時間と自由の関係について 要約 問題 学習の手引き 漢字 主張

『時間と自由の関係について』は、現代文の教科書に収録されている作品です。高校の定期テストなどにも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる人も多いと思われます。そこで今回は、『時間と自由の関係について』のあらすじや要約、語句の意味などをわかりやすく解説しました。

『時間と自由の関係について』のあらすじ

 

本文は、内容により3つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①時計のない学校というのは、現代の日本では想像もできない。しかし、学校教育の中で時計の時間が価値基準になったのは、欧米でも二十世紀に入ってからである。それが変わったのは、欧米で労働の価値基準が時計の時間で示されるようになった頃からである。つまり、「仕事は決められた時間内に仕上げてこそ価値がある」と考える時代へ転換した時期に、時間内に覚えて答えられることが能力だとみなされるようになったのだ。

②時間というのは、経過するものとして考えるだけではない。いまを生きていると考える時間がある。いまという時間は経過せず、常に、いま、ここに存在し続けている。存在し続けるいまという時間を通すと、この時間が永遠に存在し続けているように、ここにある生も永遠のものであるように感じられる。こう考えると、時間の自由には二つのものがあると分かる。自在に時間を配分する自由と、失われることのない、いまという時間を自在に作り出す自由である。

③私たちはこれまで、時計の時間を基準に暮らしてきた。だが、時間とはもっと自由なものだ。私たちは、時間を既成観念から解放すべきである。人間とともにある時間そのものを、もっと多様で自由なものにしなければならない。

『時間と自由の関係について』の要約&本文解説

 

200字要約二十世紀の欧米で、労働の価値基準が時計の時間で示されるようになり、私たちは時間を想像する自由を失った。時間の自由には、自在に時間を配分する自由と失われることのない、いまという時間を自在に作り出す自由がある。誰もが自在に作り出すことのできる、いまという時間こそが、人間を平等にし、創造の自由を与えている。時間とは本来自由なものなので、私たちは時間を既成観念から解放し、時間の自由さを回復すべきである。(199文字)

私たちは「時間」と聞くと時計が刻み続けるものだと考えています。しかし、筆者は本来の「時間」とは時計に支配されるようなものではないのだと主張します。

元々、時計の時間というのは二十世紀の欧米で労働の価値基準が転換してから導入されたもので、本来はどの国もそのような概念はありませんでした。そのため、時間とは何なのかをもっと考えるべきだと述べています。

筆者は、「時間」とはもっと自由なものだと考えています。例えば、子どもの頃などは、誰しも時計などを意識することはせず、ただ自由に遊びをし、友達と会話を楽しんでいました。そして、自らが「いま」という時間を生き、時間を創造することを自然に行っていました。

筆者はこのような、いまをいきる時間こそが、人間を平等にし、創造の自由を与えているのだと考えています。

最終的に筆者は、私たちは時間を既成観念から解放し、時間の自由さを回復すべきだと主張しています。これはつまり、私たちは、すでに当たり前だと思っている時間の考え方を見直し、人間本来が持つ時間の自由さを取り戻すべきである、という意味です。

「時計に支配された時間ではなく、いまを生きるという人間本来の持つ時間を回復すべきである」という筆者の主張を読み取ることがポイントとなります。

『時間と自由の関係について』の意味調べノート

 

【分教場(ぶんきょうじょう)】⇒本校から離れた地域の生徒のために設けられた学校。現在は、分校と言う。

【遡る(さかのぼる)】⇒過去にたちかえる。

【厳密(げんみつ)】⇒細かい点まで手落ちなく厳しく行うさま。

【二の次(にのつぎ)】⇒二番目。あとまわし。

【仕上げる(しあげる)】⇒完成させる。

【転換(てんかん)】⇒別のものに変わること。

【恐らく(おそらく)】⇒思うに。多分。

【解放(かいほう)】⇒解き放つこと。制限を解いて自由にすること。

【創造(そうぞう)】⇒新しいものを初めてつくり出すこと。

【雰囲気(ふんいき)】⇒その場面またはそこにいる人たちの間にある空気・気分。

【生涯(しょうがい)】⇒一生の間。

【執着(しゅうちゃく)】⇒一つのことに心をとらわれて、それにとらわれること。

【安堵感(あんどかん)】⇒心の落ち着きや安心。ほっとする感じ。

【妥当(だとう)】⇒よくあてはまること。適切であること。

【経過(けいか)】⇒(時間が)過ぎゆくこと。

【かたわらでは】⇒一方では。

【配分(はいぶん)】⇒割り当てて配ること。

【赴くままに(おもむくままに)】⇒物事がある方向や状態へ向かっていくのに任せるさま。「赴く」とは「物事がある方向や状態に向かう」という意味。

【自在(じざい)】⇒意のままであるさま。自分の思う通りにできるさま。

【余暇(よか)】⇒余ったひまな時間。

【論理的(ろんりてき)】⇒きちんと筋道を立てて考えるさま。

【既成観念(きせいかんねん)】⇒あることについて、すでにできあがっている考え方。「既成」とは「すでにできあがっている」、「観念」とは「物事に対する考え」という意味。

『時間と自由の関係について』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

ゲンミツな検査を受ける。

②時代がテンカンする。

フンイキを乱す。

④お金にシュウチャクする。

ダトウな判断を下す。

⑥固定カンネンを持つ。

解答①厳密 ②転換 ③雰囲気 ④執着 ⑤妥当 ⑥観念
問題2「外部化された時間に支配されることなく、自由に時間世界をつくりだしていきたい」とあるが、「外部化された時間」とはここではどのような時間を表すか?
解答例自分とは関係なく進んでいく、時計で表されるような時間。
問題3「自分の外の何者かに、時間を手渡してしまった。」とあるが、これはどういうことか?「主体的」「客観的」という言葉を使い答えなさい。
解答例主体的な時間を過ごすことをせず、客観的な時計の時間に支配されてしまったということ。
問題4「老人はとても難しいことを話していたのである。」とあるが、「とても難しいこと」とはどのようなことか?
解答例誰もが同じように、年齢による差が生じない、常に存在し続けている今という時間を生きているということ。
問題5「もしかすると、この永遠の時間は、感情をも持っているのかもしれない。」とあるが、「永遠の時間は感情を持っている」とはどういうことか?
解答例常に存在し続ける今という時間は、人間の存在とともにあるため、人間の要件である感情をその時間も持っているということ。
問題6「時間を既成観念から解放しなければならない。」とあるが、これはどういうことか?
解答例すでにできあがっている時間に対する考え方を見直し、人間本来が持つ時間の自由さを取り戻さなければならないということ。

まとめ

 

以上、今回は『時間と自由の関係について』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。