『トロッコ』芥川龍之介のあらすじとテーマ解説・テスト対策問題

『トロッコ』は、芥川龍之介による有名な作品です。中学国語の教科書にも採用されています。

ただ、本文を読むと内容が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『トロッコ』のあらすじや要約、テスト問題などをわかりやすく解説しました。

目次

『トロッコ』のあらすじ

この作品は三つの段落に分けることができます。以下に、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介します。

あらすじ

①八歳の良平は、小田原熱海間の鉄道工事を毎日見に行き、土を運ぶトロッコに強くあこがれている。ある夕方、友だちと無人のトロッコを押して乗り、勢いよく坂を下る楽しさを味わう。しかし、土工に見つかって怒鳴られ、恐怖の中を逃げ出す。それ以来、勝手に乗ろうとはしなくなるが、叱った土工の姿は強い印象として心に残る。

②十日ほど後、良平は若い土工たちに頼んでトロッコを押すのを手伝い、やがて一緒に乗せてもらう。押す苦労と乗る喜びを味わいながら進むうち、海の見える遠い場所まで来てしまう。土工たちは泊まりだと言い、良平だけが一人で帰ることになる。暗くなる道を必死に走り、恐怖と心細さに耐えながらようやく家にたどり着く。

③家に着いた瞬間、良平は安心して激しく泣き出す。その体験は深い記憶となり、大人になって東京で働くようになっても、理由もなくふと思い出されることがある。疲れた日常の中に、あの薄暗い道と心細さが、今も途切れ途切れによみがえってくる。

『トロッコ』のテーマ&本文解説

作品全体の概要

この作品は、少年・良平が工事現場のトロッコに強い憧れを抱くところから始まります。良平は毎日のように工事を見に行き、土工たちの働く姿に魅力を感じています。やがて若い土工たちと出会い、いっしょにトロッコを押し、さらに乗せてもらうという体験をします。

しかしその結果、思いがけず遠くまで来てしまい、夕暮れの中を一人で帰らなければならなくなります。前半はわくわくする冒険のように進みますが、後半では不安と恐怖が強まり、最後は二十六歳になった良平の回想で締めくくられます。

作品の主題

この作品の主題は、「子どもの頃に経験した恐怖や不安は、大人になっても心の奥に消えずに残り続ける」という点にあると考えられます。良平にとってトロッコに乗った体験は、最初は楽しい冒険でした。しかし、土工たちに置いていかれた瞬間、その楽しさは強い不安へと変わります。特に一人で暗い道を走って帰る場面は、良平にとって初めて味わう深い孤独の体験でした。

作者は、楽しい思い出よりも、恐怖や孤独のような強い感情の方が心に深く刻まれることを描いています。そして、その記憶が大人になっても理由の分からない不安としてよみがえる人間の姿を示していると読めます。

前半が楽しく見える理由

物語の前半では、良平の純粋な好奇心と憧れが中心に描かれます。トロッコの動きや、土工の姿は、子どもにとって未知で魅力的な世界です。若い土工たちは優しく声をかけ、力を褒め、菓子まで与えます。良平は自分が大人の仲間入りをしたかのような高揚感を覚えます。そのため、読者もこの出来事を明るい冒険のように感じやすいのです。

後半で不安に変わる意味

しかし、土工たちが「向う泊りだから」と告げた瞬間、状況は大きく変わります。良平は、自分が遠くまで来すぎたことを突然自覚します。大人にとっては何気ない一言でも、子どもにとっては重大な出来事です。夕暮れの暗さや人気のない道の描写は、良平の心細さを強調しています。ここでは、子どもが初めて強い孤独や恐怖を実感する姿が描かれているといえます。

泣く場面と回想の意味

家に帰り着いた良平が激しく泣き続ける場面は、張りつめていた不安が一気にあふれ出た瞬間です。恐怖があまりに大きかったため、うまく言葉にできなかったと考えられます。そして物語の最後で、大人になった良平が理由もなくその日のことを思い出す描写が示されます。「薄暗い藪や坂のある路」という表現は、人生の中で感じる不安や迷いを象徴しているとも読めます。

まとめ

『トロッコ』は、子どもの小さな冒険を描いた作品のように見えます。しかし実際には、成長の過程で経験する不安や孤独、そしてそれが長く心に残ることを静かに描いた物語です。作者は、幼少期における体験が現在の心に影響を与え続ける人間の姿を表そうとしたと読み取ることができます。

