『読む』は、教科書・現代の国語で学習する文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『読む』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。
『読む』のあらすじ
本文は、四つの段落に分けることができます。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。
①書物が少なく、入手困難な時代では、本を読むことは今よりも重要な意味を持っていた。印刷術の発達普及により、大量の書物が出回るようになると、読者は本の消費者になった。すると、本を読むことの意味は小さくなり、読者は作者とは比べものにならない低い役割の担い手になった。そして、書物にとって読者は不可欠な存在であることすら忘れられるようになった。文学作品の研究でも、まず作者が問題にされる。作品は作者さえあれば成立するように考えるのが、歴史的研究、文献学の基本概念である。読者は文学作品にとって黒子でしかないものになった。
②「読む」を辞書で調べると、①音読 ②意味を理解する ③一見無意味な文字の意味を判断する ④他人の心などを外見から推測する ⑤先の手を考えたり、相手の手筋を察知する。の5つの意味がある。声を出して文字を読むだけの低次の読みから、意味を取る中次元の読みに移り、解釈、判断、察知によって理解する高次の読みまであるが、このうち中次元の読みだけが漠然と考えられているにすぎない。高度の読みは、表現されていないものを含めて理解する積極的で創造的な読みである。文学作品などは、この高度の読みが不可欠である。
③一般に言語表現は、不確定要素を内包しているのが普通である。物体としての「石」には不確定部分はほとんどないが、「石がある。」となると、不確定要素が加わるため、多少の解釈が必要となる。さらに、「古池や蛙飛び込む水の音」となると、不確定要素の方が確定要素を上回るため、読む側での推量や判断による解釈が必要となる。高度の読みは、創作に通ずる創造である。表現を読むおもしろさも、その創作的活動に付随する効果である。
④解釈は、テクスト自体によって規制されない部分を多く含んでおり、読み手のコンテクストによって大きく左右される。読みはきわめて個人的なものである。数学の文章や法律の条文は、解釈の余地が少なかったり、読み手の解釈に制限的であったりすることから、読んでおもしろくなく、感動することはない。文学的表現は、活発な解釈を誘発し、美的価値を持つ。詞歌は、写実的散文よりも不確定要素を豊かに持つために、より多く解釈を必要とする。そのために、芸術的なおもしろさをより多く持つのである。
『読む』の要約&本文解説
筆者の主張を簡潔にまとめると、「読むことは単なる理解ではなく、積極的な解釈によって新たな意味を生み出す創造的な行為である。」ということです。
具体的にどういうことか、分かりやすく説明します。
① 昔と今の「読む」の違い
昔は本はとても貴重で、読むこと自体が特別な意味を持っていました。しかし、印刷技術が発達し、本が大量に出回ると、読者は単なる「本を消費する人」になり、作者のほうが重要視されるようになりました。その結果、読者の存在が軽視されるようになったのです。
② 「読む」にもレベルがある
「読む」と一口に言っても、実は段階があります。
- 低レベル:声に出して読む(音読)
- 中レベル:書かれた意味を理解する(普通の読解)
- 高レベル:表面に書かれていないことまで考える(解釈や推測)
文学作品を読むときは、この「高レベルの読み」が大切だと筆者は主張します。単に言葉の意味を追うだけではなく、「書かれていない部分」まで想像して読み取ることが求められるのです。
③ 読者は作品を「創造」する存在
文章には、書かれた言葉だけでは伝えきれない「不確定な部分」があります。例えば、
- 「石」 → ただの物体で、誰が見ても同じもの
- 「石がある」 → どんな石? どこに? 誰が見ている? 多少の解釈が必要
- 「古池や蛙飛び込む水の音」 → 具体的な説明がなく、読む人の想像に委ねられる
このように、文学作品では、読者が自分なりの解釈をして意味を作り上げていきます。これが「創造的な読み」です。
④ 読むことの本当の面白さ
数学や法律の文章は、決まった意味しかなく、解釈の余地が少ないため、感動することはありません。一方で、文学は読む人によって受け取り方が変わるため、色々な解釈ができます。
特に詩や俳句は、不確定な要素が多いため、より深い読みが必要になり、読者が「意味を作る」ことができます。これが、読むことの本当の面白さにつながります。
【結論】
このように、ただ言葉の意味を理解するだけではなく、読者が自分の想像力を働かせ、書かれていないことまで考えることで、本当の「読む」力が身につくと筆者は述べています。
特に詩歌などの文学作品は、不確定要素を豊かに持つために、結果的に芸術的なおもしろさを多く持つと筆者は考えているのです。
『読む』の意味調べノート
【普及(ふきゅう)】⇒広く行き渡ること。
【味読(みどく)】⇒内容をよく考えながら深く味わって読むこと。
【殊に(ことに)】⇒特に。とりわけ。
【不可欠(ふかけつ)】⇒なくてはならないこと。
【伝記(でんき)】⇒人物の生涯や業績を記録した書物。
【広義(こうぎ)】⇒ある言葉の意味を広くとらえた場合の解釈。
【概念(がいねん)】⇒ある物事についての一般的な考え方や意味。
【黒子(くろこ)】⇒表に出ず、裏で支える存在。
【吟味(ぎんみ)】⇒物事を詳しく調べ、よく考えること。
【営為(えいい)】⇒人間が日々いとなむ仕事や生活。
【漠然(ばくぜん)】⇒はっきりしないさま。
【創造的(そうぞうてき)】⇒新しいものを初めて作り出すさま。
【洗練(せんれん)】⇒無駄をなくし、優雅で上品にすること。
【不明瞭(ふめいりょう)】⇒はっきりとせず、分かりにくいこと。
【補充(ほじゅう)】⇒不足を補って満たすこと。
【内包(ないほう)】⇒ある範囲の中に含み持つこと。
【感銘(かんめい)】⇒心に深く刻みつけて忘れないこと。
【付随(ふずい)】⇒主となるものに従ってついてくること。
【立脚(りっきゃく)】⇒ある考えや立場に基づくこと。
【余地(よち)】⇒物事を行うためのゆとりや可能性。
【誘発(ゆうはつ)】⇒ある事が原因となって、他の事を引き起こすこと。
『読む』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①技術がフキュウする。
②ゴラクの時間を楽しみにする。
③商品の品質をギンミする。
④バクゼンとした不安を感じる。
⑤素晴らしい演説にカンメイを受ける。
次のうち、本文の内容を表したものとして最も適切なものを選びなさい。
(ア) 読書は、書かれた意味を正しく理解することが最も重要であり、解釈の余地はできるだけ排除すべきである。
(イ) 読者の役割は歴史的に低下し、現在では文学作品の成立においてほとんど影響を与えない存在となっている。
(ウ) 読むことには段階があり、高度の読みでは表現されていないものまで含めて積極的に解釈することが求められる。
(エ) 文学的表現は、数学や法律と同様に一つの正しい解釈が定まるものであり、読む側の判断は関係ない。
まとめ
今回は、『読む』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。