受付 受け付け 受付け 違い 使い分け 公文書

「うけつけ」を漢字で書く場合、「受付」「受付け」「受け付け」のように、複数の表記の仕方があります。

ただ、この場合にどれを使うのが正しいのかという問題があります。そこで今回は、「受付」「受付け」「受け付け」の違いを詳しく解説しました。

受付・受付け・受け付けの違い

 

まず、「うけつけ」を辞書で引くと次のように書かれています。

【受(け)付(け)】

申し込み・文書などを受け取ること。「願書の受け付け」「受け付けした順に呼ぶ」

②(受付)来訪者・参集者の用件などを聞いて、取次をする所。また、その係。「病院の受け付け」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

【受け付け】

カ行下一段活用の動詞「受け付ける」の連用形、あるいは連用形が名詞化したもの。

出典:三省堂 大辞林

上記2つの辞書から引用しました。

つまり、それぞれの違いを簡潔に言うと、

受付」=名詞としての意味を持つ。

受け付け」=動詞としての意味を持つ。

受付け」=受け付けを省略した形。

ということが分かります。

では、それぞれの違いを詳しくみていきましょう。

「受付」とは

 

まず、「受付」とは「名詞としての意味を持つ言葉」で、主に他の名詞と組み合わせて使うことが多い表記だと言えます。

【例】⇒「受付係・受付人」など。

ポイントは、「受付」は動詞としての意味は持っていないということです。「受付」という言葉は名詞として使い、受け付ける「人」や「職」「場所」などを対象とします。

元々、「うけつけ」という言葉は「受け付け」と書いていましたが、名詞としての意味が慣用化するにつれ、次第に「受付」という表記がされるようになりました。

そのため、現在では「受付」という表記がされているのです。「受付」は送り仮名がついていないことからも分かるように、それ自体で名詞としての意味を持つことが分かるかと思います。

「受け付け」とは

 

受け付け」とは「(本来は)動詞としての意味を持つ言葉」を意味します。

「受け付け」はカ行下一段活用の動詞「受け付ける」の連用形or連用形が名詞化したもの」です。

簡単に言えば、「”受け付ける”が変化したもの」だと考えて構いません。

「活用」とは「単語の後ろの形が変化すること」で、今回の「受け付ける」だと以下のように語尾が変化していきます。

受け付け(ない) 受け付け(たり) 受け付ける 受け付ける(こと) 受け付け(れば) 受け付け(ろ)

上記2つ目が「連用形」に該当します。

つまり、この「受け付け(たり)」が名詞化した結果、使われるようになったのが「受け付け」ということです。

したがって、実際には「受け付け」は名詞として使われていますが、本来は動詞として使うのが適切ということになります。

「受け付け」は言わば「受け付けること」と同義ですが、動詞の「受け付ける」という元の意味が残った言葉なのです。

「受付け」とは

 

受付け」とは「受け付けを省略した形」を意味します。

意味自体は「受け付け」とほぼ同じで、字面を少なくした表記ということです。ただ、実際の使われ方としては同じ名詞でも少々異なってきます。

「受け付け」は、他の名詞と組み合わせて使う場合が多いということでした。

しかしながら、「受付け」の方は他の名詞と組み合わせてというよりも、これ自体で単体として使うことが多いです。

【例】⇒受付けの人へ確認する。

別の言い方をすれば、直後に名詞が来ないということです。

元々、なぜ「受付け」という表記が使われ出したかと言いますと、それは文化庁が出している通則に起因しています。

文化庁の「送り仮名の付け方 複合の語 通則6」では以下のようなルールを取り決めています。

複合の語(通則7を適用する語を除く。)の送り仮名は、その複合の語を書き表す漢字のそれぞれの音訓を用いた単独の語の送り仮名の付け方による。

(1) 活用のある語

 流 申 打わせる 向かいわせる ~以下省略

(2) 活用のない語

 伸 乗 抜 作 暮らし 売 取 乗 ~以下省略。
 
【許容】

読み間違えるおそれのない場合は、次の( )の中に示すように送り仮名を省くことができる。

〔例〕

抜く(書抜く)申込む(申込む)打せる(打ち合せる・打合せる)向い合せる(向い合せる)(乗換え・乗換) 引(引換え・引換)申(申込み・申込)移り変り(移り変り) ~以下省略
 
出典:文化庁 送り仮名の付け方 複合の語 通則6
つまり、読み間違える恐れがない場合は、「受け付け」を「受付」や「受付け」などと表記しても許されているということです。
 
例えば、「乗降」は「じょうこう」とも読めますし、「のりおり」とも読めるので読み間違える恐れのある言葉です。

一方で、「受付」という言葉はこれ以外に特に間違えるような読み方が存在するわけではありません。「じゅふ」などと読む人はまずいないでしょう。
 
したがって、このように読み間違える恐れがない言葉は、送り仮名を省略して「受付」や「受付け」と表記しても問題ないと国が認めているのです。

受付・受付け・受け付けの使い分け

受付 受付け 受け付け 使い分け

以上の事から考えますと、それぞれの使い分けの仕方は次のように定義できます。

受付」=名詞として使う言葉。主に他の名詞として組み合わせて使う。

受け付け」=本来は動詞として使う言葉だが、現在は名詞としても使える。

受付け」=受け付けを省略した形。名詞単体で使うことが多いが頻繁には使われない。

まず、どれも名詞として使うことができますが、この中で最もよく使われるのが「受付」です。

使い方としては、「受付窓口・受付係・受付人・受付金・受入先・受付書類・受付の人・受付からの連絡」などが挙げられます。

他の名詞と一緒に使われるので、様々な単語と組み合わせて使うことができます。使い分けを迷った場合は、「受付」を使えば問題ないでしょう。

次に、「受け付け」ですが、これは「”受け付ける”が変化したもの」なので本来は「受け付ける・受け付けます」など動詞として使うのが正しいです。ただ、現在では名詞として使うこともできます。

使い方としては、「受け付け中・受け付け開始・受け付け終了」などが挙げられます。

そして最後の「受付け」は「受け付け」を省略した形なので、基本的にはあまり頻繁に使う表記ではありません。

仮に使う際は名詞同士をくっつけたりはせず、単体として使うことが多いです。

受付けを開始する・受付けを終了する」など。

なお、「受けつけ」や「うけ付け」などと書く表記も一応は可能です。ただ、原則的にはしない表記と思ってもらって結構です。

まとめ

 

以上、本記事のまとめとなります。

受付」=名詞としての意味を持つ言葉で、他の名詞として合わせて使うことが多い。

受け付け」=本来は動詞としての意味を持つ言葉だが、名詞としても使える。

受付け」=受け付けを省略した表記。あまり使われないが、使う時は名詞単体で使うことが多い。

基本的にはどの表記も間違いではないので、いずれも現在の文章では使うことができます。ただ、「受付」は名詞としての「受け付け」が慣用化したものなので、現在では最も一般的な表記です。したがって、迷った場合は「受付」を使えば問題ありません。