。
- 怠ける
- サボる
- 楽をする
- だらける
- 横着する
- 無精する
- おろそかにする
- 気を抜く
- 手を緩める
反対語の場合は、面倒くさがってやるべきことをやらない行為を表した言葉となります。簡単に言えば、「怠ける行為」を指した言葉です。
補足すると、「横着(おうちゃく)」とは「すべきことを故意に怠けること」という意味です。主に楽をしようとする人に対して使い、「横着する」「横着者」などの使い方をします。
また、「無精(ぶしょう)」とは「体を動かして物事を行うのを面倒くさがること」という意味です。身だしなみに対して使うこともあり、「無精ひげ」「無精な性格」などのような使い方をします。
精を出すの英語訳
「精を出す」は、英語だと次のように言います。
①「work hard(一生懸命働く)」
②「make a great effort(多大な努力をする)」
①の「work」は「働く」、「hard」は「一生懸命」という意味なので、合わせることで「一生懸命働く」と訳すことができます。
また、②の「great」は「大きな」、「effort」は「努力」という意味なので、「多大な努力をする」⇒「精を出す」と訳すことができます。
英語の場合は、「精」や「出す」などの英単語は使わずに、「一生懸命働く」という意味の表現をします。
例文だと、それぞれ次のような言い方です。
I will work hard on studying English.(英語の勉強に精を出す予定です。)
We made a great effort to finish the task.(その仕事を終わらせるために私たちは精を出した。)
精を出すの使い方・例文
最後に、「精を出す」の使い方を例文で紹介しておきます。
- 彼はいつ見ても仕事に精を出すことを心がけている社員である。
- 受験まであと残り半年間なので、今は勉強に精を出すつもりです。
- 納期が近づいてきたので、予定通り提出しようと精を出すことにした。
- ローンを組んだので、今まで以上に精を出して働かないといけないね。
- ここ最近は外出せずに、家で野菜作りに精を出すことにしています。
- リハビリに精を出す期間が続くと思うが、何とか我慢することが大事だ。
「精を出す」は、基本的に仕事や勉学に対して使われる慣用句です。使う場面としては、「与えられた仕事を一生懸命にこなす」「他には目もくれず熱心に勉学へ取り組む」といったものが多いです。
ただし、必ずしも仕事や勉学に限定されるというわけではありません。例えば、例文の5や6のように、その人の趣味や何かのイベントに対して使われることもあります。このこともできれば頭に入れておくとよいでしょう。
まとめ
以上、本記事のまとめです。
「精を出す」=精いっぱい働く・こつこつ物事をする。
「語源・由来」=気力やエネルギーを外に出すのは「熱心さ」を表すため。
「類義語」=「努力する・力を注ぐ・勤しむ・熱心になる・一生懸命になる」
「対義語」=「怠ける・サボる・楽をする・横着する・無精する」
「英語訳」=「work hard」「make a great effort」
「精を出す」という言葉は、普段からよく用いられています。覚えたからには、ぜひ今後の文章でも使って頂ければと思います。