わかろうとする姿勢 意味調べノート 要約 鷲田清一 解説 あらすじ

『わかろうとする姿勢』は、教科書・現代の国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『わかろうとする姿勢』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『わかろうとする姿勢』のあらすじ

 

本文は、四つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①他者のケアについて語るとき、人はよく「全人的理解」といった言葉を使う。しかし、他人と同じ気持ちになることが「理解」だとすれば、それは不可能である。人と人との間には隔たりがあり、誰もが一つのまとまった存在として理解できるものではないからだ。

②人はそもそも、自分自身のことすら完全には理解できない。まとまった自己像を持てないのに、他者を丸ごと理解することなどできるのだろうか。では、他者を理解できなければ、ケアや看護といった営みは成立しないのだろうか。

③理解とは、感情や意見が一致することではない。むしろ、自分とは異なる感じ方や考え方に気づき、その差異を否定せずに受け入れようとすることである。わからないままでも相手に向き合おうとする、その姿勢が理解につながっていく。

④他者の理解は、明確なゴールに到達するものではなく、終わりのないプロセスである。不一致や伝達不能を知ること自体に大きな意味がある。他者の思いに触れることで、自分の内面にも変化が起きる。たとえ理解できなくても、その場を離れず、わかろうとし続けることこそが、理解において最も重要な姿勢なのである。

『わかろうとする姿勢』の要約&本文解説

 

100字要約他者を理解するということは、相手と同じ気持ちを持つことではなく、他者の思いに触れ、違いを受け入れることである。もし理解できなくても、その場から立ち去らずに分かろうとすることが理解において重要である。(99文字)

「わかる」とは同じ気持ちになることではない

本文ではまず、他人と「同じ気持ちになること」や「全体的に理解すること」は、実は不可能なのだと指摘されています。

なぜなら、そもそも人間は、自分自身のことですら完全に理解することができない存在だからです。他者を一個のまとまった存在としてとらえ、丸ごと把握するという考え方そのものが幻想だというのです。

本当の理解とは、感情や意見が一致することではありません。むしろ、相手が自分とは異なる考え方や感じ方を持っていると知り、その“ズレ”や“違い”を否定せず、しっかりと見つめようとすること――それが「わかる」ということの出発点だと筆者は述べています。

わからないからこそ、立ち去らずにいることの意味

次に示されるのは、「わからないからこそ関係を断つ」のではなく、「わからなくても、相手と向き合い続けようとする姿勢」の重要性です。

人は誰しも、自分のことすら全体としては把握できません。そうである以上、他人を完全に理解することなど、なおさら困難です。しかし、それでも「わかろう」と努力する行為そのものに価値があるのです。

理解とは、“結果”や“到達点”ではなく、「わからないことを前提に、それでも対話を続けること」に意味があるのだという視点は、他者と接するときの根本的な姿勢を問い直してくれます。

「姿勢」としての理解――果てしないプロセス

筆者は、「理解とは終わりのないプロセス」であると繰り返し強調します。

つまり、理解とは“目的地”ではなく、“道のり”なのです。完全な理解にたどり着くことはできないかもしれません。それでもなお、少しでも相手に近づこうとするプロセスこそに価値があるのです。

特に看護やケアのような現場では、この「わかろうとする姿勢」が非常に重要となります。患者の気持ちをすべて理解することは不可能でも、その苦しみや不安に寄り添おうとする姿勢があることで、支援やケアの質はまったく違ったものになるのです。

わからなくても向き合い続ける勇気

この評論文が私たちに伝えているのは、「理解し合うことの難しさ」ではなく、「理解できないからといって関係を切らず、向き合い続けることの大切さ」です。

完全にわかり合うことは難しくても、「それでもわかろうとする努力」を放棄しないこと――この姿勢こそが、現代社会における人間関係や共生の根本に求められている態度ではないでしょうか。

『わかろうとする姿勢』の意味調べノート

 

【率直(そっちょく)】⇒考えや気持ちを正直に隠さずに言うこと。

【天啓(てんけい)】⇒神や天からの知らせや啓示。ひらめきのように突然得る知恵や考え。

【共振(きょうしん)】⇒同じように響き合うこと。感情などが共鳴すること。

【異論(いろん)】⇒他と違う意見。反対の意見。

【主体(しゅたい)】⇒自分の意志で行動する側の存在。行動の中心となるもの。

【客体(きゃくたい)】⇒主体に対して、それを受ける対象となるもの。

【欠落(けつらく)】⇒あるべきものが抜け落ちていること。

【過酷(かこく)】⇒ひどく厳しいこと。容赦のないこと。

【性向(せいこう)】⇒性質や傾向。物事の方向性や特徴。

【手を携える(てをたずさえる)】⇒協力し合って何かをすること。

【判然(はんぜん)としない】⇒はっきりとわからない。あいまいである。

【錯綜(さくそう)】⇒物事が入り乱れて、複雑になっていること。

【頓挫(とんざ)】⇒途中で行き詰まって、物事がうまく進まなくなること。

【調停(ちょうてい)】⇒対立する両者の間に入って仲裁し、争いをおさめること。

【差異(さい)】⇒互いに違っている点。違い。

【微細(びさい)】⇒とても細かいこと。

【応える(こたえる)】⇒相手の気持ちや期待に合うようにすること。

【うのみにする】⇒他人の言葉などを、よく確かめずにそのまま信じること。

【万策尽きる(ばんさくつきる)】⇒あらゆる手段や方法を試したが、もう手だてが残っていないこと。

【訴訟(そしょう)】⇒裁判所に訴えて、法的な争いを解決しようとすること。

【失調(しっちょう)】⇒バランスがくずれてうまく働かなくなること。

【傍ら(かたわら)】⇒そば。すぐ横。

『わかろうとする姿勢』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

①地域のためにケイハツ活動を行う。

②すぐにレンラクを取り合ってください。

③観光客をユウチする企画を考える。

④企業を相手にソショウを起こす。

⑤財布とケイタイを家に忘れた。

解答①啓発 ②連絡 ③誘致 ④訴訟 ⑤携帯
問題2「全人的理解」とは、どのようなことか?本文中の語句を使い、答えなさい。
解答そのひとが置かれている状況と思いを含め、まるごとしっかりと理解すること。
問題3「そんな隙間や暗がりがいっぱいある。」とは、どういうことか?
解答人は過去のすべてを公平に覚えているわけではなく、重大だと思われていることにもかかわらず、思い出せないことも多いということ。
問題4「他者としての他者」とは、どういった他者を指すか?
解答相手を今の自分の理解できる枠の中に収めようとせず、自分とは違う、理解できない存在として認識する他者。
問題5「この非対称は不思議だ。」とあるが、ここでの「非対称」とは何を指すか?
解答自分が聴く側の時は「わかっているかわからない」と思うのに、聴いてもらえる側に回ると「わかってもらえた」と思ってしまうような心のありよう。

まとめ

 

今回は、『わかろうとする姿勢』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。