『時を編む人間』は、教科書・現代の国語で学習する文章です。そのため、定期テストの問題にも出題されています。
ただ、本文を読むと筆者の主張が分かりにくいと感じる箇所も多いです。そこで今回は、『時を編む人間』のあらすじや要約、意味調べなどを含めわかりやすく解説しました。
『時を編む人間』のあらすじ
本文は、6つの段落から構成されています。ここでは、各段落ごとのあらすじを簡単に紹介します。
①時間は、物のように直接観察できるものではない。では、「時間がある」とは、どのように「ある」ということか?
②「時間がある」と「時間がない」の違いは、自分が、自分のコントロールのもとで、何かを自由に展開できるような広がりを感じられているかどうか、という点にある。それは、自分が「生きる」ということの主体的なありかたに関係している。「時間」は、ある種の「広がり」として意識されているのだ。
③私たちは「時を忘れる」「我を忘れる」などと言う。時間を忘れて何かに没頭しているとき、私たちは、「私自身」も忘れる。やはり、「時間」と「私」は深い関わりを持っているようだ。
④時間に追われる現代社会は、空間化された時間の中で、自己のコントロールが無際限に拡大する世界である。だが、時間とは空間化された時間に尽きるのだろうか。「空間化された時間」とは異なる時間もあるのではないか。
⑤例えば、時間を忘れて小説に没頭しているとき、私は自己の支配から脱けだし、小説の世界に身を委ねている。この時、私たちは生き生きとした活動に参加し、その豊かな動きを経験している。
④生きた時間とはどのような時間か。生きて動いている時間は、過去は現在ではないし、現在は過去ではない。また、現在は未来ではないし、未来は現在ではない。過去は未来ではないし、未来は過去ではない。生きて動いている時間においては、過去・現在・未来はまったく異質であり、同じ平面上に並べることはできない。このように、生きて動いている時間では、「…でない」という否定が重要である。動いてやまない時間は、至るところ「ない」という否定に貫かれているのだ。
『時を編む人間』の要約&本文解説
この文章のテーマは、「時間の本質とは何か」です。私たちは普段、「時間がある」「時間がない」と言いますが、それは単に時計で測れるものではなく、自分の感じ方や生き方と深く関わっています。
筆者は、時間が「ある」と感じるのは、私たちが主体的に行動し、自由に何かを展開できるときだと述べています。例えば、自由に過ごせる休日などは、何かをゆっくり、じっくりとやれる時間が目の前にあるため、「時間がある」と感じやすいでしょう。
一方で、仕事や学校の課題などで忙しく物事に追われているときは「時間がない」と感じがちです。この違いは、時間が単なる物理的なものではなく、私たちの生き方と密接に関係していることを示しています。
また、筆者は時間と自己の関係についても考察しています。私たちは「時を忘れる」と言いますが、それは自分自身の存在すら忘れるほど何かに没頭している状態です。このような時間の経験は、現代社会の「管理された時間」とは異なる生き生きとした時間のあり方だと筆者は指摘しています。
さらに、時間は単に過去・現在・未来が直線的に並ぶものではなく、それぞれが異質であると述べています。例えば、「今」という瞬間はすぐに過去になり、未来はまだ存在しないものとして常に変化し続けます。
この「動き続ける時間」こそが、本来の「生きた時間」であり、そこには「ない」という否定が常に含まれています。
つまり、筆者は時間を単なる客観的なものではなく、主体的な生き方と結びついたものとして捉えるべきだと主張しているのです。
『時を編む人間』の意味調べノート
【めまぐるしい】⇒動きや変化が、一つ一つ追って行くことができないほど早い。
【猶予(ゆうよ)】⇒まだ時間があること。
【否応なく(いやおうなく)】⇒仕方なく。強制的に。
【主体的(しゅたいてき)】⇒自分の意志や判断で行動するさま。
【没頭(ぼっとう)】⇒何かに深く集中し、他のことが気にならなくなること。
【あくせく】⇒目先のことにとらわれて、気持ちがせかせかするさま。
【無際限(むさいげん)】⇒際限がないこと。きりがないこと。
【委ねる(ゆだねる)】⇒自分の意思や力を、他のものに任せること。
【極めて(きわめて)】⇒この上なく。非常に。程度がはなはだしいさま。
【核心(かくしん)】⇒物事の中心となる大切なところ。
【リアル】⇒現実。
【やまない】⇒どこまでも…する。…しないではいられない。
『時を編む人間』のテスト対策問題
次の傍線部の仮名を漢字に直しなさい。
①事業をテンカイする。
②出発のジコクになる。
③小説にボットウする。
④ワレを忘れる。
⑤シハイ的な考え方。
⑥信念をツラヌく。
まとめ
今回は、『時を編む人間』について解説しました。ぜひ定期テストの対策として頂ければと思います。