つながりと秩序  要約 意味調べノート 解説 テスト問題 漢字

『つながりと秩序』は、教科書・論理国語で学習する文章です。高校の定期テストの問題にも出題されています。

ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『つながりと秩序』のあらすじや要約、意味調べなどを解説しました。

『つながりと秩序』のあらすじ

 

本文は、三つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介していきます。

あらすじ

①社会学者ルーマンによれば、コミュニケーションとは、①ある情報の選択、②その情報の伝達のあり方についての選択、③受け手による①と②の差異の観察、という三つの選択の不可分の統一体である。ルーマン的なコミュニケーション概念から、私たちは二つの「社会性」概念を抽出することができる。ひとつは、ある行為が誤解されようが否かを問わず、ともかく別の行為(理解)へと接続されコミュニケーションが生成する、というつながりの社会性。もう一つは、誤解の可能性を低める共同的ルール(状況の枠組み)にもとづいて行為を調整する、という秩序の社会性である。前者は、行為が行為に接続されること自体を至上課題とし、後者は、行為の接続が第三者的な視点から見て誤解を含まないものとなることをめざす。両者は、絡み合いながら微妙な関係を保ち、私たちの社会空間を可能にしている。

②第三の領域とは、公的領域(学校・会社)と私的領域(家庭・地域社会)に収まりきらない都市の領域である。ケータイと真っ向から対立する「儀礼的無関心」という近代的な空間規範は、第三の領域において、コミュニケーションをしないという意思表示をすることである。ここでは、小説や雑誌、マンガ、新聞などのマスメディアを消費することによってやり過ごし、共存する他者との危険な接続を回避する。第三の領域は、社会的役割やコミュニケーションへの圧力から逃れることのできるユートピアとして機能していた。

③ケータイは、秩序の社会性を第三の領域にまで広げただけではない。偏在的な管理装置、つまり「見られているかもしれない」不安と同時に「見られていないかもしれない」という接続不安を引き起こした。もっとも特徴的なのは、コンサマトリー(自己充足)である。ここでは、情報交換を持ったメッセージではなく、メタ・メッセージ(伝達意図)が伝達され、つながりのためのつながりが求められる。そして、接続を拒否する他者の可能性をぬぐい去れない、秩序の社会性以上に過酷な社会性がそこに立ち現れる。コンサマトリーなケータイ使用に現れるつながりの社会性は、<空白の時空>においてこそ強力に人々の身体をつき動かしてくる。ケータイは、ただ単に「私的なものを都市空間へと持ち込んだ」のではなく、秩序の社会性によって覆い隠されていたつながりの社会性を明るみにさせ、第三領域を過剰に社会化された空間、つまり「見られていないかもしれない私」にたえず向かい合わねばならない過剰な儀礼空間へと変容させてしまったのである。

『つながりと秩序』の要約&本文解説

 

200字要約コミュニケーションには、行為の接続を至上とするつながりの社会性と、誤解を避けるための秩序の社会性がある。第三の領域は、儀礼的無関心を通じて後者を維持しながら他者と共存する空間だったが、ケータイの普及により、つながりの社会性が顕在化した。そこではメタ・メッセージによる接続が重視され、つながりのためのつながりが求められる。その結果、第三領域は私的な逃避空間から過剰に社会化された儀礼空間へと変容した。(199文字)

本文は、コミュニケーションと社会空間のあり方について、現代社会における携帯電話(ケータイ)の影響を軸に考察したものです。特に、「つながりの社会性」と「秩序の社会性」という二つの概念を用い、私たちの生活空間がどのように変化しているかを読み解こうとしています。

1. コミュニケーションの二つの社会性とは?

筆者はまず、社会学者ルーマンの理論をもとに、コミュニケーションを「三つの選択(情報内容の選択・伝達方法の選択・受け手の理解)」から成り立つ複雑なプロセスだと説明しています。

ここから、筆者は二つの「社会性」概念を導き出します。

  • 「つながりの社会性」⇒たとえ誤解されても、行為が別の行為へとつながっていくこと自体が重視される社会的つながりのあり方。
  • 「秩序の社会性」⇒誤解を避けるために、共通のルールや状況の枠組みに基づいて行動が調整される秩序のあり方。

これらの二つの社会性は互いに対立するものではなく、バランスをとりながら共存し、現代社会を成り立たせているのです。

2. 第三の領域と「儀礼的無関心」

次に筆者は、「第三の領域」という都市空間の存在を指摘しています。これは学校や家庭のような「公的・私的」空間には分類できない場所、たとえば、駅、カフェ、通勤電車などです。

この空間では、人々は他者と必要以上に関わらない「儀礼的無関心(あえて関わらない態度)」によって平和に共存していました。雑誌やスマホなどを使って周囲と距離をとることが、この領域における典型的な過ごし方だったのです。

3. ケータイがもたらした変化と「過剰なつながり」

ところが、ケータイ(特にスマホ)の普及により、状況が一変します。ケータイによって、「つながりたい」という欲求が、都市空間=第三の領域にまで拡張されました。

誰かに「見られているかもしれない」「でも、見られていないかもしれない」という不安が増幅されることになったのです。

「情報のやり取り」ではなく、「つながっていること自体」を目的としたメッセージ(例:意味のないスタンプの送信など)が増えました。

結果として、「つながらなければならない」というプレッシャーが強まり、「秩序の社会性以上に過酷な社会性」が生まれたのです。

筆者は、ケータイが第三の領域を「静かな共存空間」から、「常につながっていなければならない」「誰かに見られていなければならない」過剰な儀礼空間へと変えてしまったと主張しています。

結論:筆者の主張は何か?