『トロッコ』の意味調べノート

【軽便鉄道(けいべんてつどう)】⇒小規模で簡易な構造の鉄道。

【敷設(ふせつ)】⇒設備や線路などを設けて作ること。

【運搬(うんぱん)】⇒物を別の場所へ運ぶこと。

【土工(どこう)】⇒土木工事に従事する作業員。

【佇む(たたずむ)】⇒立ったままその場にじっとしている。

【袢天(はんてん)】⇒作業や防寒のために着る短い上着。

【終点(しゅうてん)】⇒路線や道の行き止まりの地点。

【勾配(こうばい)】⇒坂の傾きの度合い。

【徐ろに(おもむろに)】⇒ゆっくりと落ち着いて動き出すさま。

【忽ち(たちまち)】⇒瞬く間に。すぐに。

【有頂天(うちょうてん)】⇒うれしさや喜びで夢中になること。

【印袢天(しるしばんてん)】⇒屋号や印を染め抜いた袢天。

【枕木(まくらぎ)】⇒線路の下に敷き、レールを支える横木。

【蜜柑畑(みかんばたけ)】⇒みかんを栽培している畑。

【竹藪(たけやぶ)】⇒竹が群生している場所。

【雑木林(ぞうきばやし)】⇒さまざまな種類の木が生えている林。

【薄暮(はくぼ)】⇒夕方のうす暗い時間帯。

【茶店(ちゃみせ)】⇒街道などにある簡素な休憩所。

【乳呑児(ちのみご)】⇒母乳を飲んで育つ幼い子ども。

【駄菓子(だがし)】⇒安価で素朴な菓子。

【御時宜(ごじぎ)】⇒その場に合わせた挨拶や礼の言葉。

【無我夢中(むがむちゅう)】⇒ほかを考える余裕がないほど必死なさま。

【板草履(いたぞうり)】⇒板で作られた簡素な履物。

【日金山(ひがねさん)】⇒静岡県にある山の名。

【校正(こうせい)】⇒印刷物の誤りを正しく直す作業。

【朱筆(しゅひつ)】⇒赤い筆や赤字での訂正。

【塵労(じんろう)】⇒世俗のわずらわしい苦労。

『トロッコ』のテスト対策問題

問題1

良平が毎日工事を見に行ったのはなぜか?簡潔に答えなさい。

解答

トロッコで土を運ぶ様子が面白かったから。

問題2

良平が最初にトロッコへ乗った後、二度と勝手に乗ろうと思わなくなった理由を説明せよ。

解答

土工に怒鳴られ、強い恐怖を感じたから。

問題3

若い二人の土工に対して、良平が「優しい人たちだ」と思ったのはなぜか?

解答

叱らずに押すのを手伝わせ、親切に乗せてくれたから。

問題4

遠くまで来過ぎたことに気づいたとき、良平の心情はどのように変化したか。

解答

それまでの楽しさが消え、帰れなくなる不安と心細さに変わった。

問題5

物語の最後で、大人になった良平が当時の体験を思い出すのはなぜか。作品の主題に触れて説明せよ。

解答

幼い日の強い恐怖と孤独の体験が心に深く残り、日常の疲れの中で無意識によみがえるから。

問題6

次のうち、本文の内容を表したものとして最も適切なものを一つ選びなさい。

(ア)良平は土工に叱られたことをきっかけに、トロッコへの興味を失い、その後は工事場へ行かなくなった。

(イ)良平は若い土工たちと一緒に楽しく作業を続け、そのまま彼らの仲間として働くことを決意した。

(ウ)良平はトロッコに乗る楽しさを味わった後、思いがけず遠くまで来てしまい、暗くなる道を一人で帰る中で強い不安と恐怖を感じた。その体験は大人になっても心に残り続けた。

(エ)良平は帰り道で道に迷い、土工たちに助けられて無事に家へ帰ることができた。

解答

(ウ)

まとめ

今回は、『トロッコ』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として活用していただければと思います。

この記事を書いた人

大学卒業後、国語の添削員として就職。その後、WEB運営会社を起業し、現在は主に言葉の意味について記事を執筆中。
「保有資格」⇒漢字検定1級・英語検定準1級・簿記二級・宅建など。

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