筆者の主張を簡潔にまとめると、

ケータイによって、私たちの生活空間は「過剰に社会化された空間」に変わり、人と人のつながりが必要以上に求められるようになった。

という点にあります。

以前は「関わらない自由」や「無関心の作法」が都市における共存のルールでしたが、ケータイによってそれが崩れ、つながりを持たないこと自体が不安や不信の原因になってしまっている、というのが筆者の問題意識です。

本文の要点まとめ

  • 社会には、とにかくつながる性質(つながりの社会性)と、誤解なく伝える性質(秩序の社会性)がある。
  • 都市空間では、他人と関わらない「無関心のルール」で平和を保ってきた。
  • だが、ケータイによって「つながりたい」という圧力が都市空間にまで入り込み、静かな共存が崩れた。
  • 現代人は、「つながっていない不安」や「誰かに見られていないと不安」という新しいストレスにさらされている。

筆者はこうした状況を、「つながりの社会性」が過剰に強くなった結果だと考えています。

このように、本文は、現代社会の「人間関係の息苦しさ」の正体を、社会学的に読み解こうとした文章だと言えます。

『つながりと秩序』の意味調べノート

 

【不可分(ふかぶん)】⇒分けることができないこと。切り離せない関係にあること。

【統一体(とういつたい)】⇒複数の要素が一つにまとまって全体をなすもの。

【皮肉(ひにく)】⇒遠回しに相手を非難する表現。また、物事が予想と逆になること。

【総体(そうたい)】⇒全体。すべてをまとめたもの。

【目下(もっか)】⇒今のところ。現在。

【連接(れんせつ)】⇒互いにつながり合っていること。連続して接していること。

【黙殺(もくさつ)】⇒無視すること。あえて取り上げないこと。

【整序(せいじょ)】⇒順序を整えること。秩序立てて並べること。

【隠蔽(いんぺい)】⇒おおい隠すこと。

【至上課題(しじょうかだい)】⇒最も重要で優先されるべき課題。

【相容れない(あいいれない)】⇒互いに両立せず、成り立たない。

【克服(こくふく)】⇒困難や障害を乗り越えること。

【変節(へんせつ)】⇒意見や態度をがらりと変えること。

【ことごとく】⇒残らずすべて。例外なくすべて。

【潜在的(せんざいてき)】⇒表には現れていないが、内にひそかに存在しているさま。

【遍在(へんざい)】⇒どこにでも存在すること。※対義語は「偏在」。

【増幅(ぞうふく)】⇒いっそう拡大させること。

【肥大(ひだい)】⇒必要以上に大きくなること。

【充足(じゅうそく)】⇒満ち足りていること。

【磁場(じば)】⇒磁力が働く空間。比喩的に、影響力が強く働く場。

『つながりと秩序』のテスト対策問題

 

問題1

次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。

ゴカイを生む。

②危険をカイヒする。

③困難をコクフクする。

④植物の根がヒダイする。

カジョウな干渉をする。

解答①誤解 ②回避 ③克服 ④肥大 ⑤過剰
問題2「しかしそれでも、コミュニケーションそのものは成立している。」とあるが、なぜそう言えるのか?
解答コミュニケーションは、意図やメッセージが交換されることではなく、何らかの形で行為が接続することであり、たとえ誤解であっても、この場合は、情報を発信した側の発言や行為が、受け手の行為に接続されているため。
問題3「つながりの社会性」と「秩序の社会性」とはそれぞれ何か?本文中の語句を使い答えなさい。
解答

「つながりの社会性」=ある行為が、誤解されようが、ともかくも別の行為(理解)へと接続されコミュニケーションが生成するということ。

「秩序の社会性」=誤解の可能性を低める共同的ルール(状況の枠組み)にもとづいて行為を調整するということ。

問題4「第三の領域」とは、具体的にどのような場所を指すか?
解答電車やバスなどの交通機関を使って移動中の空間。また、駅や病院などの待合室で特に何もすることがなく待っている空間。
問題5「空白の時空」とは、ここでは何を指すか?
解答公的領域でもなく、私的領域でもない第三の領域における、コミュニケーションから解放させる時間と場所。

まとめ

 

今回は、『つながりと秩序』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。